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2023/11/22 医療運動部会長談話「『初・再診料引き下げ』では地域医療は守れない 診療所狙いうちの財政審のマイナス改定主張に抗議し、診療報酬の大幅プラス改定を求める」
「初・再診料引き下げ」では地域医療は守れない
診療所狙いうちの財政審のマイナス改定主張に抗議し、診療報酬の大幅プラス改定を求める
神奈川県保険医協会
医療運動部会長 二村 哲
11月20日、財政審・財政制度審議会(以下「財政審」)は「2024年度診療報酬は本体マイナス改定が適当」とし、「診療所の初・再診料は5.5%程度引き下げるべき」とする2024年度予算編成に向けた「秋の建議」を答申した。しかしこの物価高騰、人件費上昇局面でのマイナス改定は、コロナ禍で何とか持ちこたえた医療機関を倒産・閉院に追い込み、地域医療を崩壊の危機にさらす端緒となりかねない。われわれは財政審のマイナス改定主張に抗議するとともに、診療報酬の大幅プラス改定を求める。
財政審は「コロナ禍前と比べ診療所の1受診単価(=1日あたり医療費)が急増」(9月27日/財政審・財政制度分科会)、「診療所の経常利益は過去2年間で急増」(11月1日/同)と診療所の伸びを強調し、建議もそのデータを踏まえた主張となっているが、コロナ禍の2020年度を比較対象に持ち出すこと自体、作為的である。「機動的調査」は、ワクチン接種や発熱外来の補助金やコロナ特例措置等も含む、事業年度が「4月~翌年3月」の医療法人は全体の2割、かつ20年度以降の補助金の反映は半年遅れとなる※1―等、改定率の議論に用いるには偏りがあり、実態を反映しているデータとは言い難い。これらを持ち出しての「極めて良好な経営状況」との主張はミスリードである。「参照できる『機動的調査』が2020年以降しかなかった」と反論するならば、わざわざこの調査結果を用いる必要はない。そもそも補助金等は既に必要な人員配置や感染対策に支出しており、今後の経営資金とはなり得ない。医院経営の経常的な原資となる診療報酬の議論とは分けるべきである。
光熱費・テナント料のほか消耗品・材料費・歯科技工代等が軒並み上昇し、現場からは「経営が厳しく、スタッフの給料を上げたくても上げられない」と悲鳴が上がる。厚生労働省の認識と今次改定への方向性も「30年ぶりの高水準となる賃上げ(中略)は医療分野におけるサービス提供や人材確保にも大きな影響を与え」、「医療分野では賃上げが他の産業に追いついていない状況」、「令和6年度改定では物価高騰・賃金上昇、経営の状況、支え手が減少する中で(中略)必要な対応を行う」※2とあるが、マイナス改定のもとで賃上げは実現不可能である。他業界の賃金上昇気運から大きく水をあけられ医療現場の人材確保がままならなければ、国民に対し安心・安全の医療を提供し続けることはできない。
質が担保された医療の再生産を経常的に行うには、診療報酬での適切な評価が不可欠だ。それもわずかなプラス幅でなく、この20年間の10%以上のマイナス改定累積とコロナ禍での大幅減収分の回復、さらに足元の物価高騰・人件費上昇の局面を次の改定まで2年間見据えて乗りきるための大幅な引き上げが道理である。
医療・福祉分野は908万人の就業者※3を有する産業である。地域に根を張る医療機関への投資は単なる"コスト"ではなく、経済を牽引する大きなエンジンとなる。医師・歯科医師・コメディカル等現場で活躍するすべての人が、やりがいを持ち職務を全うし続けられるよう、診療報酬の大幅なプラス改定を望む。
※1:「財務省の診療所をスケープゴート化した世論操作に反論する」11月13日 神奈川県保険医協会政策部長談話
※2:第169回社保審・医療保険部会(10月27日)資料「令和6年度診療報酬改定に向けた基本認識、基本的視点、具体的方向性について」
※3:独立行政法人労働政策研究・研修機構 産業別就業者数2022年平均
2023年11月22日
「初・再診料引き下げ」では地域医療は守れない
診療所狙いうちの財政審のマイナス改定主張に抗議し、診療報酬の大幅プラス改定を求める
神奈川県保険医協会
医療運動部会長 二村 哲
11月20日、財政審・財政制度審議会(以下「財政審」)は「2024年度診療報酬は本体マイナス改定が適当」とし、「診療所の初・再診料は5.5%程度引き下げるべき」とする2024年度予算編成に向けた「秋の建議」を答申した。しかしこの物価高騰、人件費上昇局面でのマイナス改定は、コロナ禍で何とか持ちこたえた医療機関を倒産・閉院に追い込み、地域医療を崩壊の危機にさらす端緒となりかねない。われわれは財政審のマイナス改定主張に抗議するとともに、診療報酬の大幅プラス改定を求める。
財政審は「コロナ禍前と比べ診療所の1受診単価(=1日あたり医療費)が急増」(9月27日/財政審・財政制度分科会)、「診療所の経常利益は過去2年間で急増」(11月1日/同)と診療所の伸びを強調し、建議もそのデータを踏まえた主張となっているが、コロナ禍の2020年度を比較対象に持ち出すこと自体、作為的である。「機動的調査」は、ワクチン接種や発熱外来の補助金やコロナ特例措置等も含む、事業年度が「4月~翌年3月」の医療法人は全体の2割、かつ20年度以降の補助金の反映は半年遅れとなる※1―等、改定率の議論に用いるには偏りがあり、実態を反映しているデータとは言い難い。これらを持ち出しての「極めて良好な経営状況」との主張はミスリードである。「参照できる『機動的調査』が2020年以降しかなかった」と反論するならば、わざわざこの調査結果を用いる必要はない。そもそも補助金等は既に必要な人員配置や感染対策に支出しており、今後の経営資金とはなり得ない。医院経営の経常的な原資となる診療報酬の議論とは分けるべきである。
光熱費・テナント料のほか消耗品・材料費・歯科技工代等が軒並み上昇し、現場からは「経営が厳しく、スタッフの給料を上げたくても上げられない」と悲鳴が上がる。厚生労働省の認識と今次改定への方向性も「30年ぶりの高水準となる賃上げ(中略)は医療分野におけるサービス提供や人材確保にも大きな影響を与え」、「医療分野では賃上げが他の産業に追いついていない状況」、「令和6年度改定では物価高騰・賃金上昇、経営の状況、支え手が減少する中で(中略)必要な対応を行う」※2とあるが、マイナス改定のもとで賃上げは実現不可能である。他業界の賃金上昇気運から大きく水をあけられ医療現場の人材確保がままならなければ、国民に対し安心・安全の医療を提供し続けることはできない。
質が担保された医療の再生産を経常的に行うには、診療報酬での適切な評価が不可欠だ。それもわずかなプラス幅でなく、この20年間の10%以上のマイナス改定累積とコロナ禍での大幅減収分の回復、さらに足元の物価高騰・人件費上昇の局面を次の改定まで2年間見据えて乗りきるための大幅な引き上げが道理である。
医療・福祉分野は908万人の就業者※3を有する産業である。地域に根を張る医療機関への投資は単なる"コスト"ではなく、経済を牽引する大きなエンジンとなる。医師・歯科医師・コメディカル等現場で活躍するすべての人が、やりがいを持ち職務を全うし続けられるよう、診療報酬の大幅なプラス改定を望む。
※1:「財務省の診療所をスケープゴート化した世論操作に反論する」11月13日 神奈川県保険医協会政策部長談話
※2:第169回社保審・医療保険部会(10月27日)資料「令和6年度診療報酬改定に向けた基本認識、基本的視点、具体的方向性について」
※3:独立行政法人労働政策研究・研修機構 産業別就業者数2022年平均
2023年11月22日