神奈川県保険医協会とは
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2023/8/23 政策部長談話 「オンライン診療専門医療の展開と薬剤処方の変容を警鐘する ガイドライン違反への厚労省の指導徹底と医療の営利化阻止を求める」
オンライン診療専門医療の展開と薬剤処方の変容を警鐘する
ガイドライン違反への厚労省の指導徹底と医療の営利化阻止を求める
神奈川県保険医協会
政策部長 磯崎 哲男
◆ガイドライン違反疑いが濃厚なオンライン診療事業の跋扈を憂う
営利企業が企業家的医師と結託し、実質、経営するオンライン診療ビジネスが、避妊薬処方、禁煙、痩身、漢方処方、脱毛症から、日常診療の高血圧へと進出し、次いで高脂血症治療へと展開され始めた。これらはテレビCMやネット広告も駆使した自由料金の自由診療だったが、遂に保険診療へも進出しだした。また、オンライン診療「専門」の診療所も出現し、オンライン診療事業へのアルバイト募集も盛んになっている。これらの中にオンライン診療のガイドライン違反の疑いが濃厚なものがある。流石に7月20日の中医協ではオンライン診療が全患者の5割超の診療所の存在が問題となったが、いままた僻地等での医師不在のオンライン診療の診療所開設が認められ、いずれ都市部運用への波及も懸念されている。これら喧しい動きを整理し、医療の在り方に関し、医療界はじめ世間に広く、警鐘する。
◆「場」と「所在」が不問のオンライン診療の盲点を衝いた自由診療での事業化
オンライン診療ビジネスとは、「オンライン診療+医薬品提供・配送」を骨格とした、「オンライン診療専門」の自由料金サービスであり、既に日常診療へ進出している。この診療ビジネスの医業は、法律等の盲点を衝いた、確立した「ビジネスモデル」に、もはやなっている。
オンライン診療は、医療機関などの「場」が「不要」で、医師の「所在」も「不問」なため、医療機関を開設せずに診療が脱法的に可能となる。自由診療であれば保険診療の規制はなく、行政指導も事実上、入らない。オンラインの「診療前相談」で、既往歴や服薬歴等を把握すれば、初見の患者でも、初診からオンライン診療が可能となっている。
つまり、営利企業が、①医療機関の開設許可をとらず、②勤務医のアルバイトや、医療機関の医師を組織化し、③また薬局を買収し抱きかかえ、④「利用規約」で「提携医療機関からの医療提供」等とし合法性を装い、⑤利用料の受領・決済システムと分配方法を整備することで、オンライン診療ビジネスの事業が可能となる。この医療法違反の疑いが濃厚な診療ビジネスが現実に動いている。
◆法律家やコンサルタントが背後で「指南」役に オンライン診療専門の登場や旺盛なアルバイト募集も
しかも、このビジネスモデルは、弁護士やコンサルタントのグループ等がいくつも背後に見えている。医療法等に抵触せずに、いかに企業や非医師が医療提供の「本丸」に参入するかの指南が、堂々と行われているのである。「法律家」が教示し、企業家的医師が主導している点が、この診療ビジネスの特徴である。
オンライン診療は、保険診療の制約をきらい、自由診療で2,000程度の医療機関で行われているとわれわれは推計している。中には、オンライン診療「専門」の診療所も存在し、その開業が指南もされている。最近は、保険診療でのオンライン診療「専門」診療所も登場してきている。後述するが、これらはオンライン診療のガイドラインから逸脱している。
更には、「自宅でできるオンライン診療」「空いた時間の有効活用」「スキマ時間で副業したい方へ」と、短時間、短期間も含めて、美容皮膚科などを中心にオンライン診療の定期アルバイト募集広告が活況を一方では呈している。医師の働き方改革により、業務時間にキャップをかけられた若手医師がこのようなアルバイトに参入する危惧もある。
◆日本医師会の代議員会でも問題に 「しっかり対応したい」
さすがに、日本医師会では今年3月の代議員会でオンライン診療に関し問題となっている。兵庫県の代議員がテレビCM等のオンライン診療の事業者を例に「そういうオンライン診療をメインにやるようなところは、かかりつけ医機能を発揮できるのか」と質し、こういう勢力への日医の対応が問われた。これに対し日医の常任理事が「ご指摘は日医としても非常に深刻に受け止め、考えている」「オンライン診療は無制限に行われるべきものではなく、対面診療を補完するという本来の役割をしっかり踏まえたものでなければならない」「それを逸脱するようなことは、国民の健康を守るという観点から危険にも繋がりかねない」と牽制し警鐘。「しっかり対応していきたい」との答弁となっている。
◆学会が警告する健康被害や、体調不良の問題例の地域医療への「丸投げ」が発生
既に、糖尿病薬(GLP-1受容体作動薬〈リベルサス〉)を痩せ薬として、自由診療のオンライン診療で処方され、急性膵炎などの健康被害が続出している。TBSの「NEWS23」や「THE TIME,」で報道され社会問題化した。消費者庁や厚労省、製造会社からも注意喚起が行われ、糖尿病学会は不適切な薬剤使用へ警告を発している。
また避妊薬処方でオンライン診療ビジネスから、地域の保険診療の医療機関へ問題例が「丸投げ」されフォローしているものもある。的確適切な診察、服用薬剤の説明もなされていないことが判明している。
東京都医師会では脱保険の美容クリニック開業が問題にされており、これらの中には痩身目的のオンライン診療・オンライン処方をサイドビジネス的に実施しているところもある。
オンライン診療は対面診療の補完であり、いまもガイドラインでは対面診療との組み合わせが規定されている。対面診療なしでの完結は条件付きの禁煙外来と犯罪・暴力関係の緊急避妊薬処方に限定されている。他は結果としてやむを得ず完結となる例外は認めているが、当初より専門、完結は認めていない。
◆中医協でオンライン診療への特化が問題に、R5年3月改訂で一部に釘刺し、新たな火種も
7月20日の中医協の入院・外来医療等の調査・評価分科会では調査データを基に、オンライン診療がごく一部の医療機関によって歪んだ形で使われていることが問題になっている。オンライン診療が全診療の5割を超える医療機関が23施設(1.6%)あり、中には高血圧などの特定疾患療養管理料の算定が月695件(31件/日;回答148施設の殆ど117施設は0件)となっており、偏りが大きいことがクローズアップされている。この数字は自由診療の状況を推し測る象徴的データであり、オンライン「専門」診療は確実に広がっていると思われる。中医協では診療傷病の上位にある不眠治療にガイドライン違反の向精神薬が処方されていないかどうか等も含め精査をしていくとしているが、自由診療のオンライン診療は伏魔殿の懸念がある。
この中医協に先立ち、今年3月にはガイドライン改訂があった。そこでは、オンライン診療を行う医師は所属医療機関及び当該医療機関の問い合わせ先を明らかにすることとなった。また、患者がいつでも医師の本人確認ができる情報及び医療機関の問い合わせ先をオンライン診療システム上に掲載することとなった。これで、医療機関の存在が不明瞭なオンライン診療ビジネスに一定の釘が刺さった。が、テレビ電話など汎用サービスを利用する場合は依然と、規制がかかっていない。
また、先頃、僻地等で医師の常駐しないオンライン診療の診療所開設の通知が発出された。積極面もあるが、これがいずれ都市部への援用へとつながる危険性は拭えない。これは規制改革推進会議の提案である。オンライン診療のもともとの出自は規制改革会議の投資等WGであり、遠隔診療の通知の解釈改訂からはじまり、ガイドラインの毎年改訂で今日に至っているからである。
◆医療の在り方が問われている 医療機関の矜持の発揮と奮起を
オンライン診療は距離要件や時間要件がなくなったが、事前に急変時対応の医療機関の明示、自院以外の対応の際は該当医療機関との日常的情報共有が規定されており、患者の全国募集は事実上不可能である。厚労省にはオンライン診療の実態調査とガイドラインの遵守・徹底を実地指導と併せ実施願いたい。
この問題は、医学の社会的適応といわれる「医療」の在り方を、医療者、患者、国民に問うている。利便優先での市場形成や患者需要が喚起され、指針を省みず抵抗感なくオンライン診療に勤しむ医療側の現実がある。また薬剤師の処方権を求める運動もおきている。コロナ禍の第5波で一時期8%となったオンライン診療の届出医療機関率は昨夏5%台に落ち、いま上昇したが8.7%とさほど増えていない。
営利企業の医療「本丸」への参入への対処、「薬だけもらえればいい」との短慮の払拭、オンライン診療をかかりつけ医が適正に実施しての悪貨の駆逐と、心ある医療側の奮起も求めたい。
2023年8月23日
◆オンライン診療ビジネス 脱法の構図
*医療機関との「提携契約」を盾に、医療機関が存在するかのように粉飾
◆オンライン診療の全国の医療機関の届出状況
オンライン診療専門医療の展開と薬剤処方の変容を警鐘する
ガイドライン違反への厚労省の指導徹底と医療の営利化阻止を求める
神奈川県保険医協会
政策部長 磯崎 哲男
◆ガイドライン違反疑いが濃厚なオンライン診療事業の跋扈を憂う
営利企業が企業家的医師と結託し、実質、経営するオンライン診療ビジネスが、避妊薬処方、禁煙、痩身、漢方処方、脱毛症から、日常診療の高血圧へと進出し、次いで高脂血症治療へと展開され始めた。これらはテレビCMやネット広告も駆使した自由料金の自由診療だったが、遂に保険診療へも進出しだした。また、オンライン診療「専門」の診療所も出現し、オンライン診療事業へのアルバイト募集も盛んになっている。これらの中にオンライン診療のガイドライン違反の疑いが濃厚なものがある。流石に7月20日の中医協ではオンライン診療が全患者の5割超の診療所の存在が問題となったが、いままた僻地等での医師不在のオンライン診療の診療所開設が認められ、いずれ都市部運用への波及も懸念されている。これら喧しい動きを整理し、医療の在り方に関し、医療界はじめ世間に広く、警鐘する。
◆「場」と「所在」が不問のオンライン診療の盲点を衝いた自由診療での事業化
オンライン診療ビジネスとは、「オンライン診療+医薬品提供・配送」を骨格とした、「オンライン診療専門」の自由料金サービスであり、既に日常診療へ進出している。この診療ビジネスの医業は、法律等の盲点を衝いた、確立した「ビジネスモデル」に、もはやなっている。
オンライン診療は、医療機関などの「場」が「不要」で、医師の「所在」も「不問」なため、医療機関を開設せずに診療が脱法的に可能となる。自由診療であれば保険診療の規制はなく、行政指導も事実上、入らない。オンラインの「診療前相談」で、既往歴や服薬歴等を把握すれば、初見の患者でも、初診からオンライン診療が可能となっている。
つまり、営利企業が、①医療機関の開設許可をとらず、②勤務医のアルバイトや、医療機関の医師を組織化し、③また薬局を買収し抱きかかえ、④「利用規約」で「提携医療機関からの医療提供」等とし合法性を装い、⑤利用料の受領・決済システムと分配方法を整備することで、オンライン診療ビジネスの事業が可能となる。この医療法違反の疑いが濃厚な診療ビジネスが現実に動いている。
◆法律家やコンサルタントが背後で「指南」役に オンライン診療専門の登場や旺盛なアルバイト募集も
しかも、このビジネスモデルは、弁護士やコンサルタントのグループ等がいくつも背後に見えている。医療法等に抵触せずに、いかに企業や非医師が医療提供の「本丸」に参入するかの指南が、堂々と行われているのである。「法律家」が教示し、企業家的医師が主導している点が、この診療ビジネスの特徴である。
オンライン診療は、保険診療の制約をきらい、自由診療で2,000程度の医療機関で行われているとわれわれは推計している。中には、オンライン診療「専門」の診療所も存在し、その開業が指南もされている。最近は、保険診療でのオンライン診療「専門」診療所も登場してきている。後述するが、これらはオンライン診療のガイドラインから逸脱している。
更には、「自宅でできるオンライン診療」「空いた時間の有効活用」「スキマ時間で副業したい方へ」と、短時間、短期間も含めて、美容皮膚科などを中心にオンライン診療の定期アルバイト募集広告が活況を一方では呈している。医師の働き方改革により、業務時間にキャップをかけられた若手医師がこのようなアルバイトに参入する危惧もある。
◆日本医師会の代議員会でも問題に 「しっかり対応したい」
さすがに、日本医師会では今年3月の代議員会でオンライン診療に関し問題となっている。兵庫県の代議員がテレビCM等のオンライン診療の事業者を例に「そういうオンライン診療をメインにやるようなところは、かかりつけ医機能を発揮できるのか」と質し、こういう勢力への日医の対応が問われた。これに対し日医の常任理事が「ご指摘は日医としても非常に深刻に受け止め、考えている」「オンライン診療は無制限に行われるべきものではなく、対面診療を補完するという本来の役割をしっかり踏まえたものでなければならない」「それを逸脱するようなことは、国民の健康を守るという観点から危険にも繋がりかねない」と牽制し警鐘。「しっかり対応していきたい」との答弁となっている。
◆学会が警告する健康被害や、体調不良の問題例の地域医療への「丸投げ」が発生
既に、糖尿病薬(GLP-1受容体作動薬〈リベルサス〉)を痩せ薬として、自由診療のオンライン診療で処方され、急性膵炎などの健康被害が続出している。TBSの「NEWS23」や「THE TIME,」で報道され社会問題化した。消費者庁や厚労省、製造会社からも注意喚起が行われ、糖尿病学会は不適切な薬剤使用へ警告を発している。
また避妊薬処方でオンライン診療ビジネスから、地域の保険診療の医療機関へ問題例が「丸投げ」されフォローしているものもある。的確適切な診察、服用薬剤の説明もなされていないことが判明している。
東京都医師会では脱保険の美容クリニック開業が問題にされており、これらの中には痩身目的のオンライン診療・オンライン処方をサイドビジネス的に実施しているところもある。
オンライン診療は対面診療の補完であり、いまもガイドラインでは対面診療との組み合わせが規定されている。対面診療なしでの完結は条件付きの禁煙外来と犯罪・暴力関係の緊急避妊薬処方に限定されている。他は結果としてやむを得ず完結となる例外は認めているが、当初より専門、完結は認めていない。
◆中医協でオンライン診療への特化が問題に、R5年3月改訂で一部に釘刺し、新たな火種も
7月20日の中医協の入院・外来医療等の調査・評価分科会では調査データを基に、オンライン診療がごく一部の医療機関によって歪んだ形で使われていることが問題になっている。オンライン診療が全診療の5割を超える医療機関が23施設(1.6%)あり、中には高血圧などの特定疾患療養管理料の算定が月695件(31件/日;回答148施設の殆ど117施設は0件)となっており、偏りが大きいことがクローズアップされている。この数字は自由診療の状況を推し測る象徴的データであり、オンライン「専門」診療は確実に広がっていると思われる。中医協では診療傷病の上位にある不眠治療にガイドライン違反の向精神薬が処方されていないかどうか等も含め精査をしていくとしているが、自由診療のオンライン診療は伏魔殿の懸念がある。
この中医協に先立ち、今年3月にはガイドライン改訂があった。そこでは、オンライン診療を行う医師は所属医療機関及び当該医療機関の問い合わせ先を明らかにすることとなった。また、患者がいつでも医師の本人確認ができる情報及び医療機関の問い合わせ先をオンライン診療システム上に掲載することとなった。これで、医療機関の存在が不明瞭なオンライン診療ビジネスに一定の釘が刺さった。が、テレビ電話など汎用サービスを利用する場合は依然と、規制がかかっていない。
また、先頃、僻地等で医師の常駐しないオンライン診療の診療所開設の通知が発出された。積極面もあるが、これがいずれ都市部への援用へとつながる危険性は拭えない。これは規制改革推進会議の提案である。オンライン診療のもともとの出自は規制改革会議の投資等WGであり、遠隔診療の通知の解釈改訂からはじまり、ガイドラインの毎年改訂で今日に至っているからである。
◆医療の在り方が問われている 医療機関の矜持の発揮と奮起を
オンライン診療は距離要件や時間要件がなくなったが、事前に急変時対応の医療機関の明示、自院以外の対応の際は該当医療機関との日常的情報共有が規定されており、患者の全国募集は事実上不可能である。厚労省にはオンライン診療の実態調査とガイドラインの遵守・徹底を実地指導と併せ実施願いたい。
この問題は、医学の社会的適応といわれる「医療」の在り方を、医療者、患者、国民に問うている。利便優先での市場形成や患者需要が喚起され、指針を省みず抵抗感なくオンライン診療に勤しむ医療側の現実がある。また薬剤師の処方権を求める運動もおきている。コロナ禍の第5波で一時期8%となったオンライン診療の届出医療機関率は昨夏5%台に落ち、いま上昇したが8.7%とさほど増えていない。
営利企業の医療「本丸」への参入への対処、「薬だけもらえればいい」との短慮の払拭、オンライン診療をかかりつけ医が適正に実施しての悪貨の駆逐と、心ある医療側の奮起も求めたい。
2023年8月23日
◆オンライン診療ビジネス 脱法の構図
*医療機関との「提携契約」を盾に、医療機関が存在するかのように粉飾
◆オンライン診療の全国の医療機関の届出状況