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2025/2/17 長期収載品の選定療養化の差額料金は実額計算へ改めるべき 点数計算での超過負担と説明困難の矛盾解消を早期に求める

長期収載品の選定療養化の差額料金は実額計算へ改めるべき

点数計算での超過負担と説明困難の矛盾解消を早期に求める

 

神奈川県保険医協会

政策部長  磯崎 哲男

 


 

◆差額料金は実額計算が基本 点数計算で現場は説明不能

 長期収載品(後発医薬品がある先発医薬品)の選定療養化で、患者負担総額が薬価を超える矛盾が出現し、医療現場は説明に窮する事態となっている。昨年10月導入以降、依然と放置されている。長期収載品より安い後発品との価格差の1/4を保険から外し差額料金として負担することになったが、差額料金を実額計算から点数計算の適用としたため、薬価の低い長期収載品は、患者負担が10割を超える、信じ難い状況となっている。「差額料金取り過ぎ」状態であり、保険診療、皆保険制度に悖る仕組みとなっている。厚労省は早期に差額料金を実額計算へ改め、この矛盾を解消するよう強く求める。

 

◆薬価15円以下は保険請求1点、差額料金も1点プラス消費税で計21円

 差額ベッドや歯科の金合金材料など、選定療養の差額料金(=「特別の料金」)は全て実額計算である。今回、長期収載品は後発品との価格差1/4の差額徴収も実額計算なら矛盾は生じなかったものの、点数計算のルールを、突如、適用したために理解不能な事態に陥っている。なるべく簡潔に説明する。

 保険診療は1点10円の点数で保険請求となる。診療報酬の技術料は点数で公示されるが、医薬品は各品目を円表示で、銭単位までの薬価として薬価基準に収載される。この薬価を点数換算し薬剤料を保険請求する。ただし薬剤料は所定単位の薬価15円以下は一律に1点として計算するルールになっている。

 よってこのルールを差額料金に適用すると、薬価15円の長期収載品の場合、保険分が1点、後発医薬品との「価格差1/4」の差額料金も1点で計算することになる。後者は消費税が入るので、医薬品の診療費用は10円+11円=21円となり、薬価15円を超える。実額計算なら差額料金は4円限度である。(後発医薬品は0円超なので価格差1/4は15/4=3.75円未満。消費税を入れて3.75×1.1=4.125≒4円)

 

◆患者負担率100%超過が、実額計算なら4割台の患者負担で落着 すり替えられた点数計算への適用

 実際例を示す。長期収載品のボルタレン錠25mg(薬価7.9円:後発品との価格差1/4:0.55円)1回分1錠を14回分処方した場合に3割の患者負担だと、保険分の患者負担が40円、差額料金(特別の料金)が154円で患者負担総額が194円となり、医薬品の薬価合計110.6円に対して175.4%となる。薬価を10割負担するより高い、不可思議な状況となる。これでは医療機関や薬局では説明がつかない。

 これを従前どおり、実額計算に戻せば、保険分の患者負担は40円、差額料金8円で患者負担総額が48円となり、医薬品の薬価合計110.6円に対して43.3%の患者負担率となる。

 この長期収載品の選定療養化はイノベーション推進の財源捻出策として2023年11月9日の医療保険部会に突如、提案され、同部会では11月29日、12月8日と議論の末、後発品との価格差の1/4を保険外化し差額料金とすることで決着した。この議論の資料では、差額料金は実額計算である。

 これが一転するのは2024年7月17日の中医協である。差額料金は点数計算適用とされた。この席では「医療の必要性」の4類型が行政提案され、医師の裁量権への侵害が耳目を集め、隠された感が強い。

 

◆対象品目の約1/4が100%超患者負担、従来の患者負担の約2倍以上は過半数

 仮に長期収載品の薬価の1/4を保険外とすれば、3割負担の患者の場合、薬剤料は5割弱の負担となる(∵(1-1/4)×30%+25%=47.5%(≒50%))。今回は後発品との「価格差の1/4」を保険外としたのでそれよりも低い負担率、4割台というのが当初の理解である。しかし、差額料金に点数ルールを適用したため過重な負担となっている。対象品目1,096の約1/4、272品目で100%超負担となり、6割弱612品目で5割負担超となる。従来の患者負担の約2倍以上となる品目が半数の571品目となっている*1。

 超過負担、説明不可能な状況を解消するため、従前にならい「長期収載品と後発医薬品の価格差の1/4相当を特別の料金」とし実額計算とするよう厚労省に強く求める。

*1:神奈川県保険医協会医療政策研究室「論考:長期収載品の選定療養化で薬剤10割超負担が出現」

2025年2月17日

 

 

長期収載品の選定療養化の差額料金は実額計算へ改めるべき

点数計算での超過負担と説明困難の矛盾解消を早期に求める

 

神奈川県保険医協会

政策部長  磯崎 哲男

 


 

◆差額料金は実額計算が基本 点数計算で現場は説明不能

 長期収載品(後発医薬品がある先発医薬品)の選定療養化で、患者負担総額が薬価を超える矛盾が出現し、医療現場は説明に窮する事態となっている。昨年10月導入以降、依然と放置されている。長期収載品より安い後発品との価格差の1/4を保険から外し差額料金として負担することになったが、差額料金を実額計算から点数計算の適用としたため、薬価の低い長期収載品は、患者負担が10割を超える、信じ難い状況となっている。「差額料金取り過ぎ」状態であり、保険診療、皆保険制度に悖る仕組みとなっている。厚労省は早期に差額料金を実額計算へ改め、この矛盾を解消するよう強く求める。

 

◆薬価15円以下は保険請求1点、差額料金も1点プラス消費税で計21円

 差額ベッドや歯科の金合金材料など、選定療養の差額料金(=「特別の料金」)は全て実額計算である。今回、長期収載品は後発品との価格差1/4の差額徴収も実額計算なら矛盾は生じなかったものの、点数計算のルールを、突如、適用したために理解不能な事態に陥っている。なるべく簡潔に説明する。

 保険診療は1点10円の点数で保険請求となる。診療報酬の技術料は点数で公示されるが、医薬品は各品目を円表示で、銭単位までの薬価として薬価基準に収載される。この薬価を点数換算し薬剤料を保険請求する。ただし薬剤料は所定単位の薬価15円以下は一律に1点として計算するルールになっている。

 よってこのルールを差額料金に適用すると、薬価15円の長期収載品の場合、保険分が1点、後発医薬品との「価格差1/4」の差額料金も1点で計算することになる。後者は消費税が入るので、医薬品の診療費用は10円+11円=21円となり、薬価15円を超える。実額計算なら差額料金は4円限度である。(後発医薬品は0円超なので価格差1/4は15/4=3.75円未満。消費税を入れて3.75×1.1=4.125≒4円)

 

◆患者負担率100%超過が、実額計算なら4割台の患者負担で落着 すり替えられた点数計算への適用

 実際例を示す。長期収載品のボルタレン錠25mg(薬価7.9円:後発品との価格差1/4:0.55円)1回分1錠を14回分処方した場合に3割の患者負担だと、保険分の患者負担が40円、差額料金(特別の料金)が154円で患者負担総額が194円となり、医薬品の薬価合計110.6円に対して175.4%となる。薬価を10割負担するより高い、不可思議な状況となる。これでは医療機関や薬局では説明がつかない。

 これを従前どおり、実額計算に戻せば、保険分の患者負担は40円、差額料金8円で患者負担総額が48円となり、医薬品の薬価合計110.6円に対して43.3%の患者負担率となる。

 この長期収載品の選定療養化はイノベーション推進の財源捻出策として2023年11月9日の医療保険部会に突如、提案され、同部会では11月29日、12月8日と議論の末、後発品との価格差の1/4を保険外化し差額料金とすることで決着した。この議論の資料では、差額料金は実額計算である。

 これが一転するのは2024年7月17日の中医協である。差額料金は点数計算適用とされた。この席では「医療の必要性」の4類型が行政提案され、医師の裁量権への侵害が耳目を集め、隠された感が強い。

 

◆対象品目の約1/4が100%超患者負担、従来の患者負担の約2倍以上は過半数

 仮に長期収載品の薬価の1/4を保険外とすれば、3割負担の患者の場合、薬剤料は5割弱の負担となる(∵(1-1/4)×30%+25%=47.5%(≒50%))。今回は後発品との「価格差の1/4」を保険外としたのでそれよりも低い負担率、4割台というのが当初の理解である。しかし、差額料金に点数ルールを適用したため過重な負担となっている。対象品目1,096の約1/4、272品目で100%超負担となり、6割弱612品目で5割負担超となる。従来の患者負担の約2倍以上となる品目が半数の571品目となっている*1。

 超過負担、説明不可能な状況を解消するため、従前にならい「長期収載品と後発医薬品の価格差の1/4相当を特別の料金」とし実額計算とするよう厚労省に強く求める。

*1:神奈川県保険医協会医療政策研究室「論考:長期収載品の選定療養化で薬剤10割超負担が出現」

2025年2月17日