神奈川県保険医協会とは
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2024/10/31 患者の年収区分を毎回目にする苦痛を政府は知ってほしい プライバシー侵害の懸念、マイナ保険証への一体化は医療現場を疲弊させる
患者の年収区分を毎回目にする苦痛を政府は知ってほしい
プライバシー侵害の懸念、マイナ保険証への一体化は医療現場を疲弊させる
神奈川県保険医協会
政策部長 磯崎 哲男
◆マイナ保険証での受付は、高額療養費の年収区分が毎回わかる
健康保険証の新規発行の廃止となる12月2日まで、ひと月となった。健康保険は強制適用、強制加入であり、健康保険証は「義務」交付されてきた。これを「任意」取得のマイナンバーカードを保険証登録した「マイナ保険証」へ、健康保険証を一本化する政策は倒錯している。マイナ保険証の利用率は未だ13%であり強引すぎる。医療施設の受付ではトラブルが絶えず、今後、一層の増加は必至である。
しかも、マイナ保険証は、高額療養費の限度額適用の利便が説かれるが、逆にプライバシー侵害の懸念がある。政府広報はマイナ保険証がなくとも資格確認書で受診が可能と10月28日にホームぺージに上げたが、健康保険証を残せばよいだけである。総選挙は政治とカネが問われたが、隠れた争点、保険証廃止へ審判が下った面もある。政府には虚心坦懐、健康保険証の廃止の延期、見直しを改めて求める。
◆患者の限度額適用区分の毎回表示は受診には不要 患者の格付けのようで嫌な気分に襲われる
マイナ保険証はカードリーダーを通すと受付では、高額療養費の適用区分が表示される。健康保険では、患者負担の「上限」(=高額療養費の適用)が、患者の収入に応じランク化・区分化がされている。保険者に事前申請し、「限度額適用認定証」を得て医療機関に提示し上限適用される。マイナ保険証はこれが不要で、患者がカードリーダー画面でこの適用に「同意」すれば、受付がレセプトコンピュータ端末の画面で閲覧・確認となっていた。これが、「同意」の簡略化に伴い、10月7日からは、この限度額適用の同意が省略され、一律的に毎回、受付画面に表示されるようになっている。
薬剤情報等と違い、要配慮個人情報(法律で取得に本人同意が必要)にあたらないとの理由で、今年2月29日の医療保険部会で厚労省から提案されている。しかし、この適用区分は「ア」「イ」「ウ」「エ」と表示されても、それは順に「年収約1,160万円以上」「年収約770~約1,160万円」「年収約370~約770万円」「年収約370万円以下」を意味する。センシティブで機微性が高く、プライバシー侵害の懸念がある。
診療所や歯科の外来医療では限度額の適用が殆どなく、受診のたびに表示する必要はない。毎回それを目にする受付事務は、患者の収入ランクを強制的に目にし、陰鬱な気分となっている。地域医療において、受付事務は患者と医療の窓口であり、医療機関のある地域でみな生きている。医療現場は疲弊する。マイナ保険証への一体化への邁進は、立ち止まって、再考をすべきである。
◆派遣社員の12月1日契約終了での国保への異動 トラブルは12月から発生する
12月1日をもって健康保険証の新規発行は終了するが、現行の保険証は最大1年間有効であり、国民健康保険や後期高齢者医療は有効期限(多くは7月末)までは使える。しかし、派遣社員や転居で保険者異動の際は、12月2日以降のトラブルは必至となる。
当協会への相談で、12月1日に派遣契約が切れ、12月2日に社会保険から国民健康保険へと加入異動となる例があった。マイナ保険証の登録をしていなければ、国保加入と同時に代替の資格確認書が交付されるが、登録し未利用の場合は資格確認書が交付されず右往左往となる。契約終了が年末ならなおさら混乱する。先の政府広報は「まだ、マイナ保険証をお持ちでなくても、これまでどおりの医療を、あなたに」と自動交付や申請交付を謳うが、自動交付の前提、マイナ保険証の登録解除は一切触れていない。
10月28日より解除可能だが、紙によるアナログでの申請であり、厚労省も協会けんぽ、健保連など保険者も、申請用紙のダウンロードは出来ず、照会先電話番号もないなど不親切、極まりない。
医療機関窓口での混乱、受付事務の過重な説明負担が容易に想像がつく。健康保険の資格情報を記した「資格情報のお知らせ」が、今年9月、国民の手許に届いたが、既に理解が及ばず混乱が生じている。これを保険証として通用させた方が良いとの声も上がる。大勇は勇ならず、君子は豹変す、である。
健康保険証廃止の延期、見直し、健康保険証とマイナ保険証の併存を改めて強く求める。
2024年10月31日
患者の年収区分を毎回目にする苦痛を政府は知ってほしい
プライバシー侵害の懸念、マイナ保険証への一体化は医療現場を疲弊させる
神奈川県保険医協会
政策部長 磯崎 哲男
◆マイナ保険証での受付は、高額療養費の年収区分が毎回わかる
健康保険証の新規発行の廃止となる12月2日まで、ひと月となった。健康保険は強制適用、強制加入であり、健康保険証は「義務」交付されてきた。これを「任意」取得のマイナンバーカードを保険証登録した「マイナ保険証」へ、健康保険証を一本化する政策は倒錯している。マイナ保険証の利用率は未だ13%であり強引すぎる。医療施設の受付ではトラブルが絶えず、今後、一層の増加は必至である。
しかも、マイナ保険証は、高額療養費の限度額適用の利便が説かれるが、逆にプライバシー侵害の懸念がある。政府広報はマイナ保険証がなくとも資格確認書で受診が可能と10月28日にホームぺージに上げたが、健康保険証を残せばよいだけである。総選挙は政治とカネが問われたが、隠れた争点、保険証廃止へ審判が下った面もある。政府には虚心坦懐、健康保険証の廃止の延期、見直しを改めて求める。
◆患者の限度額適用区分の毎回表示は受診には不要 患者の格付けのようで嫌な気分に襲われる
マイナ保険証はカードリーダーを通すと受付では、高額療養費の適用区分が表示される。健康保険では、患者負担の「上限」(=高額療養費の適用)が、患者の収入に応じランク化・区分化がされている。保険者に事前申請し、「限度額適用認定証」を得て医療機関に提示し上限適用される。マイナ保険証はこれが不要で、患者がカードリーダー画面でこの適用に「同意」すれば、受付がレセプトコンピュータ端末の画面で閲覧・確認となっていた。これが、「同意」の簡略化に伴い、10月7日からは、この限度額適用の同意が省略され、一律的に毎回、受付画面に表示されるようになっている。
薬剤情報等と違い、要配慮個人情報(法律で取得に本人同意が必要)にあたらないとの理由で、今年2月29日の医療保険部会で厚労省から提案されている。しかし、この適用区分は「ア」「イ」「ウ」「エ」と表示されても、それは順に「年収約1,160万円以上」「年収約770~約1,160万円」「年収約370~約770万円」「年収約370万円以下」を意味する。センシティブで機微性が高く、プライバシー侵害の懸念がある。
診療所や歯科の外来医療では限度額の適用が殆どなく、受診のたびに表示する必要はない。毎回それを目にする受付事務は、患者の収入ランクを強制的に目にし、陰鬱な気分となっている。地域医療において、受付事務は患者と医療の窓口であり、医療機関のある地域でみな生きている。医療現場は疲弊する。マイナ保険証への一体化への邁進は、立ち止まって、再考をすべきである。
◆派遣社員の12月1日契約終了での国保への異動 トラブルは12月から発生する
12月1日をもって健康保険証の新規発行は終了するが、現行の保険証は最大1年間有効であり、国民健康保険や後期高齢者医療は有効期限(多くは7月末)までは使える。しかし、派遣社員や転居で保険者異動の際は、12月2日以降のトラブルは必至となる。
当協会への相談で、12月1日に派遣契約が切れ、12月2日に社会保険から国民健康保険へと加入異動となる例があった。マイナ保険証の登録をしていなければ、国保加入と同時に代替の資格確認書が交付されるが、登録し未利用の場合は資格確認書が交付されず右往左往となる。契約終了が年末ならなおさら混乱する。先の政府広報は「まだ、マイナ保険証をお持ちでなくても、これまでどおりの医療を、あなたに」と自動交付や申請交付を謳うが、自動交付の前提、マイナ保険証の登録解除は一切触れていない。
10月28日より解除可能だが、紙によるアナログでの申請であり、厚労省も協会けんぽ、健保連など保険者も、申請用紙のダウンロードは出来ず、照会先電話番号もないなど不親切、極まりない。
医療機関窓口での混乱、受付事務の過重な説明負担が容易に想像がつく。健康保険の資格情報を記した「資格情報のお知らせ」が、今年9月、国民の手許に届いたが、既に理解が及ばず混乱が生じている。これを保険証として通用させた方が良いとの声も上がる。大勇は勇ならず、君子は豹変す、である。
健康保険証廃止の延期、見直し、健康保険証とマイナ保険証の併存を改めて強く求める。
2024年10月31日