自民「第3の道」が浮上 「技術料差額」か!?
報道によれば、日医は自民党社会保障制度調査会の丹羽雄哉会長ら厚生関係幹部と11月19日に初会合をもち、混合診療について「一定のルール」が必要と確認した。ただ、「一定のルール」の解釈が双方で少し違いがある模様で、特定療養費の見直しなどの具体的方策での意見交換はされていない。なお、混合診療のルールなき全面解禁はしないことが合意されている。
自民党では既に厚生関係幹部の会合を11月11日にもち、現行の特定療養費制度にある「高度先進医療」と「選定療養」(=差額ベッドなど13項目)のほかに、「第3の道」を検討していく方針を確認。丹羽会長は「保険外診療を併用するものがあるかどうか精密に議論していく」とした。翌日12日の毎日新聞も、混合診療の例外措置(=特定療養費制度)に「第3分野」を設け、未承認新薬や乳房再建などを厚労省が容認の方針と報道している。
特定療養費の拡充で現場ニーズを吸収!?
この「第3の道」は、かつて80年代に歯科でメタルボンド冠の保険導入をめぐる議論の際に出された概念と同じ言葉。当時は「技術料差額」を意味した。いま問題の乳房再建に置き換えると次のようになる。医療保険が認める筋皮弁術(=乳房再建:約20万円)分を保険に請求し、問題の人工乳腺による乳房再建術(現在、自由料金で約100万円)との差額、約80万円を患者へ請求できるよう特定療養費に組み込むこととなる。この技術料差額の仕組みは現在も唯一歯科にあり、金属床総義歯はスルフォン樹脂使用分を保険に請求し差額を患者に請求する特定療養費制度となっている。11月10日の中医協では混合診療問題に特定療養費制度の拡充で対応する方針を確認し、選定療養の概念整理、特定療養費制度の見直しが合意されている。また11月10日、中原爽議員(自民)が厚生労働委員会で、18年前の司法判決―混合診療に相当するものは特定療養費制度の中で活用―を提示し金属床総義歯の説明をしている。厚労省も、「一定のルール」が必要とし、現場のニーズへの対応や特定療養費の拡充、改革会議の要望項目を具体的検討するとしている。
【解説】 混合診療とは何か =その4= ―摩訶不思議 「保険外」規定 “根拠薄弱”の解禁もー
混合診療の「全面解禁」のためには、「療養の給付」を崩し「療養費の支給」(=金銭の支給)へ法律改定が必要です。現在、法律で認められているのは“部分解禁”された「特定療養費」14項目(高度先進医療や差額ベッド等)のみです。いわば、混合診療の“ポジティブリスト”ですが、厚労省の規制の下にあります。 これとは別に、患者の実費徴収が認められる「保険外規定」というのがあります。これは治療に関連のない「サービス」や「物」を「保険外負担」として患者から徴収を認めるというものです。ただし、料金表示と掲示、同意書への署名、領収書の発行などが条件です。 徴収可能なものは大別すると、1)日常生活費、2)保険給付と関係ない文書の発行、3)点数表の個別項目で明記された費用、となります。また徴収できないものも定めており、(1)点数に包括される材料・サービス、(2)点数表の回数制限を超えて実施した費用、(3)新しい薬や医療材料、先進治療など保険適用外の治療・診療、としています。 しかしながら、治療(療養)に関するものでも、オムツ代は徴収可能だが、清拭タオルや冷暖房費は入院環境に係わるものなので徴収不可。かつて保険点数化されていた病衣貸与は日常生活費だから徴収可能と、矛盾がたくさんあります。 治療関連でもストーマ処置(人工肛門)の装具は保険外負担で徴収可能、装具の交換費用は医療保険で給付などたくさんあります。 最たるものが歯科治療です。保存治療から補綴治療に切り替わる際に、「保険診療→自費診療」が認められていますが、この根拠も保険外規定の通知です。これら保険外負担は、明らかに法的根拠の薄い「混合診療」です。しかし、厚労省は混合診療と呼んでおりません。あえて規定するまでもなく、保険適用外のモノは全て「保険外」です。このご都合主義的便法は、医療保険の給付の不十分性を証明しています。 混合診療の解禁は1)「療養の給付」→「療養費の支給」へ(国会で法律改定)、2)特定療養費の拡大(中医協での項目の大幅拡大。つまりは、大幅な「保険外し」による給付項目の限定化)、3)保険外規定の悪用(通知1本)、の3つの方法があります。 規制改革会議が「特定療養費の拡大ではダメ」と言っているのは、自費料金の目安の提示や、取り扱い医療機関の限定など厚労省の監督下の解禁では、民間医療保険の商品開発に制約がかかることや、その他の事業がやりにくいということです。オリックスは既に病院経営、医療材料、治験、医療産業都市など、たくさん進出しています。 なお、保険外規定の通知を悪用し、「保険収載以外は全て保険外で自費徴収可能」としたとしても、逆に通知ひとつで簡単に廃止することもできます。 |
(2004年11月20日)