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2025/3/6 理事長・医療運動部会長連名談話「患者の命綱を奪う『高額療養費制度上限額引き上げ』は撤回を」

 

患者の命綱を奪う『高額療養費制度上限額引き上げ』は撤回を


 

神奈川県保険医協会

理事長 田辺 由紀夫

医療運動部会長 二村 哲

 


 

 34日、高額療養費の負担限度額引き上げを含む 2025 年度の政府予算案が自民、公明、日本維新の会の賛成で衆議院を通過しました。われわれは、当事者である患者団体の切実な声に背を向け、生活実態や受診控えの影響を顧みない政府の強硬な姿勢に抗議し、高額療養費制度限度額引き上げの撤回を求めます。

 

 高額療養費制度の「見直し」を巡っては、患者団体、医療関係者から引き上げの全面凍結・白紙撤回を求める声が広がる中、「多数回該当」※1のみ限度額を据え置くとの「修正案」が示されました。その後も反対の世論が渦巻き、一時は「見直しを凍結する」との報道があったものの、多数回該当以外は8月から当初案通り引き上げとされました。多数回該当の対象者は利用者全体の2割(155万人)に過ぎず、残り8割(640万人)には大幅な負担増となります。

 

 全国保険医団体連合会が子どもを持つがん患者を対象に実施した調査によると、治療費と子育ての費用で家計は厳しく、これ以上医療費負担が上がれば、多数回該当「あり」「なし」ともに4割が「治療を中断する」、6割が「治療回数減を考える」と答えています。休薬や、治療方針・治療薬の変更などにより多数回該当に当てはまらないケースもあります。制度の見直しは、寛解と増悪に揺らぎ闘病を続ける患者から命綱を取り上げ、治療の断念を迫るものです。実際、限度額引き上げによる受診抑制で1950億円の医療費削減効果を見込むなど、命を蔑ろにする政府の姿勢も露わになっています※2

 

 医療へのアクセス権は、憲法13条(個人の尊厳)、同14条(平等原則)、同25条(生存権)を根拠条文とし基本的人権として保障されるべきものであり※3、それを阻害する今回の見直しは、患者の人権を脅かす行為と言わざるを得ません。われわれは医療者として、患者の深刻な治療中断・受診控えを引き起こす、高額療養費制度上限額引き上げの撤回を、強く求めます。 

 

※1:直近12カ月で3回以上限度額に達した場合、4回目から上限額が引き下げとなる仕組み。

2:修正案での見込み額。221日衆議院予算委員会・厚労大臣答弁による。

3:日本弁護士連合会第65回人権擁護シンポジウム「人権としての医療へのアクセスの保障」基調報告より

 

 

患者の命綱を奪う『高額療養費制度上限額引き上げ』は撤回を


 

神奈川県保険医協会

理事長 田辺 由紀夫

医療運動部会長 二村 哲

 


 

 34日、高額療養費の負担限度額引き上げを含む 2025 年度の政府予算案が自民、公明、日本維新の会の賛成で衆議院を通過しました。われわれは、当事者である患者団体の切実な声に背を向け、生活実態や受診控えの影響を顧みない政府の強硬な姿勢に抗議し、高額療養費制度限度額引き上げの撤回を求めます。

 

 高額療養費制度の「見直し」を巡っては、患者団体、医療関係者から引き上げの全面凍結・白紙撤回を求める声が広がる中、「多数回該当」※1のみ限度額を据え置くとの「修正案」が示されました。その後も反対の世論が渦巻き、一時は「見直しを凍結する」との報道があったものの、多数回該当以外は8月から当初案通り引き上げとされました。多数回該当の対象者は利用者全体の2割(155万人)に過ぎず、残り8割(640万人)には大幅な負担増となります。

 

 全国保険医団体連合会が子どもを持つがん患者を対象に実施した調査によると、治療費と子育ての費用で家計は厳しく、これ以上医療費負担が上がれば、多数回該当「あり」「なし」ともに4割が「治療を中断する」、6割が「治療回数減を考える」と答えています。休薬や、治療方針・治療薬の変更などにより多数回該当に当てはまらないケースもあります。制度の見直しは、寛解と増悪に揺らぎ闘病を続ける患者から命綱を取り上げ、治療の断念を迫るものです。実際、限度額引き上げによる受診抑制で1950億円の医療費削減効果を見込むなど、命を蔑ろにする政府の姿勢も露わになっています※2

 

 医療へのアクセス権は、憲法13条(個人の尊厳)、同14条(平等原則)、同25条(生存権)を根拠条文とし基本的人権として保障されるべきものであり※3、それを阻害する今回の見直しは、患者の人権を脅かす行為と言わざるを得ません。われわれは医療者として、患者の深刻な治療中断・受診控えを引き起こす、高額療養費制度上限額引き上げの撤回を、強く求めます。 

 

※1:直近12カ月で3回以上限度額に達した場合、4回目から上限額が引き下げとなる仕組み。

2:修正案での見込み額。221日衆議院予算委員会・厚労大臣答弁による。

3:日本弁護士連合会第65回人権擁護シンポジウム「人権としての医療へのアクセスの保障」基調報告より