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解説:共通番号制を斬る(その2) 「保険証ICカード化が既定路線 オンライン請求が強要される!?」

保険証ICカード化が既定路線 オンライン請求が強要される!?

 

 社会保障・税の共通番号制度(以下:番号制)があらゆる個人情報を名寄せし、一元管理・利活用するための「巨大なデータベース」であることは、(その1)で説明した通り。今回は、番号制の仕組み、利用範囲や目的を説明するとともに、医療機関への影響について解説する。

 番号制は、(1)付番、(2)情報連携、(3)本人確認―の3つの仕組みで構成される(下図)。mynumber-kihonzu.jpg

  (1)『付番』は、目で見えて「民―民―官」で利用可能な番号が、すべての国民(在留外国人を含む)と法人に割り振られる。この番号は、現在の住民票コードの番号とは異なるものとなるが、住民票コードが管理する基本4情報(氏名、性別、生年月日、住所)と関連付けて付番されることとなる。

 (2)『情報連携』とは、この番号を使って各行政機関に管理されている個人情報を名寄せ、データマッチングする仕組み。2011年6月30日に閣議決定した番号大綱では、「情報連携基盤」というシステムを構築し、名寄せ・データマッチングはこのシステム上でのみ行うこととしている。

 (3)『本人確認』とは、個人や法人が番号を利用する際、利用者が番号の持ち主であることを証明するための本人確認(公的認証)の仕組み。大綱では、券面に基本4情報や顔写真等が記載されたICカード(住基カードの改良版)を配布し、本人確認やオンライン認証に活用することが考えられている。

 

 番号制の利用分野・範囲等については、当面(2015年1月より施行)は社会保障と税分野での利用に限定。政府は2018年を目途に、民間活用も含めた利用範囲の拡大を検討するとしている。

 

 番号の利用目的等については(左表)の通り。医療・社会保障において広範囲な利用を検討していることが分かる。また、情報漏洩やプライバシー保護対策として、法令上の規制等措置(目的外利用の制限、閲覧・複写の制限、告知要求の制限、守秘義務等)、罰則強化、監視・監督機能としての第三者機関の設置などが検討されている。

 

オンライン義務化の再燃か

 

 番号制は医療・社会保障のあらゆる場面での利用を想定。特に医療機関においては、オンラインシステムの導入を強要される恐れがある。 

 前述のICカードは、本人認証機能の他に、健康保険証・年金手帳・介護保険証としての機能を持たせるとしている。同カードの券面には、基本4情報や顔写真等を掲載することだけが想定されており、医療・介護の保険者番号、被保険者の記号・番号等の掲載は未定。カードのサイズやIC機能を有していること等を勘案すれば、記載される可能性は極めて低い。

 

 被保険者証の記号・番号が券面記載されない場合、医療機関は前述の「情報連携基盤」を使って患者の保険資格の確認を行うこととなる。具体的には、医療機関の窓口にネット接続したカードリーダー等の端末を設置し、患者のICカードを読み込み、ネット回線を経由して情報連携基盤にアクセスし、保険資格等の情報を引き出す―という仕組みだ。また、同端末とレセコンを接続、連動させることで、資格情報のレセプト転記を自動化させることも想定されている。

 

 大綱では、事務の簡素化・負担軽減などメリットを強調しているが、このシステムの導入費用の負担等については何の説明もなされず、医療機関の負担になる可能性が高い。

 また同システムによって医療機関のネット回線の敷設が拡大することで、政府・財界からのレセプトのオンライン請求への誘導策が進められることも想像に難くない。更には、総合合算制度(仮称)が導入された場合、給付のリアルタイムな把握・管理が必要となる。

 そのためには、医療機関からのレセプトオンライン請求が不可欠なインフラとなってくる。

 

 2千200名を超える開業保険医が、国を相手に訴訟を起こしてまで食い止めた「レセプトオンライン請求義務化」が、番号制という違う制度によって再燃する恐れが出てきた。