神奈川県保険医協会とは
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2022/1/24 政策部長談話 「実質『改定率』は▲1.2%、『縮小』分との合計で▲2%相当 21年の診療所の倒産急増の下、医療の再生産は可能なのか」
実質「改定率」は▲1.2%、「縮小」分との合計で▲2%相当
21年の診療所の倒産急増の下、医療の再生産は可能なのか
神奈川県保険医協会
政策部長 磯崎 哲男
不思議な「改定率」計算 数字の整合性は誰が説明できるのか?
2022年度の診療報酬改定率は、本体プラス0.43%、薬価等▲1.37%で全体▲0.94%となることが、昨年12月22日の厚労・財務大臣折衝を経て閣議決定された。しかし、財務省資料に見るように、改定率の算出や国庫財源との整合性に、いくつもの疑問がある。21年の診療所の倒産が「前年比1.8倍に急増」(帝国データバンク)との調査結果も出た。コロナ禍、通常医療とコロナ医療の両立を、「面」として地域医療が支え、医療の再生産が可能となるのか、大きな不安がある。医療機関経営の安定財源の診療報酬を通じた、医療体制の盤石化へ、期中改定や係数補正(単価補正)支払いを含めた対応を求める。
公称▲0.94%、特例加算廃止分(▲300億円)の算入で実質▲1.2%
改定率0.1%は国庫で約100億円相当である。22年度予算の医療の国庫負担は、足元の医療費動向を踏まえ▲700億円を土台に編成されている。これは改定率換算で▲0.7%相当となる。
22年度診療報酬に関わる国庫負担の増減は、財務省資料にみるように、今年3月末に廃止となる予定のコロナ禍に対応した小児の診療への加算措置の廃止分は改定率に反映される一方、既に昨年9月末廃止となった、コロナ禍の初診・再診の5点加算などの特例措置の▲300億円は改定率に反映されていない。財務省主計局に照会すると、改定率は「これから」の反映で、「これまで」の既に起きたことは反映しないとの返答である。確かに9月廃止で当初予算が組まれ規定路線だが、当年度比で考えれば、「枠外」であっても▲0.3%であり、公称の▲0.94%にこの分を乗せた、実質の改定率は▲1.24%である。これは2年前の全体改定率▲0.46%の約3倍に相当する。
しかも縮小分▲0.7%と合計すると約▲2%となる。22年度予算の医療費の国庫負担は+0.4%の計上でしかない。国庫負担は余裕幅を見込んで毎年計上はしていることを承知しているが、単純化すれば医療費の自然増2.4%の大半が削減されたに等しい。全体の医療費水準のコロナ禍以前への復元はおろか、当年度の一人当たり医療費の水準を割り込む予算計上となっている。医療の質と再生産が危うい。
計算が合わない改定率の国費財源 不妊治療の助成事業財源の行方は不透明
しかも、財務省資料では診療報酬本体+0.43%の国費は+292億円となっており、改定率0.1%で約100億円の計算だと数字が合わない。そこで薬価が▲1.35%で国費▲1,553億円から計算で割り出した改定率0.1%で115億円を基に再計算するとなおさら不整合となる。「その他本体改定率」0.23%に適用すると265億円となり、+292億円と近似となる。この件や改定率計算の基礎となる今年度医療費推計値を、1月6日に厚労省医療課や財務省主計局に照会したが納得のいく回答が得られない状況となっている。
今次改定で不妊治療が保険適用となり従来の助成制度が廃止になる。21年度は助成制度に国費325億円が充てられていた。これが当初、改定率0.3%相当とされ、終盤に0.2%へ変化し、最後は本体に0.2%、薬価に0.09%とされた。しかし薬価調査の平均乖離率7.6%から薬価改定率▲1.3%程度と先に報じられており、薬価改定▲1.44%に+0.09%の合計で▲1.35%というのは辻褄合わせの感が強い。
不妊治療の本体分の国費は助成事業が保険に移動するだけで、薬価分とし浮く0.09%分の45億円(計算根拠不明)の一部が本体0.23%の265億円へ加わり合計292億円となったと、考えるしかない。
自然増の否定を貫徹した財務省
今次改定にあたり財務省は財政制度等審議会に医療費の自然増により医療機関は2.5%の賃上げが可能という荒唐無稽な資料を出し幻惑を図った。改定率折衝の終盤は「本体0.42%」超えが報道の焦点になり、医療提供体制の再興に資する水準から関心が逸らされた。「財務省も完敗」との報道もあるが、冷静に見れば、医療費の自然増の否定、極度の圧縮がなされ、財務省の思惑が貫徹されたにすぎない。今後、政策改定が遂行されていく。診療報酬の規模、その総枠の拡大は、医療従事者の賃上げや研修教育、医療施設・整備の更新など、医療の質向上や医療の再生産に直結する。地域医療を守るため、コロナ禍前水準への復元を期した、診療報酬の期中改定などを改めて強く要望する。
2022年1月24日
【参考資料】
財務省「令和4年度社会保障関係予算のポイント」より (当協会で一部、加筆・追加)
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実質「改定率」は▲1.2%、「縮小」分との合計で▲2%相当
21年の診療所の倒産急増の下、医療の再生産は可能なのか
神奈川県保険医協会
政策部長 磯崎 哲男
不思議な「改定率」計算 数字の整合性は誰が説明できるのか?
2022年度の診療報酬改定率は、本体プラス0.43%、薬価等▲1.37%で全体▲0.94%となることが、昨年12月22日の厚労・財務大臣折衝を経て閣議決定された。しかし、財務省資料に見るように、改定率の算出や国庫財源との整合性に、いくつもの疑問がある。21年の診療所の倒産が「前年比1.8倍に急増」(帝国データバンク)との調査結果も出た。コロナ禍、通常医療とコロナ医療の両立を、「面」として地域医療が支え、医療の再生産が可能となるのか、大きな不安がある。医療機関経営の安定財源の診療報酬を通じた、医療体制の盤石化へ、期中改定や係数補正(単価補正)支払いを含めた対応を求める。
公称▲0.94%、特例加算廃止分(▲300億円)の算入で実質▲1.2%
改定率0.1%は国庫で約100億円相当である。22年度予算の医療の国庫負担は、足元の医療費動向を踏まえ▲700億円を土台に編成されている。これは改定率換算で▲0.7%相当となる。
22年度診療報酬に関わる国庫負担の増減は、財務省資料にみるように、今年3月末に廃止となる予定のコロナ禍に対応した小児の診療への加算措置の廃止分は改定率に反映される一方、既に昨年9月末廃止となった、コロナ禍の初診・再診の5点加算などの特例措置の▲300億円は改定率に反映されていない。財務省主計局に照会すると、改定率は「これから」の反映で、「これまで」の既に起きたことは反映しないとの返答である。確かに9月廃止で当初予算が組まれ規定路線だが、当年度比で考えれば、「枠外」であっても▲0.3%であり、公称の▲0.94%にこの分を乗せた、実質の改定率は▲1.24%である。これは2年前の全体改定率▲0.46%の約3倍に相当する。
しかも縮小分▲0.7%と合計すると約▲2%となる。22年度予算の医療費の国庫負担は+0.4%の計上でしかない。国庫負担は余裕幅を見込んで毎年計上はしていることを承知しているが、単純化すれば医療費の自然増2.4%の大半が削減されたに等しい。全体の医療費水準のコロナ禍以前への復元はおろか、当年度の一人当たり医療費の水準を割り込む予算計上となっている。医療の質と再生産が危うい。
計算が合わない改定率の国費財源 不妊治療の助成事業財源の行方は不透明
しかも、財務省資料では診療報酬本体+0.43%の国費は+292億円となっており、改定率0.1%で約100億円の計算だと数字が合わない。そこで薬価が▲1.35%で国費▲1,553億円から計算で割り出した改定率0.1%で115億円を基に再計算するとなおさら不整合となる。「その他本体改定率」0.23%に適用すると265億円となり、+292億円と近似となる。この件や改定率計算の基礎となる今年度医療費推計値を、1月6日に厚労省医療課や財務省主計局に照会したが納得のいく回答が得られない状況となっている。
今次改定で不妊治療が保険適用となり従来の助成制度が廃止になる。21年度は助成制度に国費325億円が充てられていた。これが当初、改定率0.3%相当とされ、終盤に0.2%へ変化し、最後は本体に0.2%、薬価に0.09%とされた。しかし薬価調査の平均乖離率7.6%から薬価改定率▲1.3%程度と先に報じられており、薬価改定▲1.44%に+0.09%の合計で▲1.35%というのは辻褄合わせの感が強い。
不妊治療の本体分の国費は助成事業が保険に移動するだけで、薬価分とし浮く0.09%分の45億円(計算根拠不明)の一部が本体0.23%の265億円へ加わり合計292億円となったと、考えるしかない。
自然増の否定を貫徹した財務省
今次改定にあたり財務省は財政制度等審議会に医療費の自然増により医療機関は2.5%の賃上げが可能という荒唐無稽な資料を出し幻惑を図った。改定率折衝の終盤は「本体0.42%」超えが報道の焦点になり、医療提供体制の再興に資する水準から関心が逸らされた。「財務省も完敗」との報道もあるが、冷静に見れば、医療費の自然増の否定、極度の圧縮がなされ、財務省の思惑が貫徹されたにすぎない。今後、政策改定が遂行されていく。診療報酬の規模、その総枠の拡大は、医療従事者の賃上げや研修教育、医療施設・整備の更新など、医療の質向上や医療の再生産に直結する。地域医療を守るため、コロナ禍前水準への復元を期した、診療報酬の期中改定などを改めて強く要望する。
2022年1月24日
【参考資料】
財務省「令和4年度社会保障関係予算のポイント」より (当協会で一部、加筆・追加)
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