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混合診療問題ニュース3‐2 「速報 混合診療『解禁』撤回、会員署名が半日で300通突破!怒りの声続々」

 10月15日午後、全会員に依頼した「混合診療解禁撤回」の会員ファクス署名は、その日の夕方までに300通を突破、怒涛のように寄せられている。また、「永く先輩達が築き上げ、その結果、世界一の医療と世界に冠たる国民皆保険制度が出来上がった。今これが簡単に壊されようとしている!!」「解禁されると医療現場はその判断が困難になるばかりか、大混乱を来たします。患者さんは必要な先進医療を受けることが難しくなり、新しい医療の研究、進歩にも悪影響がでることは必至」など、怒りの声も綿綿と寄せられている。

規制改革推進会議 医療保険の不十分性引き合いに、解禁を主張

特療拡大では不十分!一定水準以上の病院で解禁も

 10月12日、規制改革・民間解放推進会議は年末の答申に向け議論。混合診療解禁について、厚労省が主張する「特定療養費制度の拡大」では不十分とし、一定水準以上の病院は、病院側の判断で混合診療を解禁とする方針を確認した。

 あわせて、1)一連の診療行為の中での予防的措置、2)保険適用回数などに制限がある検査、3)患者の価値観に左右される診療行為、4)診療行為に付帯するサービスや不妊治療などの分野の混合診療を「直に解禁する」よう求めた。

 ピロリ菌の除菌、腫瘍マーカー、乳房の再建術、外国人患者のための通訳などについて、早急な対応を求める見通し、と報道されている。

 そもそも、回数制限や給付制限の問題は医療保険の不十分性の問題であり、これを逆手にとった解禁主張は本末転倒でしかない。また、疾病の治療が目的の医療保険が対象としない、予防や再建術、通訳などを解禁論とセットで主張している点は、議論の混乱や混同を、意図的に狙った感が強い。

【解説】 混合診療とは何か =その3=

―“解禁”は「療養の給付」から「療養費の支給」へ法律改定が必須ー

  これまで、医療保険を「用いた保険診療」と「用いない自由診療」の混合が「混合診療」であり、実施されると医療保険の低質固定化がおきることをふれました。では、小泉首相のいう「年内結論」で“解禁”は、簡単にできるのでしょうか?

  医療保険は、「療養」(=医療)を現物で患者に給付することが法律で決められています。これを「療養の給付」といいます。医療保険の保険者は自らが、療養を給付できないので、医療機関から買い上げ、医療現場で、「療養」を丸々、現物給付してもらっています。ここには、自由診療との混在や、保険の効かないモノやサービスの差額という考え方が、入り込む余地はありません。医療現場の医療、まさにそのものが、まるごと、療養の給付だからです。

 そこで差額や自費診療との混合を可能とするためには、保険者が「患者」に、受けた医療の費用を補填支給するシステムに変える必要があります。この、患者への金銭支給を「療養費の支給」といいます。これは後払い(償還払い)で、支給範囲を超える部分が、自由診療料金、差額料金となります。

 この「療養費の支給」システムを使い、混合診療を認めたのが1984年の健保法改定で導入された特定療養費制度です。これは、差額ベッドや高度先進医療など限られた「特定」項目を療養費化する「部分解禁」でした。これにより初めて、混合診療は法的根拠を持ち、合法化されることとなりました。導入の目的は医療費抑制です。ただし、運用上は現物給付と同様の扱いとし、償還払いとしませんでした。特定療養費とは、差額料金や高度先進の自由診療料金の側を指すのではなく、医療保険の側の項目を指します。この20年間でドンドン拡大されてきてはいますが、14項目にとどまっています。よって、混合診療を「全面」解禁する場合には、医療保険の原則ルールを「療養の給付」から、「療養費の支給」に全て変える法律改定が必須となります。つまり、国会審議が必要になります。

 尚、特定療養費の項目拡大は、中医協(実質、厚労省)でできます。大別すると今、1)高度先進医療、2)差額ベッドなどの差額サービス、3)歯科金属床の技術料差額、4)給付の保険外し(180日超入院)の補填、の4タイプに加え、5)保険適用前の薬、抗がん剤の適応外使用など、汎用性や影響度の高い医薬品の分野が拡大されています。

 この特定療養費の大幅拡大による、「大部分の解禁」も、危険性が高いと見られています。

 (2004年10月18日)