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混合診療問題ニュース19 「医療特区問題 (株)バイオマスターの安全性確認資料」

神奈川県 情報公開を“拒否”!

 協会は、(株)バイオマスターの横浜市での診療所開設(いわゆる「医療特区」問題)に関して、神奈川県に対し、再生医療を応用した美容外科技術の安全性確認に関する資料の情報開示を神奈川県に求めていたが、9月15日に正式文書で「開示拒否」との回答が送付されてきた。

 この情報公開は8月12日付けで、県条例に基づき実施したもの。公開を要求した文書は1)バイオマスター社の実施する医療の安全性・倫理性を県が確認した資料(バ社が提出した資料及び県の判断の尺度となる資料)、2)それ以外のバ社が診療所開設にあたり県に提出した資料(開設計画など)の、2点。

 協会に送付された9月15日付けの「行政文書公開拒否決定通知書」では、「公開を拒む理由」として「当該資料は法人の事業に関する技術上の情報等で公にしないとの条件を付して受理したものであり、現在においてその条件を覆すような状況の変化は認められないため」と記載されてきた。

安全性確認の基準 「ない」と明言 疑問深まる県の安全性審査

 今回の開示拒否決定に対し、協会は9月16日、担当の県商工労働部の産業活性課、山口課長代理に電話で照会したところ、以下の点の回答を得た。

 1)特区申請に際し、バ社の方から資料を秘密扱いにすることとされ、その条件で県が受理した。2)拒否理由の「その条件を覆すような状況」とはバ社が自ら資料を公開するか、バ社と大学の秘密保持契約が無効または終結すること、3)協会が求めた、安全性・倫理性の確認に用いた、「県の判断の尺度となる資料」は、県にはない。厚労省の告示が県の基準・尺度であり、公になっている。それ以上のものはない。?というもの。

 県が強弁した、告示の規定とは、1)専門的知識・経験を有する常勤の医師1名以上の配置、2)無菌箱、高度レーザー照射装置、その他の必要な設備の装備、3)細胞その他の物質を用いる場合は培養・製造に必要な設備及び記載文書の設置と物質の安定的供給の確保、4)患者説明・同意の手順を記載した文書―の4点。医師数以外はほとんど抽象的な文言のみのもの。

 協会は重ねて、1)この告示を具体化した尺度がなければ安全性は判断できない、2)通常は告示を具体化する通知や要綱の細目があり現場運用される、3)設備も広さや医療器具・機器など全く不明、4)事務方が安全性を判断したなら、なおさら詳細な判断基準が必要と、追求したが、山口課長代理は「告示で判断」したとの返答に終始した。

バ社の美容外科技術 東大倫理委“条件つき”承認

疑問だらけの安全性 医師のモラルも大問題

 バイオマスター社が実施予定の、「脂肪由来幹細胞の組織増大術」が、この技術を開発した東大の倫理審査委員会で「条件つき承認」であり、3例の臨床実績以上は、報告されていないことが、協会の独自調査で明らかとなった。

 調査によれば、1)東大での臨床例の実施報告は3例のみ、2)あくまでも「条件つき」承認であり、この技術を申請した吉村東大講師のホームページに「承認」となっているのは事実と異なる、3)4、5回議論がなされ申請も出しなおしとなり、今後、3例実施の都度、報告が要件づけられている、4)しかし04年より東大では美容目的のみの形成外科の全身麻酔手術は行わない方針となっており、事実上、その技術の実施はできない―となっている。

 会はバ社との懇談で、臨床実績が23例と把握しており、20例近くが倫理審査委員会も通らずに、いわば“実験医療”として実施された疑念が強い。この点で、医の倫理、医師としてのモラルの欠如も、大きな問題として浮上してきた。

 最近、日経メディカル9月号で2ページに亘る記事が掲載。東大形成外科の医師・吉村氏とバ社とが共同研究契約を締結していることが明確となっている。

7月の協会とバ社との懇談では社長の桑名氏は東大の関与は否定していた。

 また東大病院の執行部は医療特区に関し、東大の名称を表に出すことを禁じており、「今後、問題になるのでは」との情報もある。

 先の日経メディカルによれば、01年に基礎研究開始、03年初めにバ社と共同研究契約となっているが、この技術の東大での条件つき承認は03年12月15日、バ社の会社設立は02年12月25日である。
バ社設立直後に、倫理審査委員会も通らない技術を契約締結したということであり、安全性ばかりか経緯も大きな疑問を含んでいる。

  (2005年9月22日)