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2024/8/2 政策部長談話「遂に、院内処方で欠品が続出・常態化 医薬品の安定供給へ政府の迅速・実効ある対応を強く求める」

遂に、院内処方で欠品が続出・常態化

医薬品の安定供給へ政府の迅速・実効ある対応を強く求める

 

神奈川県保険医協会

政策部長  磯崎 哲男

 


 

◆地域医療に既に大きな支障 院内処方は医療が成り立たない危険

 2020年末に発覚した後発医薬品メーカーの不祥事を端緒に、負の連鎖や構造問題も重なり、患者に必要な医薬品が届かない重大な事態が依然、解決していない。状況は悪化の一途というのが現場実感である。とりわけ、院内処方の医療機関は、医薬品が卸業者から入らない欠品品目が相次ぎ、患者の治療に支障が出始めている。面で支える「かかりつけ医機能」、地域医療の基盤を崩す事態にあり、この改善・解決は喫緊の国民的課題である。政府、厚労省とも取組みを進めてはいるが、①リアルタイムの現場把握や②卸業者への適正納入の要請、③供給相談窓口の設置と需給調整等、迅速に実効ある対応を強く求める。

 

◆医療現場は日々、困惑 視界不良 NHK「クローズアップ現代」"長期化する薬不足"の衝撃

 医療現場はどうなっているか。例えば、横浜市内の眼科では今夏、点眼薬の同種同効・代替品すら入荷せず在庫が底を尽き、処方箋を発行し院外処方に切り替えたものの、薬局も在庫不足で本数制限の要望がくる状況である。しかも患者は数軒の薬局を渡り歩きやっと在庫のある薬局に辿り着いている。

 また同市内の小児科では春先以降、欠品が10品目にも及びこの状況は改善されず常態となっている。

 昨年10月に日本医師会が発表した「医薬品供給不足 緊急アンケート」結果(実施:89日~930日)では、入手困難な医薬品の有無の設問に、「入手困難である」と回答した割合が90.2%と全国で困窮状況にあり、また、「卸に発注した医薬品の納入状況」については、「発注しても納品されない」状況が49.7%であった。更には、「院外薬局からの医薬品在庫不足に関する連絡の有無」に関しては、「疑義照会等も含めた医薬品不足の連絡があった」と回答した割合は74.0%となっていた。

 この下で、現在の欠品の続出は、状況悪化を示す事実であり、氷山の一角である。今年618日、NHK『クローズアップ現代』では特集「治る病気が治せない!? "長期化する薬不足"なぜ起きた」を報道し、薬局を回っても薬が入手できない現断面を的確に伝え、問題の構図を明らかにしている。

  

◆院内処方施設は全国で4割弱 医薬品の通常出荷は8割、限定出荷は1割強、医薬品供給の均霑化が鍵

 全国で院内処方の診療所は36.1%(院外併用含む)ある(厚労省・令和2年医療施設調査)。高齢者や小児づれの親子など患者の物理的負担や利便、経済的負担への配慮、地域的に薬局が近隣に不在か、僅少などの理由から院内処方を選択しているところが多い。

 厚労省はこの間、医薬品供給の「見える化」を図ってきた。その「医療用医薬品供給状況」(2024730日現在)では、薬価削除での供給停止を除く全16,697品目で「通常出荷」が80.3%、「限定出荷」12.6%であり、「出荷停止」は4.6%に過ぎない。現場実態や現場実感との乖離がある。特殊事情のある例外品を除き、汎用医薬品の供給の均霑化により状況改善の余地があると思われる。

 後発品の数量シェアが80%となったいま、不祥事の際に先発メーカーが該当企業の生産量のカバー不能となっており、企業体力や生産ラインの脆弱な後発品企業の過当競争1や薬価改定で不採算となり生産撤退となることに加え、毎年改定となり薬価下落に拍車がかかるなど、構造問題への対応は肝要である。 

 先頃、武見厚労大臣は後発品企業へ業界再編を要請した。また2027年度運用に向け、医薬品の在庫、流通状況を可視化するシステムの開発に動きだしている。これらの動きは期待をしたい。

 ただ、足元の危機への対応は喫緊である。①いまある、「医療用解熱鎮痛薬等の供給相談窓口(医療用解熱鎮痛薬等110番)」にならい「医療用医薬品110番」の設置や、②コロナ禍で設置し現在も医療機能情報提供制度で稼働しているG-MIS(医療機関等情報支援システム)の適用を拡大し現場実態をリアルに把握し、③卸業者へは厚労省より要請し、地域医療を守る観点で診療所や小規模薬局への医薬品納入の均霑化を図るなど、医薬品供給の偏在是正策は取り得る。昨年「医薬品の迅速・安定供給実現」へ「有識者検討会」報告書は「緊急時」に政府のイニシアチブを求めている。医薬品安定供給の強靭化に向け、叡知と底力の発揮を切望する。

 2024年8月2日

 

1 後発医薬品企業の現状について

〇「後発医薬品産業の現状等について」(https://www.mhlw.go.jp/content/10807000/001127776.pdf

(第1回 後発医薬品の安定供給等の実現に向けた産業構造のあり方に関する検討会・資料)

〇「後発医薬品の安定供給等の実現に向けた産業構造のあり方に関する検討会 報告書」(令和6年5月22日)

https://www.mhlw.go.jp/content/10807000/001256227.pdf

 

 

◆「医療用解熱鎮痛薬等110番」の仕組み (*これにならい、「医療用医薬品110番」(仮称)の設置を)

◆.png

 (厚労省HP「医療用解熱鎮痛薬等の供給相談窓口(医療用解熱鎮痛薬等110番)について」より)

 

 

◇.png

 

遂に、院内処方で欠品が続出・常態化

医薬品の安定供給へ政府の迅速・実効ある対応を強く求める

 

神奈川県保険医協会

政策部長  磯崎 哲男

 


 

◆地域医療に既に大きな支障 院内処方は医療が成り立たない危険

 2020年末に発覚した後発医薬品メーカーの不祥事を端緒に、負の連鎖や構造問題も重なり、患者に必要な医薬品が届かない重大な事態が依然、解決していない。状況は悪化の一途というのが現場実感である。とりわけ、院内処方の医療機関は、医薬品が卸業者から入らない欠品品目が相次ぎ、患者の治療に支障が出始めている。面で支える「かかりつけ医機能」、地域医療の基盤を崩す事態にあり、この改善・解決は喫緊の国民的課題である。政府、厚労省とも取組みを進めてはいるが、①リアルタイムの現場把握や②卸業者への適正納入の要請、③供給相談窓口の設置と需給調整等、迅速に実効ある対応を強く求める。

 

◆医療現場は日々、困惑 視界不良 NHK「クローズアップ現代」"長期化する薬不足"の衝撃

 医療現場はどうなっているか。例えば、横浜市内の眼科では今夏、点眼薬の同種同効・代替品すら入荷せず在庫が底を尽き、処方箋を発行し院外処方に切り替えたものの、薬局も在庫不足で本数制限の要望がくる状況である。しかも患者は数軒の薬局を渡り歩きやっと在庫のある薬局に辿り着いている。

 また同市内の小児科では春先以降、欠品が10品目にも及びこの状況は改善されず常態となっている。

 昨年10月に日本医師会が発表した「医薬品供給不足 緊急アンケート」結果(実施:89日~930日)では、入手困難な医薬品の有無の設問に、「入手困難である」と回答した割合が90.2%と全国で困窮状況にあり、また、「卸に発注した医薬品の納入状況」については、「発注しても納品されない」状況が49.7%であった。更には、「院外薬局からの医薬品在庫不足に関する連絡の有無」に関しては、「疑義照会等も含めた医薬品不足の連絡があった」と回答した割合は74.0%となっていた。

 この下で、現在の欠品の続出は、状況悪化を示す事実であり、氷山の一角である。今年618日、NHK『クローズアップ現代』では特集「治る病気が治せない!? "長期化する薬不足"なぜ起きた」を報道し、薬局を回っても薬が入手できない現断面を的確に伝え、問題の構図を明らかにしている。

  

◆院内処方施設は全国で4割弱 医薬品の通常出荷は8割、限定出荷は1割強、医薬品供給の均霑化が鍵

 全国で院内処方の診療所は36.1%(院外併用含む)ある(厚労省・令和2年医療施設調査)。高齢者や小児づれの親子など患者の物理的負担や利便、経済的負担への配慮、地域的に薬局が近隣に不在か、僅少などの理由から院内処方を選択しているところが多い。

 厚労省はこの間、医薬品供給の「見える化」を図ってきた。その「医療用医薬品供給状況」(2024730日現在)では、薬価削除での供給停止を除く全16,697品目で「通常出荷」が80.3%、「限定出荷」12.6%であり、「出荷停止」は4.6%に過ぎない。現場実態や現場実感との乖離がある。特殊事情のある例外品を除き、汎用医薬品の供給の均霑化により状況改善の余地があると思われる。

 後発品の数量シェアが80%となったいま、不祥事の際に先発メーカーが該当企業の生産量のカバー不能となっており、企業体力や生産ラインの脆弱な後発品企業の過当競争1や薬価改定で不採算となり生産撤退となることに加え、毎年改定となり薬価下落に拍車がかかるなど、構造問題への対応は肝要である。 

 先頃、武見厚労大臣は後発品企業へ業界再編を要請した。また2027年度運用に向け、医薬品の在庫、流通状況を可視化するシステムの開発に動きだしている。これらの動きは期待をしたい。

 ただ、足元の危機への対応は喫緊である。①いまある、「医療用解熱鎮痛薬等の供給相談窓口(医療用解熱鎮痛薬等110番)」にならい「医療用医薬品110番」の設置や、②コロナ禍で設置し現在も医療機能情報提供制度で稼働しているG-MIS(医療機関等情報支援システム)の適用を拡大し現場実態をリアルに把握し、③卸業者へは厚労省より要請し、地域医療を守る観点で診療所や小規模薬局への医薬品納入の均霑化を図るなど、医薬品供給の偏在是正策は取り得る。昨年「医薬品の迅速・安定供給実現」へ「有識者検討会」報告書は「緊急時」に政府のイニシアチブを求めている。医薬品安定供給の強靭化に向け、叡知と底力の発揮を切望する。

 2024年8月2日

 

1 後発医薬品企業の現状について

〇「後発医薬品産業の現状等について」(https://www.mhlw.go.jp/content/10807000/001127776.pdf

(第1回 後発医薬品の安定供給等の実現に向けた産業構造のあり方に関する検討会・資料)

〇「後発医薬品の安定供給等の実現に向けた産業構造のあり方に関する検討会 報告書」(令和6年5月22日)

https://www.mhlw.go.jp/content/10807000/001256227.pdf

 

 

◆「医療用解熱鎮痛薬等110番」の仕組み (*これにならい、「医療用医薬品110番」(仮称)の設置を)

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 (厚労省HP「医療用解熱鎮痛薬等の供給相談窓口(医療用解熱鎮痛薬等110番)について」より)

 

 

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