混合診ルールを無視した禁煙指導の点数化
4月からの診療報酬改定で禁煙指導が新たに点数設定され、保険適用となった。マスコミ各紙は朗報として記事を掲載している。
しかし、この禁煙指導の保険適用は、医療保険の大原則、混合診療禁止ルールを大きく逸脱したものとなっており、厚労省は堂々と違法行為を行っているのだが、医療制度「改革」論議の影に隠れ、あまり問題にされていない。
この禁煙指導の点数は、正しくはニコチン依存症管理料といい、3ヶ月(12週間)に5回の禁煙指導・治療を行った場合に、計9,620円(患者負担2,886円)が保険適用される。ただし、禁煙治療薬(ニコチン製剤)のニコチンパッチなどは保険が適用されず、自費で購入することになっている。
現行法では、モノであれサービスあれ自費部分を、一連の保険診療の中に組み入れることは「混合診療」として禁止されている。つまり、今回の禁煙指導の保険適用は、明らかに法令違反となる。
禁煙診断は自費!?ニコチン依存でも自費診療!
●ニコチン依存症管理料 | |||
初 回 | 2,300円 | (患者負担 690円) | 禁煙開始日決定 |
2回目 | 1,840円 | (患者負担 552円) | 2週間後 |
3回目 | 1,840円 | (患者負担 552円) | 4週間後 |
4回目 | 1,840円 | (患者負担 552円) | 8週間後 |
5回目 | 1,800円 | (患者負担 540円) | 12週間後 |
合 計 | 9,620円 | (患者負担2,886円) | |
■禁煙薬剤(ニコチン製剤)は保険適用外(自費購入) *ニコチン依存症のスクリーニングなど→診断確定→4条件満足→保険適用 【4条件】?禁煙の意思、?スクリーニングテストで5点以上、?ブリクマン指数200以上、?治療の文書同意 |
しかし、依存症ではないと診断された場合は、そこまでの費用は自費での支払いとなる。また依存症と診断されても、1日の喫煙本数×禁煙年数≧200(ブリクマン指数)など4つの条件を満たさないと保険適用とはならないので、そこまでの費用は自費、それ以降の禁煙指導も自費で支払わないといけない。
このように、1)治療薬は保険外、2)診断までは自費診療、3)ニコチン依存症であっても自由診療と、混合診療禁止ルール違反のオンパレードなのである。
「保険外併用療養費」を法案で創設10月実施で準備
混合診療の法制化 ニコチン管理、急遽、是正通知!
国会で審議中の医療制度「改革」法案には、「保険外併用療養費」の創設が盛り込まれている。これは、混合診療を法制化するもので、一昨年12月15日、厚労相と規制改革担当相との間での「大臣合意」に基づいた具体化だ。
具体的には、「選定療養」と「評価療養」という法的枠組みを新たに作る。前者は保険導入を前提としない混合診療で、差額ベッドや歯科材料など旧来型の経済差額、モノ差額のほか、腫瘍マーカーやリハビリなど保険での回数制限を超えて実施する治療・技術が対象に含まれる。また後者は保険導入の検討を前提とする混合診療(導入が前提ではない!)で、先進医療技術、未承認薬などが対象。10月実施で提案されている。
今回のニコチン依存症管理料だが、禁煙治療薬の保険適用について厚労省は未だ検討中と回答し、薬価収載まではニコチンパッチ使用の禁煙指導は「全て自由診療」と急遽(4/28)、是正通知を出した。このまま放置し10月実施の保険外併用療養費の「選定療養」に盛り込ませ、一挙に整理との企図が見える。
伏線として、今次診療報酬改定で生活習慣病管理料は処方箋を切ると減額さされることとなっている。分業率が70%の神奈川県では「薬剤を出すな」、といわれているに等しく、薬剤投与への減額点数評価は、将来的な薬剤の保険外しと混合診療化を念頭においたものとの指摘もなされている。
(2006年5月8日)