神奈川県保険医協会とは
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6割超が原則義務化に反対/「オンライン資格確認に関する緊急アンケート」結果
政府が2022年6月7日に閣議決定した「骨太方針2022」に、オンライン資格確認システムの導入を2023年4月から原則義務化とすることが明記されたことを受け、神奈川県保険医協会・医療情報部は7月1日から約2週間、当会会員を対象に「オンライン資格確認に関する緊急アンケート」を実施した。回答数は649件(回答率10.0%)となった。本アンケートの結果から、大多数の医療機関がオンライン資格確認の導入・運用に否定的、消極的であり、原則義務化に反対していることが明らかとなった。以下、報告する。
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* 記事中のグラフ画像をクリックすると拡大版が閲覧できます。 |
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実施期間:2022年7月1日~7月15日
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調査対象:神奈川県保険医協会会員(医師、歯科医師)6,490名(2022.7.1時点)
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設問項目:調査用紙(PDF)を参照
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送付方法:FAXおよびメールマガジン
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回答方法:FAX返信およびGoogle formによる入力
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回答数:649件
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回答率:10.0%
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基本情報:回答者の医療機関の区分/年齢
1.オンライン資格確認の運用状況 現時点で8割超が未導入・未運用
オンライン資格確認の運用状況については、調査時点で「運用していない」との回答が86.7%と圧倒的に多い結果となった。医科、歯科別で見ても同様の結果だった。
2.オンライン資格確認への対応 ほとんど準備・対応していない医療機関が大半/「利便性感じない」が最多理由
次に、「運用していない」との回答群を対象に3点の設問を実施した。
1点目として、オンライン資格確認に対する現時点での準備・対応状況を問うたところ、「何もしていない」が59.5%、「ポータルサイトにアカウント登録済み」が8.0%となった。特に歯科においては同回答の合計が7割超となった。ポータルサイトへのアカウント登録は、顔認証付きカードリーダーの申請前の段階でしかなく、準備を進めているとは言い難い。この結果から、オンライン資格確認を運用していない医療機関の多くは、ほとんど準備・対応をしていない状態にあることが分かった。
2点目として、オンライン資格確認を運用していない理由を問うたところ、「利便性を感じない」が53.6%と最も高く、「マイナンバーの漏洩、マイナンバーカード紛失等の懸念」、「多くの医療機関が導入していないので様子見」、「セキュリティ面で不安がある」と続いた。医科、歯科別で見ても同様の結果だった。その他の理由として、「マイナンバーカードで受診する患者がいない」という趣旨の記載が複数あったほか、「訪問診療では使えない」、「受付業務の混乱を招く」、「光回線の敷設工事ができない」など、診療実態を踏まえた意見が多数見られた。一方で、「業者と相談中」、「年内に導入予定」など、導入・運用の準備段階の回答も少数見られた。
3点目として、オンライン資格確認の原則義務化が決定し、自院が例外規定にも該当しない場合の対応について問うたところ、「システムを導入し運用する」が54.5%、「まだ分からない」が33.5%となった。また、「閉院することも考える」との回答が9.2%(52件)にも上った。同回答者を年齢群別で見ると、60歳から80歳以上が75%となった。資格確認の機器や設備への対応できないことを理由に、地域のベテラン医師・歯科医師を失うことは不合理極まりないばかりか、地域の患者にとって大きな損失である。
3.6割超がオンライン資格確認の原則義務化に反対/「保険証の廃止」等も5割超が反対
最後に、オンライン資格確認の原則義務化の賛否を問うたところ、「賛成」8.0%に対し「反対」が62.1%と圧倒的に多い結果となった。
また、「24年度中を目途に保険者による保険証発行の選択制の導入」「将来的な保険証の原則」についても、「賛成」12.8%に対し「反対」が53.8%と4倍以上の差となった。
ひとこと欄には、279件(43.0%)もの意見が寄せられた。大多数がオンライン資格確認の原則義務化や保険証の原則廃止に対する反対、怒り、不安など否定的な意見だった。
オンライン資格確認に関する緊急アンケート「ひとこと欄」(PDF)
5.医療現場の実態・意識から大きく乖離した政府の強行策/調査結果を踏まえて
今回の調査結果から、大多数の医療機関がオンライン資格確認の導入・運用に否定的、消極的であり、原則義務化に反対している実態が明らかとなった。この結果、オンライン資格確認は利便性が皆無でリスク・デメリットばかりが目立つことを医療現場が理解し、判断していることの証左だと言える。
オンライン資格確認を原則義務化とする政府方針は、医療現場の実態・意識から大きく乖離しており、医療現場の声など全く無視した強引な施策だと言わざるを得ない。神奈川県保険医協会はオンライン資格確認の原則義務化の撤回運動に取り組む所存である。
(2022.9.13公開)
政府が2022年6月7日に閣議決定した「骨太方針2022」に、オンライン資格確認システムの導入を2023年4月から原則義務化とすることが明記されたことを受け、神奈川県保険医協会・医療情報部は7月1日から約2週間、当会会員を対象に「オンライン資格確認に関する緊急アンケート」を実施した。回答数は649件(回答率10.0%)となった。本アンケートの結果から、大多数の医療機関がオンライン資格確認の導入・運用に否定的、消極的であり、原則義務化に反対していることが明らかとなった。以下、報告する。
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実施期間:2022年7月1日~7月15日
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調査対象:神奈川県保険医協会会員(医師、歯科医師)6,490名(2022.7.1時点)
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設問項目:調査用紙(PDF)を参照
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送付方法:FAXおよびメールマガジン
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回答方法:FAX返信およびGoogle formによる入力
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回答数:649件
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回答率:10.0%
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基本情報:回答者の医療機関の区分/年齢
1.オンライン資格確認の運用状況 現時点で8割超が未導入・未運用
オンライン資格確認の運用状況については、調査時点で「運用していない」との回答が86.7%と圧倒的に多い結果となった。医科、歯科別で見ても同様の結果だった。
2.オンライン資格確認への対応 ほとんど準備・対応していない医療機関が大半/「利便性感じない」が最多理由
次に、「運用していない」との回答群を対象に3点の設問を実施した。
1点目として、オンライン資格確認に対する現時点での準備・対応状況を問うたところ、「何もしていない」が59.5%、「ポータルサイトにアカウント登録済み」が8.0%となった。特に歯科においては同回答の合計が7割超となった。ポータルサイトへのアカウント登録は、顔認証付きカードリーダーの申請前の段階でしかなく、準備を進めているとは言い難い。この結果から、オンライン資格確認を運用していない医療機関の多くは、ほとんど準備・対応をしていない状態にあることが分かった。
2点目として、オンライン資格確認を運用していない理由を問うたところ、「利便性を感じない」が53.6%と最も高く、「マイナンバーの漏洩、マイナンバーカード紛失等の懸念」、「多くの医療機関が導入していないので様子見」、「セキュリティ面で不安がある」と続いた。医科、歯科別で見ても同様の結果だった。その他の理由として、「マイナンバーカードで受診する患者がいない」という趣旨の記載が複数あったほか、「訪問診療では使えない」、「受付業務の混乱を招く」、「光回線の敷設工事ができない」など、診療実態を踏まえた意見が多数見られた。一方で、「業者と相談中」、「年内に導入予定」など、導入・運用の準備段階の回答も少数見られた。
3点目として、オンライン資格確認の原則義務化が決定し、自院が例外規定にも該当しない場合の対応について問うたところ、「システムを導入し運用する」が54.5%、「まだ分からない」が33.5%となった。また、「閉院することも考える」との回答が9.2%(52件)にも上った。同回答者を年齢群別で見ると、60歳から80歳以上が75%となった。資格確認の機器や設備への対応できないことを理由に、地域のベテラン医師・歯科医師を失うことは不合理極まりないばかりか、地域の患者にとって大きな損失である。
3.6割超がオンライン資格確認の原則義務化に反対/「保険証の廃止」等も5割超が反対
最後に、オンライン資格確認の原則義務化の賛否を問うたところ、「賛成」8.0%に対し「反対」が62.1%と圧倒的に多い結果となった。
また、「24年度中を目途に保険者による保険証発行の選択制の導入」「将来的な保険証の原則」についても、「賛成」12.8%に対し「反対」が53.8%と4倍以上の差となった。
ひとこと欄には、279件(43.0%)もの意見が寄せられた。大多数がオンライン資格確認の原則義務化や保険証の原則廃止に対する反対、怒り、不安など否定的な意見だった。
オンライン資格確認に関する緊急アンケート「ひとこと欄」(PDF)
5.医療現場の実態・意識から大きく乖離した政府の強行策/調査結果を踏まえて
今回の調査結果から、大多数の医療機関がオンライン資格確認の導入・運用に否定的、消極的であり、原則義務化に反対している実態が明らかとなった。この結果、オンライン資格確認は利便性が皆無でリスク・デメリットばかりが目立つことを医療現場が理解し、判断していることの証左だと言える。
オンライン資格確認を原則義務化とする政府方針は、医療現場の実態・意識から大きく乖離しており、医療現場の声など全く無視した強引な施策だと言わざるを得ない。神奈川県保険医協会はオンライン資格確認の原則義務化の撤回運動に取り組む所存である。
(2022.9.13公開)