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2024/10/8 政策部長談話 拙速を改め虚心に健康保険証の廃止延期を 良い医療や救急時活用でのマイナ保険証は論理破綻している

拙速を改め虚心に健康保険証の廃止延期を
良い医療や救急時活用でのマイナ保険証は論理破綻している

 

神奈川県保険医協会

政策部長  磯崎 哲男

 


 

◆理由が失当しているマイナ保険証利用の優位性

 石破首相が自民党総裁選前に発言した健康保険証廃止の見直しに期待した矢先、「従来方針どおり」と、不思議な発言がデジタル相、厚労相、官房長官と連日あり、遂に首相も続き、当惑している。しかも、廃止理由としてあげるマイナ保険証利用促進の理由、①健康・医療情報に基づくより良い医療の提供、②救急時の活用、はいずれも失当しており、説明になっていない。虚心坦懐、利用率がいまだ12%と低いマイナ保険証への一本化施策は、拙速を改め、保険証廃止の延期の有言実行へ努めて戴きたい。

 

◆お薬手帳や検査・画像データのリアルタイムデータの診療利用、診療連携活用の方が優位

 「患者本人の健康・医療情報に基づくより良い医療提供」のフレーズは繰り返し、マイナ保険証利用の理由としてあげられてきた。しかしそれは、最短で1か月前のレセプトに記載された薬剤情報と、過去の限定的な特定健診での検査項目データでしかない。主に薬剤情報の利用がいわれるが、時差のない「お薬手帳」の方が断然優れている。また受診時の検査データや画像データは日常的に、診療連携の際に情報のやりとりがなされており、マイナ保険証利用でこれよりも良い医療を提供することはない。マイナ保険証はカルテ情報と紐づいてはいない。病名や病歴も確認できない。

 視野に入れている、標準化された電子カルテによる3文書6情報(【文書情報】=①診療情報提供書、②キー画像等を含む退院時サマリー、③健康診断結果報告書、【医療情報】=①傷病名、②アレルギー情報、③感染症情報、④薬剤禁忌情報、⑤検査情報、⑥処方情報)による、診療情報連携の取組みも、患者同意取得の仕組みも含め、システム構築や環境整備は、まだまだ先の話である。幻想の演出は禁物である。

 

◆被災時の服薬情報の照会でマイナ保険証は不要 「災害時医療情報閲覧機能」が能登半島地震で活躍

 災害や事故などの緊急時に服薬情報の照会で、マイナ保険証は有用とされるが、これは現実の理解が足らない。そもそも地震、津波、事故、急病などの緊急時は、マイナ保険証は殆ど携帯していない。

 よって、いま災害時はオンライン資格確認システムの災害時モードで、被災者がマイナンバーカードや健康保険証を持っていなくとも、氏名、生年月日、性別、住所といった情報があれば、薬剤情報などを医療機関が閲覧できる。「災害時医療情報閲覧機能」という。これが能登半島地震では威力を発揮し、3万2千回以上利用されている。マイナ保険証利用とは関係がない。

 マイナ保険証利用は、これまでも①リアルタイムの資格確認に有用、②なりすまし防止に有用、などと説かれてきたが、根拠薄弱で雲散霧消している。⑴オンライン資格確認システムにより、保険証でも被保険者の記号・番号等の手入力で、リアルタイムで確認がとれる。また転職や住居移動で、資格変更があった場合に審査支払機関はレセプトを医療機関に返戻せずに、新資格の保険者へ請求を「振替」ており不便はない。

 ⑵「なりすまし」は公式報告はなく、厚労省の審議官が市町村国保で2017年から22年まで50件と国会で答弁しており、これは年間10件であり、職域保険の件数も鑑み、年間受診20億回からみて1億回に1件となる。殆どないに等しく、従来、医療現場では必要に応じ現場判断で、運転免許証や写真付き身分証明書で対応している。マイナ保険証に拘泥する理由はいずれも乏しく、先の二つも同様である。

 

◆デジタルとアナログの併用は既存システムとの併用 既存の保険証を資格確認書へ変更は混乱の元

 高速道路のETCも既存の料金所との併用、交通系ICカードも既存の切符との併用である。デジタルとアナログの併用は、マイナ保険証と健康保険証の併用となる。名称変更で全員に自動交付されない資格確認書ではない。マイナ保険証を保持する「未利用者」は解除しなければ、資格確認書が交付されない。解除可能な10月に入ったが保険者は解除手続きが未だ不可能で困窮している。今後も社会混乱は必至である。一刻も早く、石破首相には賢明な判断と国民への安心感の醸成を、心から期待する。

2024年10月8日

 

 

拙速を改め虚心に健康保険証の廃止延期を
良い医療や救急時活用でのマイナ保険証は論理破綻している

 

神奈川県保険医協会

政策部長  磯崎 哲男

 


 

◆理由が失当しているマイナ保険証利用の優位性

 石破首相が自民党総裁選前に発言した健康保険証廃止の見直しに期待した矢先、「従来方針どおり」と、不思議な発言がデジタル相、厚労相、官房長官と連日あり、遂に首相も続き、当惑している。しかも、廃止理由としてあげるマイナ保険証利用促進の理由、①健康・医療情報に基づくより良い医療の提供、②救急時の活用、はいずれも失当しており、説明になっていない。虚心坦懐、利用率がいまだ12%と低いマイナ保険証への一本化施策は、拙速を改め、保険証廃止の延期の有言実行へ努めて戴きたい。

 

◆お薬手帳や検査・画像データのリアルタイムデータの診療利用、診療連携活用の方が優位

 「患者本人の健康・医療情報に基づくより良い医療提供」のフレーズは繰り返し、マイナ保険証利用の理由としてあげられてきた。しかしそれは、最短で1か月前のレセプトに記載された薬剤情報と、過去の限定的な特定健診での検査項目データでしかない。主に薬剤情報の利用がいわれるが、時差のない「お薬手帳」の方が断然優れている。また受診時の検査データや画像データは日常的に、診療連携の際に情報のやりとりがなされており、マイナ保険証利用でこれよりも良い医療を提供することはない。マイナ保険証はカルテ情報と紐づいてはいない。病名や病歴も確認できない。

 視野に入れている、標準化された電子カルテによる3文書6情報(【文書情報】=①診療情報提供書、②キー画像等を含む退院時サマリー、③健康診断結果報告書、【医療情報】=①傷病名、②アレルギー情報、③感染症情報、④薬剤禁忌情報、⑤検査情報、⑥処方情報)による、診療情報連携の取組みも、患者同意取得の仕組みも含め、システム構築や環境整備は、まだまだ先の話である。幻想の演出は禁物である。

 

◆被災時の服薬情報の照会でマイナ保険証は不要 「災害時医療情報閲覧機能」が能登半島地震で活躍

 災害や事故などの緊急時に服薬情報の照会で、マイナ保険証は有用とされるが、これは現実の理解が足らない。そもそも地震、津波、事故、急病などの緊急時は、マイナ保険証は殆ど携帯していない。

 よって、いま災害時はオンライン資格確認システムの災害時モードで、被災者がマイナンバーカードや健康保険証を持っていなくとも、氏名、生年月日、性別、住所といった情報があれば、薬剤情報などを医療機関が閲覧できる。「災害時医療情報閲覧機能」という。これが能登半島地震では威力を発揮し、3万2千回以上利用されている。マイナ保険証利用とは関係がない。

 マイナ保険証利用は、これまでも①リアルタイムの資格確認に有用、②なりすまし防止に有用、などと説かれてきたが、根拠薄弱で雲散霧消している。⑴オンライン資格確認システムにより、保険証でも被保険者の記号・番号等の手入力で、リアルタイムで確認がとれる。また転職や住居移動で、資格変更があった場合に審査支払機関はレセプトを医療機関に返戻せずに、新資格の保険者へ請求を「振替」ており不便はない。

 ⑵「なりすまし」は公式報告はなく、厚労省の審議官が市町村国保で2017年から22年まで50件と国会で答弁しており、これは年間10件であり、職域保険の件数も鑑み、年間受診20億回からみて1億回に1件となる。殆どないに等しく、従来、医療現場では必要に応じ現場判断で、運転免許証や写真付き身分証明書で対応している。マイナ保険証に拘泥する理由はいずれも乏しく、先の二つも同様である。

 

◆デジタルとアナログの併用は既存システムとの併用 既存の保険証を資格確認書へ変更は混乱の元

 高速道路のETCも既存の料金所との併用、交通系ICカードも既存の切符との併用である。デジタルとアナログの併用は、マイナ保険証と健康保険証の併用となる。名称変更で全員に自動交付されない資格確認書ではない。マイナ保険証を保持する「未利用者」は解除しなければ、資格確認書が交付されない。解除可能な10月に入ったが保険者は解除手続きが未だ不可能で困窮している。今後も社会混乱は必至である。一刻も早く、石破首相には賢明な判断と国民への安心感の醸成を、心から期待する。

2024年10月8日