シンポジウムⅡ 「レセプト・オンライン請求の実際とこれから」
オンライン請求の整備慌てず情報収集を優先
はじめに、田辺氏より請求義務化に関する概要が説明。神奈川県内における医科医療機関のレセプト提出方法は約8割が紙レセプトという実態より「多くの医療機関がオンライン請求に対応するためのインフラ整備を必要」と言及。試算ではレセコンの導入から必要とする場合は約300万円、また回線費用や保守契約などで年間10万円以上かかる。日本医師会が無償提供している日レセ(ORCA)を導入する場合でも、相当のコンピュータの知識がなければ自力導入は不可能で、サポート業者に依頼した場合は初期費用で100万円以上かかると示した。
また、これだけの費用や手間のかかるオンライン請求だが、医療機関側のメリットとしては微少。紙代、郵送代がなくなるにしても、ネット回線の費用が発生することで、これまで以上の費用負担になると言及。
最後に田辺氏は、「オンライン請求への移行に伴う手間や期間はかからない。インフラ整備に着手するのは秋頃で間に合うので、急いで無駄な設備投資をしないよう気をつけて欲しい」とアドバイスした。
次に、岡氏が歯科のレセプトオンライン化への対応状況について話題提供。 電算化対応の歯科レセ標準マスターが公表されたのは昨年10月。この3月より電子媒体による歯科レセの受付が開始されるなど、医科に比べて歯科のオンライン化・電算化への整備は大幅に遅れている実態を報告。
標準マスターの整備が遅れていたことから、既存のレセコンの大半がオンライン化に対応しておらず、全ての歯科医療機関が整備は必至。「歯科のオンライン化への対応には、医科以上のコストと手間がかかるだろう」と強調。最近では日本歯科医師会が日歯標準レセコンの開発を公表するなど少しずつ動きがあるが、「状況は今後刻々と変わるだろう。今は無理に整備せず、静観することが得策」と述べた。
陣野氏は、自院のオンライン請求システム導入に向けた準備、運用までの流れ、運用面でのメリット・デメリットなど体験談を報告。特に支払基金との手続き、接続試験の内容を詳細に解説した。その際、スタッフのコンピュータスキルや院内回線の増設などの課題が浮き彫りとなり、現在は電子媒体請求に留めている実態が報告された。
東山氏は、趣味でコンピュータに精通していたことから、自力でORCAを導入した経緯、体験談を報告。点数改定時の対応、年配スタッフの教育―などに苦労した一方、業者に依頼した場合と比較して60万円以上のコスト削減になったことなどが報告された。
4名の話題提供が終了後、フロアからは多数の質問・意見が出され、協会のオンライン義務化撤回訴訟への賛同の声も寄せられた。最後に座長の関氏より「慌ててインフラ整備するよりも、今は情報収集に努めることが先決。協会は義務化撤回運動とともに、会員サポートにも力を注いでいきたい」と述べ、シンポジウムを締めくくった。
2011年までに全ての保険医療機関に義務化が迫られている「レセプト・オンライン請求」。すでに400床以上の病院では4月から義務化されました。また現時点でレセコンを導入している医科医療機関は、2010年4月までにオンライン請求が義務付けられようとしています。
しかし一方で、医療機関側は義務化されることは知っていても「そもそもオンライン請求って何?」「機械は何が必要なの?」「どのくらい予算がかかるの?」など不明な点が多数あり、対応に苦慮しているのが実態だと思います。協会の高齢会員からは電子化、オンライン化に対応できず「廃院する」との声も多く寄せられています。
保険医協会としては、レセプト・オンライン請求義務化に断固反対で“義務化撤回”の運動に取り組んでいますが、この講演では義務化の方向に進んだ場合の対策として、オンライン請求の概要、システム整備に関する具体的事例―など、4名のパネラーが体験談も交えながら話題提供します。
時 間 12時30分~14時
会 場 シンポ・講演ブース(会場レイアウトを参照)
パネリスト
1) 横浜市磯子区 洋光台眼科クリニック院長 田辺 由紀夫氏
2) 横浜市中区 岡歯科医院院長 岡 仁氏
3) 鎌倉市 じんの眼科クリニック院長 陣野 秋子氏
4) 横浜市磯子区 東山耳鼻咽喉科医院副院長 東山 佳澄氏