神奈川県保険医協会とは
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2017/11/10 政策部長談話 「驚愕、損益率『赤字』が1/4 実態調査で判明 医療機関の存立が危い 『医療の質』を守る診療報酬プラス改定が道理」
驚愕、損益率「赤字」が1/4 実態調査で判明 医療機関の存立が危い
「医療の質」を守る診療報酬プラス改定が道理
神奈川県保険医協会
政策部長 桑島 政臣
第21回医療経済実態調査が11月8日公表され、医療施設種別の「損益差額」に耳目が集まっている。しかし、注目すべきは「損益率」の階級分布にある。実に、2016年度に「損益率」が「マイナス」(赤字)となった一般診療所は25.7%、歯科診療所で12.9%となり、その2年前の2014年度(改定年度)の各々17.8%、7.9%(前回調査)より大きく増加。また「対前年度増減」で「マイナス」(経営悪化)となった一般診療所が55.3%、歯科診療所が49.5%と半数を占めることが判明した。早くも財政制度等審議会で「むしろ改善」との反論が出された一般病院は、実相は「損益率」の「マイナス」(赤字)が58.1%と半数以上を占め、その多くが民間病院である。診療報酬全体の改定率はマイナス方針と報道されているが、今調査は地域の医療機関の存立が危い、つまり医療提供に支障を招来すると「警告」しているのである。診療報酬は医療の再生産や、患者へ提供する医療の質、医療基盤の安定を保障するものである。われわれは日本の医療を守るために、診療報酬プラス改定を強く求める。
◆平均値では医科・歯科ともに損益差額は前回改定時より大幅マイナス 最頻値ではより深刻に
診療報酬の改定率決定の前に結果報告される医療経済実態調査で見るべきものは「保険診療収益」と「費用」、「損益差額」(=「医業等収益-医業等費用」)である。ただ前々回調査より、(1) 平年と改定年度の連続する「事業年度」対比と変更され、(2) 各施設の事業年度終期月に1カ月でも重なれば改定年度として集計するため、診療所は改定年度の影響は4割程度しか反映していない、(3)「全体」の損益差額は「個人立」の院長給与を含んだまま平均化した数値である。これらを考量する必要がある。
旧来にならい改定年度対比をしてみると(別表)、医科診療所(無床)は損益差額が▲651.1万円(▲33.3%)の悪化となる。保険診療収益が891.9万円増と伸びたものの、医業等費用が2,019.5万円増と人件費増を反映し上回った結果である。ただ保険診療収益が1億1,465万円とあるが、H26年度の医科診療所の1施設あたり保険診療費(収益)は中央値で7,431万円、最頻値で5,000万円である(厚労省「医療費の動向」<施設単位でみる医療費等の分布の状況>)。医療経済実態調査は「平均値」を「代表値」としており、現実との乖離が大きく、この数値で全体を推し量るのでは対応を誤ることとなる。
歯科診療所も損益差額は▲218.6万円(▲18.9%)と悪化している。医業収益を1,156万円増としたものの医業等費用が1,374.1万円増と人件費を中心に増加した結果である。前々回より指摘してきた自費診療などの「その他の診療収益」や産業医などの「その他の医業収益」への依存度だが、今回各々498.8万円増(+71.4%)、38.2万円増(+59.1%)と大きく伸ばし、依存度も2014年度の計15.5%から21.5%へと2割を超え問題が多い。この保険診療収益の4,732.4万円も、歯科診療所での中央値3,310万円、最頻値2,500万円を遥かに上回っており、現実の経営深刻化は容易に想像できる。
◆医療提供の水準の維持も危ない 医療は平時の安全保障
総じて医療機関の経営悪化、深刻化傾向は明らかだが、財政制度等審議会が唱える診療報酬マイナス改定は、医療機関の存立問題にとどまらない。患者1人あたり医療費(月)は、医科外来で13,251円(H26)から13,198円(H28)へと▲0.4%、歯科で12,532円から12,379円へと▲1.2%下げている(「社会医療診療行為別統計」)。同様に月の受診日数も医科外来は1.63日(H26)が1.56日(H28)へ▲4.3%、歯科で1.92日が1.82日へ▲5.2%の減少となっている。診療報酬は患者に提供される医療の質と表裏一体である。医療は社会的共通資本(故・宇沢弘文・東大名誉教授)であり平時の安全保障でもある。医療機関経営の基盤回復と国民医療の充実へ改めて診療報酬プラス改定を求める。
2017年11月10日
[別表]
※ 第20回、21回医療経済実態調査報告より作成
驚愕、損益率「赤字」が1/4 実態調査で判明 医療機関の存立が危い
「医療の質」を守る診療報酬プラス改定が道理
神奈川県保険医協会
政策部長 桑島 政臣
第21回医療経済実態調査が11月8日公表され、医療施設種別の「損益差額」に耳目が集まっている。しかし、注目すべきは「損益率」の階級分布にある。実に、2016年度に「損益率」が「マイナス」(赤字)となった一般診療所は25.7%、歯科診療所で12.9%となり、その2年前の2014年度(改定年度)の各々17.8%、7.9%(前回調査)より大きく増加。また「対前年度増減」で「マイナス」(経営悪化)となった一般診療所が55.3%、歯科診療所が49.5%と半数を占めることが判明した。早くも財政制度等審議会で「むしろ改善」との反論が出された一般病院は、実相は「損益率」の「マイナス」(赤字)が58.1%と半数以上を占め、その多くが民間病院である。診療報酬全体の改定率はマイナス方針と報道されているが、今調査は地域の医療機関の存立が危い、つまり医療提供に支障を招来すると「警告」しているのである。診療報酬は医療の再生産や、患者へ提供する医療の質、医療基盤の安定を保障するものである。われわれは日本の医療を守るために、診療報酬プラス改定を強く求める。
◆平均値では医科・歯科ともに損益差額は前回改定時より大幅マイナス 最頻値ではより深刻に
診療報酬の改定率決定の前に結果報告される医療経済実態調査で見るべきものは「保険診療収益」と「費用」、「損益差額」(=「医業等収益-医業等費用」)である。ただ前々回調査より、(1) 平年と改定年度の連続する「事業年度」対比と変更され、(2) 各施設の事業年度終期月に1カ月でも重なれば改定年度として集計するため、診療所は改定年度の影響は4割程度しか反映していない、(3)「全体」の損益差額は「個人立」の院長給与を含んだまま平均化した数値である。これらを考量する必要がある。
旧来にならい改定年度対比をしてみると(別表)、医科診療所(無床)は損益差額が▲651.1万円(▲33.3%)の悪化となる。保険診療収益が891.9万円増と伸びたものの、医業等費用が2,019.5万円増と人件費増を反映し上回った結果である。ただ保険診療収益が1億1,465万円とあるが、H26年度の医科診療所の1施設あたり保険診療費(収益)は中央値で7,431万円、最頻値で5,000万円である(厚労省「医療費の動向」<施設単位でみる医療費等の分布の状況>)。医療経済実態調査は「平均値」を「代表値」としており、現実との乖離が大きく、この数値で全体を推し量るのでは対応を誤ることとなる。
歯科診療所も損益差額は▲218.6万円(▲18.9%)と悪化している。医業収益を1,156万円増としたものの医業等費用が1,374.1万円増と人件費を中心に増加した結果である。前々回より指摘してきた自費診療などの「その他の診療収益」や産業医などの「その他の医業収益」への依存度だが、今回各々498.8万円増(+71.4%)、38.2万円増(+59.1%)と大きく伸ばし、依存度も2014年度の計15.5%から21.5%へと2割を超え問題が多い。この保険診療収益の4,732.4万円も、歯科診療所での中央値3,310万円、最頻値2,500万円を遥かに上回っており、現実の経営深刻化は容易に想像できる。
◆医療提供の水準の維持も危ない 医療は平時の安全保障
総じて医療機関の経営悪化、深刻化傾向は明らかだが、財政制度等審議会が唱える診療報酬マイナス改定は、医療機関の存立問題にとどまらない。患者1人あたり医療費(月)は、医科外来で13,251円(H26)から13,198円(H28)へと▲0.4%、歯科で12,532円から12,379円へと▲1.2%下げている(「社会医療診療行為別統計」)。同様に月の受診日数も医科外来は1.63日(H26)が1.56日(H28)へ▲4.3%、歯科で1.92日が1.82日へ▲5.2%の減少となっている。診療報酬は患者に提供される医療の質と表裏一体である。医療は社会的共通資本(故・宇沢弘文・東大名誉教授)であり平時の安全保障でもある。医療機関経営の基盤回復と国民医療の充実へ改めて診療報酬プラス改定を求める。
2017年11月10日
[別表]
※ 第20回、21回医療経済実態調査報告より作成