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2023/10/6 政策部長談話「1受診単価増は受診日数減の結果 治療の集中度の差  治療・疾病管理を盤石とする医療体制へ診療報酬プラス改定が必須」

1受診単価増は受診日数減の結果 治療の集中度の差

治療・疾病管理を盤石とする医療体制へ診療報酬プラス改定が必須 

神奈川県保険医協会

政策部長  磯崎 哲男

 


 

◆全体性を欠いた財政審での1受診単価急増論 割り算する受診日数が減少しただけ

 来年度の診療報酬改定を巡り、927日の財政制度等審議会財政制度分科会で恣意的な資料での牽制的な議論が始まった。診療所・入院外の医療費を受診延べ日数で除した「1受診当たり医療費」が急増との資料が提示。議論では賃上げは十分可能だとし、プラス改定を否定、必要ならば受診単価の引き下げをと出された。翌日報道では受診単価増が物価上昇率を上回るとの見出しが並ぶことになっている。

 しかしコロナ禍での受診減少が回復しておらず、受診日数減少の影響で計算上、1受診単価が増加したに過ぎない。診療報酬改定は全体の医療費の話であり、提供される医療の質の問題である。全体性、総合性を欠いた部分的・限局的な数値での誘導は禁物である。物価・光熱費上昇と医療従事者の賃金上昇に対応し、医療の質の向上と医療体制を盤石とするため、われわれは診療報酬のプラス改定を求める。

 

◆医療費も受診日数もコロナ禍前に回復はしていない 改定率は医療費総枠での判断

 過日、発表された2022年度(令和4年度)の概算医療費は46.0兆円で、コロナ禍前の2019年度(令和元年度)の43.6兆円に比し、伸び率は5.5%、年率換算1.8%でしかない。これは19年度の伸び率2.4%に及ばない。平年度ベースには回復していないのである。

 一方、2022年度の受診延べ日数は2019年度に比して伸び率▲3.6%、年率換算で▲1.2%であり、2019年度の▲0.8%を依然と下回り回復はしていない。人口減少率は年平均▲0.4%、高齢化率は年平均1.0%であるので、人口減、高齢化の影響を鑑みても、受診延べ日数の未回復は明らかである。

 よって、2022年度の1日当たり医療費は2019年度対比9.4%、年率換算で3.1%と医療費の伸び率が低くとも高い水準となる。ただ、これは2019年度の3.2%と同程度である。なお1日当たり医療費は、医療費の総額を受診延日数で除して得た商である。これを財務省は「1受診当たり医療費」と呼称している。

 コロナ禍で病床が逼迫し、宿泊療養、在宅療養となり、2022年度は新規陽性者148万人の第7波の大波があり入院外にシフトして医療費が伸びており、更に診療所・入院外に限定して1日当たり医療費(=1受診当たり医療費)を算出し、コロナ禍前の9年間平均と比較すれば急伸となるだけである。

 

◆コロナの特例報酬での嵩上げは次期改定で雲散霧消 倒産・廃業閉院は増加

 2022年度概算医療費は新型コロナの診療報酬上の特例分が0.9兆円ある。この嵩上げ分は今年度、部分的に廃止され来年度は解消の方向にある。これを除外した2022年度概算医療費の2019年度対比の伸び率は3.4%、年率換算で1.1%でしかない。来年度の医療費の改定率を決定する際、今年度の医療費の見込みから、コロナ特例報酬分を除外した額が土台となる。嵩上げで支えていた部分がなくなり、病院を中心に投入されていた補助金もなくなっていく。現在の医療体制を維持・盤石にし、医療の質の向上を図るためには診療報酬のプラス改定は道理である。

 2022年度の診療所倒産(負債1000万円以上)は22件で、過去20年間で最多タイで、「電気代や人件費など、診療にまつわるコストアップが続く中、小・零細規模の診療所の倒産はしばらく高水準をたどることが危惧される」と東京商工リサーチ(2023.5.23)は警鐘をならしている。無利子・無担保のゼロゼロ融資の返済も始まっていく。水道・光熱費、物価の上昇への対応、医療従事者の労働に報いる賃金上昇も、公定価格の診療報酬だけに、プラス改定がなければ不可能である。就労人口の960万人は医療・福祉労働者である。政府の賃上げ政策の対象となる、大集団である。

 診療報酬は本体(技術料)と薬価等と一体である。医療費の伸び率を経済調整するのがその改定率だが20年以上もマイナス改定が連続し、2014年度以降は薬価差分の技術料振替が反故にされ続けている。 

 持続可能な医療体制の構築と地域活性化の観点からも診療報酬プラス改定を強く求める。

 

2023年106

 


 

◆2022年度概算医療費 診療種類別 医療費の対前年伸び率(対前年同期比)(%)  2023.9.7社会保障審議会医療保険部会資料より)

 111.jpg

 

◆2022年度概算医療費 医療費の動向(概観)  (2023.9.7社会保障審議会医療保険部会資料より)

222.jpg

 

 

◆コロナ特例の診療報酬の影響額  (2023.9.27中央社会保険医療協議会資料より)

333.jpg 

  

◆コロナ特例の診療報酬の影響額

 財務省の恣意的な資料・図.jpg

 

(注11受診当たり医療費は、医療費の総額を受診延日数で除して得た値。

(注2)年平均増加率、始点から終点までの増加率を年数のべき乗根で算出。

(出所)厚生労働省「医療費の動向調査」 

 

【参考】 ――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――

  1)20192022年度の年平均増加率の計算

    年平均増加率=555.jpg1.0432 4.3%(立方根)

 

  2)入院と入院外の医療費の推移(カッコは構成比) 入院外に1%強シフト

 

(単位:兆円)

入院

入院外

2019年度

17.640.5%)

14.934.1%)

2020年度

17.140.5%)

14.233.7%)

2021年度

17.639.8%)

15.334.6%)

2022年度

18.139.4%)

16.235.3%)

 

1受診単価増は受診日数減の結果 治療の集中度の差

治療・疾病管理を盤石とする医療体制へ診療報酬プラス改定が必須 

神奈川県保険医協会

政策部長  磯崎 哲男

 


 

◆全体性を欠いた財政審での1受診単価急増論 割り算する受診日数が減少しただけ

 来年度の診療報酬改定を巡り、927日の財政制度等審議会財政制度分科会で恣意的な資料での牽制的な議論が始まった。診療所・入院外の医療費を受診延べ日数で除した「1受診当たり医療費」が急増との資料が提示。議論では賃上げは十分可能だとし、プラス改定を否定、必要ならば受診単価の引き下げをと出された。翌日報道では受診単価増が物価上昇率を上回るとの見出しが並ぶことになっている。

 しかしコロナ禍での受診減少が回復しておらず、受診日数減少の影響で計算上、1受診単価が増加したに過ぎない。診療報酬改定は全体の医療費の話であり、提供される医療の質の問題である。全体性、総合性を欠いた部分的・限局的な数値での誘導は禁物である。物価・光熱費上昇と医療従事者の賃金上昇に対応し、医療の質の向上と医療体制を盤石とするため、われわれは診療報酬のプラス改定を求める。

 

◆医療費も受診日数もコロナ禍前に回復はしていない 改定率は医療費総枠での判断

 過日、発表された2022年度(令和4年度)の概算医療費は46.0兆円で、コロナ禍前の2019年度(令和元年度)の43.6兆円に比し、伸び率は5.5%、年率換算1.8%でしかない。これは19年度の伸び率2.4%に及ばない。平年度ベースには回復していないのである。

 一方、2022年度の受診延べ日数は2019年度に比して伸び率▲3.6%、年率換算で▲1.2%であり、2019年度の▲0.8%を依然と下回り回復はしていない。人口減少率は年平均▲0.4%、高齢化率は年平均1.0%であるので、人口減、高齢化の影響を鑑みても、受診延べ日数の未回復は明らかである。

 よって、2022年度の1日当たり医療費は2019年度対比9.4%、年率換算で3.1%と医療費の伸び率が低くとも高い水準となる。ただ、これは2019年度の3.2%と同程度である。なお1日当たり医療費は、医療費の総額を受診延日数で除して得た商である。これを財務省は「1受診当たり医療費」と呼称している。

 コロナ禍で病床が逼迫し、宿泊療養、在宅療養となり、2022年度は新規陽性者148万人の第7波の大波があり入院外にシフトして医療費が伸びており、更に診療所・入院外に限定して1日当たり医療費(=1受診当たり医療費)を算出し、コロナ禍前の9年間平均と比較すれば急伸となるだけである。

 

◆コロナの特例報酬での嵩上げは次期改定で雲散霧消 倒産・廃業閉院は増加

 2022年度概算医療費は新型コロナの診療報酬上の特例分が0.9兆円ある。この嵩上げ分は今年度、部分的に廃止され来年度は解消の方向にある。これを除外した2022年度概算医療費の2019年度対比の伸び率は3.4%、年率換算で1.1%でしかない。来年度の医療費の改定率を決定する際、今年度の医療費の見込みから、コロナ特例報酬分を除外した額が土台となる。嵩上げで支えていた部分がなくなり、病院を中心に投入されていた補助金もなくなっていく。現在の医療体制を維持・盤石にし、医療の質の向上を図るためには診療報酬のプラス改定は道理である。

 2022年度の診療所倒産(負債1000万円以上)は22件で、過去20年間で最多タイで、「電気代や人件費など、診療にまつわるコストアップが続く中、小・零細規模の診療所の倒産はしばらく高水準をたどることが危惧される」と東京商工リサーチ(2023.5.23)は警鐘をならしている。無利子・無担保のゼロゼロ融資の返済も始まっていく。水道・光熱費、物価の上昇への対応、医療従事者の労働に報いる賃金上昇も、公定価格の診療報酬だけに、プラス改定がなければ不可能である。就労人口の960万人は医療・福祉労働者である。政府の賃上げ政策の対象となる、大集団である。

 診療報酬は本体(技術料)と薬価等と一体である。医療費の伸び率を経済調整するのがその改定率だが20年以上もマイナス改定が連続し、2014年度以降は薬価差分の技術料振替が反故にされ続けている。 

 持続可能な医療体制の構築と地域活性化の観点からも診療報酬プラス改定を強く求める。

 

2023年106

 


 

◆2022年度概算医療費 診療種類別 医療費の対前年伸び率(対前年同期比)(%)  2023.9.7社会保障審議会医療保険部会資料より)

 111.jpg

 

◆2022年度概算医療費 医療費の動向(概観)  (2023.9.7社会保障審議会医療保険部会資料より)

222.jpg

 

 

◆コロナ特例の診療報酬の影響額  (2023.9.27中央社会保険医療協議会資料より)

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◆コロナ特例の診療報酬の影響額

 財務省の恣意的な資料・図.jpg

 

(注11受診当たり医療費は、医療費の総額を受診延日数で除して得た値。

(注2)年平均増加率、始点から終点までの増加率を年数のべき乗根で算出。

(出所)厚生労働省「医療費の動向調査」 

 

【参考】 ――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――

  1)20192022年度の年平均増加率の計算

    年平均増加率=555.jpg1.0432 4.3%(立方根)

 

  2)入院と入院外の医療費の推移(カッコは構成比) 入院外に1%強シフト

 

(単位:兆円)

入院

入院外

2019年度

17.640.5%)

14.934.1%)

2020年度

17.140.5%)

14.233.7%)

2021年度

17.639.8%)

15.334.6%)

2022年度

18.139.4%)

16.235.3%)