混合診問題をめぐり、尾辻厚労相と村上規制改革相は12月15日、4度目の閣僚折衝を行い合意。小泉首相も了承した。マスコミ各紙の「全面解禁見送り」報道と違い、内実は“大幅解禁”“実質解禁”に道を開くものとなった。
合意内容は、1)今ある“部分解禁”制度の特定療養費を廃止する、2)新たな制度を創設し、個別の医療技術ごとの「保険導入検討医療(仮称)」と、保険導入を前提としない「患者選択同意医療(仮称)」に再編する、3)法律改定が必須のため06年の医療改革法案に盛り込む。4)それに先んじて特定療養費の拡充を図り、「国内未承認薬」「必ずしも高度でない先進技術(=中度先進医療:仮称)」「制限回数を超える医療」の3分野を05年夏までに、今の「高度先進医療」や差額ベッド等の「選定療養」の2分野に加え混合診療を可とする、など。
無条件解禁とせず、「療養の給付」原則は残したものの、保険診療と保険外診療との併用で新たに生じる要望に関し、この枠組みで「概ね全て対応できる」としており、「実質的解禁」(麦谷厚労省医療課長)となっている。
新分野の「中度先進医療」は専門家会議が技術ごとに有効性・安全性を確認し「一定水準の要件」を設定。要件を満たした医療機関が申請し3ヶ月以内に決定、中医協は関与しない。対象を約100技術(医学会の要望項目)、約2千医療機関と厚労省は想定、規制改革会議の例示した臨床研修指定病院約2200とほぼ同数。舌がん摘出後の形成術など規制改革会議が要望した項目もこれに該当する。「中度先進医療」は診療所を含め全ての医療機関で申請が可能となる。
「制限回数を超える医療」は腫瘍マーカー検査など保険適用回数を超えた分を、適切なルールのもと、混合診療(上乗せ料金)を認める。
「国内未承認薬」は05年3月までと、特に早めて対応。治験制度を見直し承認申請と承認取得の空白期間を解消、要望の強いものは3ヶ月以内に結論づけ混合診療を可とする。これまで規制改革会議が要望していた14項目はこの3分野ですべて吸収。06年の法律改定で創設予定の「保険導入検討医療」に、将来的に一本化するとしている。
■ 「画期的」と小泉首相首相
この決着に関し12月15日、小泉首相は「全政党が反対した混合診療をやった。いかに画期的なことか」と述べ、記者団の「全面解禁先送り」の指摘に「そういう見方は全くの節穴。無条件で解禁したら混乱が生じますよ」と述べた。
■ 現場の混乱は必至 部分解禁から大幅解禁へ転換は“パンドラの箱”
新設予定の「保険導入検討医療」はあくまでも“検討”対象であり、保険導入は確約されない。「中度先進医療」など汎用性の高い新規技術が経済的観点から保険外に固定化される懸念が強い。また今回の決着で、保険外診療部分の自由料金を払える金持ち層は基礎的診療部分に保険が適用され、負担軽減されるが、そもそも負担能力のない圧倒的な層にとって何ら福音とはならない。それどころか、保険給付が中度先進医療の分だけ膨らみ、逆に「軽医療」やOTC類似医薬品の保険外しの誘引となりかねない。また、「制限回数を超える医療」は、歯科の旧差額徴収時代のようにモラルハザードを起こしかねない。06年改定は外来医療の専門科別の通院回数制限も現役官僚から口にされており、医療界全体に与える影響は予断を許さない。
(2004年12月17日)