神奈川県保険医協会とは
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2023/10/4 税対経営部長談話 「インボイス制度 国民の声を聞かない施行に抗議する」
インボイス制度 国民の声を聞かない施行に抗議する
神奈川県保険医協会
税対経営部長 木村 竜一
インボイス制度が10月1日から施行された。我々は制度の施行延期を求めてきたが、周知が十分に進まない中、免税事業者をはじめ対応が困難な事業者に対する十分な支援措置を行わず、スケジュールありきで施行にこぎ着けた国の対応に断固抗議する。
インボイス制度は2019年10月に消費税が複数税率になったことを機に、移行期間(「区分記載請求書」。2019年10月1日~2023年9月30日)を経て導入された。しかし、低い年収の免税事業者が新たに課税事業者になると1か月分の生活費が消えるとの声があるほか、インボイスを発行できない免税事業者等が取引から排除される可能性もある。これに対し、国は特例や猶予措置による一定の緩和策を講じた。例えば、免税事業者が新たに適格事業者になった場合、届出不要で2023年10月1日~2026年9月30日の属する課税期間は、納税額が売上消費税額の20%に軽減される。また、同じく2029年9月30日まではインボイスを発行できない免税事業者等に支払った消費税相当額のうち80%または50%が控除可能だ。しかし、多くは期間限定の激変緩和措置の性格が濃く、期限到来により事業者の負担は急激に増す。立場の弱い免税事業者等を守るしくみは必須だ。廃業が相次ぐ業種では、残された事業者へ負担が偏る「二次災害」も予想される。例えば建交労軽貨物ユニオンが実施したアンケートでは40%超の事業者が廃業を考えるとしており、軽貨物運送事業者からは負担過多による労災事故の増加を懸念する声が上がっている。
医療機関への影響も懸念される。医療機関の多くは保険診療収入が中心で、個人である患者からインボイスを求められることはまずない。しかし、例えば健康診断や予防接種等を企業等から委託される場合、委託元からインボイスの発行を求められることが想定される。公正取引委員会が一方的に取引価格引き下げを通告した事業者の動向を注視しており、既に独占禁止法または下請法に抵触する恐れがあるとして注意するなど警鐘を鳴らしているが、医療機関を含めインボイスに対応できない事業者を取引から排除する構造自体に根本的な問題が内在しており、到底看過できない。
インボイス制度は施行直前までフリーランス等を中心に中止を求める声が上がり続け、2021年12月からインターネットで始めた反対署名が54万筆にのぼる。先行してインボイスが導入されている欧州諸国では、インボイス制度に対応できない免税事業者のままでは事業継続が難しいケースが多いという。本来、十分な体制が整うまでは施行「延期」するのが筋ではないか。国はこれから関係閣僚会議を開き、事業者の抱える悩みや懸念を踏まえて必要な支援を実施するとしたが、有効な施策が講じられるかは未知数だ。それならば、支援策のひとつとして免税事業者等との取引でも一定額の仕入税額控除(80%または50%)を可能とする経過措置の恒久化など、実効性のある救済策が必要ではないか。我々はインボイス制度施行により廃業に追い込まれる事業者を救済すべく、今からでも実効性ある支援策の実施を求める。
2023年10月4日
インボイス制度 国民の声を聞かない施行に抗議する
神奈川県保険医協会
税対経営部長 木村 竜一
インボイス制度が10月1日から施行された。我々は制度の施行延期を求めてきたが、周知が十分に進まない中、免税事業者をはじめ対応が困難な事業者に対する十分な支援措置を行わず、スケジュールありきで施行にこぎ着けた国の対応に断固抗議する。
インボイス制度は2019年10月に消費税が複数税率になったことを機に、移行期間(「区分記載請求書」。2019年10月1日~2023年9月30日)を経て導入された。しかし、低い年収の免税事業者が新たに課税事業者になると1か月分の生活費が消えるとの声があるほか、インボイスを発行できない免税事業者等が取引から排除される可能性もある。これに対し、国は特例や猶予措置による一定の緩和策を講じた。例えば、免税事業者が新たに適格事業者になった場合、届出不要で2023年10月1日~2026年9月30日の属する課税期間は、納税額が売上消費税額の20%に軽減される。また、同じく2029年9月30日まではインボイスを発行できない免税事業者等に支払った消費税相当額のうち80%または50%が控除可能だ。しかし、多くは期間限定の激変緩和措置の性格が濃く、期限到来により事業者の負担は急激に増す。立場の弱い免税事業者等を守るしくみは必須だ。廃業が相次ぐ業種では、残された事業者へ負担が偏る「二次災害」も予想される。例えば建交労軽貨物ユニオンが実施したアンケートでは40%超の事業者が廃業を考えるとしており、軽貨物運送事業者からは負担過多による労災事故の増加を懸念する声が上がっている。
医療機関への影響も懸念される。医療機関の多くは保険診療収入が中心で、個人である患者からインボイスを求められることはまずない。しかし、例えば健康診断や予防接種等を企業等から委託される場合、委託元からインボイスの発行を求められることが想定される。公正取引委員会が一方的に取引価格引き下げを通告した事業者の動向を注視しており、既に独占禁止法または下請法に抵触する恐れがあるとして注意するなど警鐘を鳴らしているが、医療機関を含めインボイスに対応できない事業者を取引から排除する構造自体に根本的な問題が内在しており、到底看過できない。
インボイス制度は施行直前までフリーランス等を中心に中止を求める声が上がり続け、2021年12月からインターネットで始めた反対署名が54万筆にのぼる。先行してインボイスが導入されている欧州諸国では、インボイス制度に対応できない免税事業者のままでは事業継続が難しいケースが多いという。本来、十分な体制が整うまでは施行「延期」するのが筋ではないか。国はこれから関係閣僚会議を開き、事業者の抱える悩みや懸念を踏まえて必要な支援を実施するとしたが、有効な施策が講じられるかは未知数だ。それならば、支援策のひとつとして免税事業者等との取引でも一定額の仕入税額控除(80%または50%)を可能とする経過措置の恒久化など、実効性のある救済策が必要ではないか。我々はインボイス制度施行により廃業に追い込まれる事業者を救済すべく、今からでも実効性ある支援策の実施を求める。
2023年10月4日