シンポジウムⅠ 「失敗しない雇用・管理~スタッフの採用から定着まで~」

 

失敗しない雇用・管理

「成長・実感・モラル向上"変える"よりも"変わる"が要」

日常診療経験交流会 シンポジウム要旨

 

2月8日に行った第14回日常診療経験交流会(2月25日号で既報)では、「失敗しない雇用・管理~スタッフの採用から定着まで~」と題し、シンポジウムを開催。『診療室が変わる本』シリーズなどスタッフの採用や、育成に関して多数の著書を手掛けている関口武三郎氏(金沢区開業・歯科)と、社会保険労務士の菅原由紀氏が講師を務め、約50名が参加した。

関口氏からは、スタッフの採用から定着に関する医療現場からのアドバイス、菅原氏からは「雇用契約書」の重要性や、給与計算における注意事項など、法的および事務的な手続きに関する解説が行われた。フロアディスカッションでは多くの質問が飛び交い、シンポジウム終了後も両講師への質問が殺到するなど、終始熱気に満ちたシンポジウムとなった。今号は講演要旨を掲載する。

 

スタッフは財産

医師とスタッフ一体の医院経営を

関口氏は冒頭、「スタッフは財産であり、"人材"ではなく、"人財"である」と強調。自らの失敗経験から学んだ、スタッフに長く働き続けてもらうためのコツや、スタッフの採用方法などを説明した。その中で氏は、スタッフの採用面接は、電話対応からすでに始まっており、声のトーンや、言葉づかい、挨拶の仕方も、判断基準になる-としたほか、採用に当たってはTEG、YG、CMIの3種類の性格検査を重要視する、とした。

また、スタッフに長く働いてもらうには、医院への帰属意識が重要であり、安心して働け、自院へのモラールを向上させる職場環境の提供がポイントであるとした。モラールが向上するのは、①自分の判断で仕事を進められていると感じる時、②自分の仕事が大切だと感じる時、③自分の仕事を通じて進歩と成長を感じた時、④結果が評価されたとき-と解説。スタッフにそれぞれの立場でプロ意識を持たせることや、産休、退職金など福利厚生面を充実させるなど、より良い職場環境の提供も帰属意識を高める条件になると詳述した。さらに、医院の繁栄はスタッフの能力と意欲、またそれを生かす環境の関数であり(業績=能力×意欲×環境)、たとえスタッフの能力が高く職場環境が良くても、それを生かすスタッフの意欲が低ければ、医院の業績に結びつかない-とし、帰属意識こそがスタッフ定着のカギであると結んだ。

 

雇用契約書の充実を図り

労務トラブルの未然解決へ

続いて、菅原氏は「書面による労働条件の明示」などの法的な義務について解説。氏が今まで相談を受けたトラブルについて、「雇用契約書」さえしっかりしていれば未然に避けられたトラブルは少なくない-として、その重要性を強調した。

トラブルは主に①雇用・管理について労働法に則っていないケース、②解雇理由の正当性など、労働法における法的違反が明確にできないケース、の大きく2つに分けられると説明。最近の景気後退による雇用環境の悪化や、労働者の権利意識の高まり、従来に比べて労務問題を比較的簡単に相談できる雰囲気が社会的に形成されていることにより、今後ますます労働トラブルが増加すると考えられると指摘した。

さらに、よくある相談事例は「雇用契約書」の内容確認や、自院のスタッフを辞めさせたい-などで、特に解雇理由については争うケースが多く、就業規則へ解雇事由を定めておく必要性について言及した。また、就業規則がない場合はスタッフ採用時に雇用契約書へ解雇事由を記載しておくことも、未然にトラブルを防ぐ大切なポイントであるとした。

最後に氏は、労務トラブルを避けるためのチェックポイントとして、枠内の6点を強調。労務トラブルが発生すると、その解決に多大な労力・時間・費用が必要となる。医院経営を健全で安定的に行う上で、「労務管理」がますます重要になっていると締めた。

 

終了後も質問続出

スタッフ教育は

先生の"心がけ"がカギ

講演後のフロアディスカッションでは、スタッフの募集方法、雇用契約の更新時における注意点など、多くの質問が飛び交った。「スタッフに10年、20年と長く勤めてもらうコツなどはあるか」との質問に対して、関口氏は「スタッフを変えようとするのではなく、先生が率先して挨拶や掃除をするなど、まず"先生自身"が変わることが、より良いスタッフを育て、長く勤めてもらうための一歩である」とし、自身が普段心がけているポイントを具体的に紹介した。

最後に司会を務めた佐藤理事は、「今日の内容を明日からの医院経営に役立ていただきたい」と結び、終始熱気に満ちたシンポジウムは終了した。

 

開業時の雇用セミナー

への参加 少なく

-会員調査より

日常診療経験交流会実行委員会は、シンポジウム「失敗しない雇用・管理~スタッフの採用から定着まで~」の開催に向け、事前に会員実態調査を実施。

回答数は65件。医科・歯科別の回答割合は、医科66・2%、歯科33・8%。年齢は35歳~82歳まで、幅広い世代の先生方から回答いただいた。

主な特徴としては、回答した殆どの会員が、自身が開業する際に「雇用管理」などのセミナーへ参加していない点である。開業理由は「理想とする医療を目指すため」(36・9%)が最も多い回答だったが、医院経営の取組みに対しては関心が低いように見受けられる結果となった。

また"雇用管理などのセミナーに期待することは"との質問に対しては「スタッフの採用方法」などの実務的なものから、「先生同士の意見交換をする場の確保」、「開業経験談など、生の声を聴く企画」など幅広い要望があった。"雇用管理において、悩んでいることはありますか(複数回答可)"との質問では、「スタッフ教育」という回答が15・3%と最も多く、次に「募集・採用方法について」「就業規則、雇用契約書などについて」「スタッフのモチベーションが上がらない」「診療所内の雰囲気作り」「諸手当や、福利厚生などについて」と続いた。逆に、「スタッフを辞めさせたい」や、「スタッフの人事考課」に対する回答率は低かった。

"スタッフの募集方法(複数回答可)"に関しては、「雑誌・新聞広告(27・8%)」「ハローワーク(25・6%)」が上位を占める結果となった。

 


「スタッフがなかなか集まらない」「スタッフがすぐ退職してしまう」などで悩んだことはありませんか?「診療室が変わる本」シリーズなどスタッフの採用や、育成に関する多数の著書を手掛けている金沢区で開業の関口武三郎氏に解決のヒントをお話しして頂きます。テーマは「スタッフの採用から定着まで」、スタッフの採用方法やモチベーションを高める職場作りなど、氏がこれまでの経験から学び得たアイディアやコツを多数紹介。また、当日は、社会保険労務士・菅原由紀氏を招き、労使間トラブルを招きやすい労働契約問題や、平成20年4月より施行された改正パートタイム労働法のポイントなど、トラブルを未然に防ぐ法的手続きについて解説していただきます。

 明日から使える情報満載のシンポジウムです。スタッフや患者さんとの信頼関係を築き、風通しの良い医院づくりのヒントにしてください。

 

 時 間  10時30分~12時

会 場  シンポ・講演ブース(会場レイアウトを参照

パネリスト

1) 横浜市金沢区 関口歯科医院院長  関口 武三郎氏

☆神奈川歯科大学口腔外科非常勤講師

 ☆日本大学歯学部兼任講師(医療人間科学)

☆日本顎咬合学会認定医

☆日本歯内療法学会認定医

☆日本催眠医学心理学会認定/催眠技能士

☆日本心療内科学会登録認定医

2) 社会保険労務士  菅原 由紀氏

 

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