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2023/12/20 「医薬品の供給不足解消を求める要望書」を厚生労働大臣に提出しました
神奈川県保険医協会は2023年12月20日、下記の要望書を発表し、厚生労働大臣に提出しました。
厚生労働大臣 武見敬三 様
医薬品の供給不足解消を求める要望書
2023年12月20日
神奈川県保険医協会
理事長 田辺 由紀夫
政策部長 磯崎 哲男
◆安定供給可能な薬価制度の構築が先決
医薬品供給不足問題は、2021年から後発医薬品企業の不正により業務停止の行政処分が相次いで生じたことを"きっかけ"としているが、後発医薬品の産業構造上の問題、原料調達費が上昇しても価格転嫁できない公定薬価の構造的問題、医薬品流通に加え、新型コロナウイルス感染拡大等により深刻化し、現在に至るまで解消の目途が立っていない。日薬連の「医薬品の供給状況にかかる調査(2023 年 10月)」によれば、全医薬品の23.7%(前月比+0.8)が限定出荷・供給停止の状況にあり、後発品に限ると 33%(前月比+0.8)に上る。特に、基礎的医薬品の12.9%(前月比+1.3)、安定確保医薬品の25.3%(前月比+1.3)が通常出荷されておらず、いずれも前月よりも悪化している。
23年10月には、沢井製薬による品質試験の不正が発覚した。発表された「調査結果報告書」では、物的要因に起因する問題の一つとして「試験を担当する品質管理部の業務過多及び人員不足」が挙げられ、「品質管理部の担当者らが日々の業務に忙殺されており、そのような確認をするほどの時間的猶予と心理的余裕のない状況にあったことにも原因がある」との記載がある。後発医薬品の推進と薬価引き下げによる歪が、過酷な労働環境を生んではいないだろうか。
医療費削減のために薬価を下げる政策は既に限界に達している。不祥事の連鎖を止めるためには、企業がコンプライアンスを守り、安定して利益を確保した上で医薬品供給可能な体制が必要であり、そのためには薬価を支える制度の拡充が必要である。
◆2006年9月政策部長談話にてジェネリック礼讃傾向を疑問視
国は医療費抑制のため薬価の低い後発医薬品を推進し、後発医薬品普及率は約8割に達している。当会は2006年に政策部長談話「ジェネリック礼賛傾向は危険 経済性優先に潜む陥穽」を発表した。安全より安価が強調される医療政策は本末転倒であると、当時の後発医薬品促進政策を批判。薬剤の安定供給については資本力・経営体力の無さを疑問視してきた。国は今一度、医療費抑制ではなく健康や安全性に立脚した施策へ転換すべきである。
◆医療現場の不安を和らげる昭和55年通知の活用を
現在、医師が処方した薬が薬局に在庫がない場合に、別の銘柄の薬に変更するケースが生じている。薬剤の添付文書上は適応外であっても、薬理作用に基づき代替処方する場合が想定されるが、レセプト審査に通るかどうかは医療現場側の重大な懸念事項になっている。
『昭和55年通知』「保険診療における医薬品の取扱いについて(昭和55年9月3日付け保発第51号厚生省保険局長通知)」とは、①国内で承認され、再審査期間が終了した医薬品、②学術上の根拠と薬理作用に基づく適応外使用、①と②を満たす場合、個々の症例ごとに個別に保険適用の可否を判断するものである。『昭和55年通知』を周知することで、薬理作用に基づく代替処方が可能となる。医療現場の裁量が増すことで、現状を乗り切る一助になるものと考える。
医薬品の供給不安に関して、下記の事項を検討、実施することを要望する。
記
⑴ 医療上必要性の高い品目の安定供給を確保するため、薬価の下支え制度を拡充すること。
⑵ 医薬品供給不足を鑑み、「保険診療における医薬品の取扱いについて(昭和55年9月3日付け保発第51号厚生省保険局長通知)」に則り、供給不足医薬品の代替処方が薬理作用に基づき処方された場合は、審査上保険適用とされる旨を再度周知徹底する通知を発出すること。
以上
神奈川県保険医協会は2023年12月20日、下記の要望書を発表し、厚生労働大臣に提出しました。
厚生労働大臣 武見敬三 様
医薬品の供給不足解消を求める要望書
2023年12月20日
神奈川県保険医協会
理事長 田辺 由紀夫
政策部長 磯崎 哲男
◆安定供給可能な薬価制度の構築が先決
医薬品供給不足問題は、2021年から後発医薬品企業の不正により業務停止の行政処分が相次いで生じたことを"きっかけ"としているが、後発医薬品の産業構造上の問題、原料調達費が上昇しても価格転嫁できない公定薬価の構造的問題、医薬品流通に加え、新型コロナウイルス感染拡大等により深刻化し、現在に至るまで解消の目途が立っていない。日薬連の「医薬品の供給状況にかかる調査(2023 年 10月)」によれば、全医薬品の23.7%(前月比+0.8)が限定出荷・供給停止の状況にあり、後発品に限ると 33%(前月比+0.8)に上る。特に、基礎的医薬品の12.9%(前月比+1.3)、安定確保医薬品の25.3%(前月比+1.3)が通常出荷されておらず、いずれも前月よりも悪化している。
23年10月には、沢井製薬による品質試験の不正が発覚した。発表された「調査結果報告書」では、物的要因に起因する問題の一つとして「試験を担当する品質管理部の業務過多及び人員不足」が挙げられ、「品質管理部の担当者らが日々の業務に忙殺されており、そのような確認をするほどの時間的猶予と心理的余裕のない状況にあったことにも原因がある」との記載がある。後発医薬品の推進と薬価引き下げによる歪が、過酷な労働環境を生んではいないだろうか。
医療費削減のために薬価を下げる政策は既に限界に達している。不祥事の連鎖を止めるためには、企業がコンプライアンスを守り、安定して利益を確保した上で医薬品供給可能な体制が必要であり、そのためには薬価を支える制度の拡充が必要である。
◆2006年9月政策部長談話にてジェネリック礼讃傾向を疑問視
国は医療費抑制のため薬価の低い後発医薬品を推進し、後発医薬品普及率は約8割に達している。当会は2006年に政策部長談話「ジェネリック礼賛傾向は危険 経済性優先に潜む陥穽」を発表した。安全より安価が強調される医療政策は本末転倒であると、当時の後発医薬品促進政策を批判。薬剤の安定供給については資本力・経営体力の無さを疑問視してきた。国は今一度、医療費抑制ではなく健康や安全性に立脚した施策へ転換すべきである。
◆医療現場の不安を和らげる昭和55年通知の活用を
現在、医師が処方した薬が薬局に在庫がない場合に、別の銘柄の薬に変更するケースが生じている。薬剤の添付文書上は適応外であっても、薬理作用に基づき代替処方する場合が想定されるが、レセプト審査に通るかどうかは医療現場側の重大な懸念事項になっている。
『昭和55年通知』「保険診療における医薬品の取扱いについて(昭和55年9月3日付け保発第51号厚生省保険局長通知)」とは、①国内で承認され、再審査期間が終了した医薬品、②学術上の根拠と薬理作用に基づく適応外使用、①と②を満たす場合、個々の症例ごとに個別に保険適用の可否を判断するものである。『昭和55年通知』を周知することで、薬理作用に基づく代替処方が可能となる。医療現場の裁量が増すことで、現状を乗り切る一助になるものと考える。
医薬品の供給不安に関して、下記の事項を検討、実施することを要望する。
記
⑴ 医療上必要性の高い品目の安定供給を確保するため、薬価の下支え制度を拡充すること。
⑵ 医薬品供給不足を鑑み、「保険診療における医薬品の取扱いについて(昭和55年9月3日付け保発第51号厚生省保険局長通知)」に則り、供給不足医薬品の代替処方が薬理作用に基づき処方された場合は、審査上保険適用とされる旨を再度周知徹底する通知を発出すること。
以上