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2013/8/15 政策部長談話「負担増ではなく、国民会議の報告書の『思想』を制度に活かし 医療現場に耳を傾けた施策の実施を求める」

負担増ではなく、国民会議の報告書の「思想」を制度に活かし

医療現場に耳を傾けた施策の実施を求める

神奈川県保険医協会

政策部長  桑島 政臣


 社会保障制度改革国民会議が8月5日、報告書をまとめ翌6日に首相に提出した。これに基づき改革に関し今月21日までに実施時期と内容を定めた「プログラム法案」が作成され今秋の臨時国会に提出される。また個別の法案が医療法改定案とともに来年の通常国会に上程の運びとなっている。

 既に「負担増のオンパレード」「実施時期が不明」など様々な方面から批判がされているが、この報告書では「応能負担主義の徹底」「非正規雇用者の被用者保険適用」「経済弱者の減免適用範囲の拡大」「政策当局による診療報酬誘導と梯子外しへの批判・牽制」など、税と社会保障の一体改革のこれまでの流れから、ある意味「思想転換」を図っており、個別の施策の当否や整合の問題はあるが、その思想、指向性が活かされ、制度的に花開くよう強く求める。

 そもそも国民会議は、社会保障制度改革推進法に基づき設置され、社会保障改革、とりわけ医療・介護の絵図面を書くことが目的であった。一体改革は、消費税増税5%分のうち1%分2.7兆円が社会保障財源にあてられ、医療・介護に1.6兆円が回る。内訳は医療保険財政の綻びに1兆円、提供体制に0.6兆円である。この財政制約のもと、この会議は始まっており、「卓袱台返し」のようなことはこの会議では起こりえない。

 既に一体改革は、一昨年7月1日の「成案」、昨年2月17日の「大綱」に基づき、「医療から介護」「施設から在宅へ」のキャッチフレーズの下、国策の「地域包括ケアシステム」のネットワーク作りと医療体制・病床の再編に向け、昨年4月の診療報酬・介護報酬の同時改定でレールは敷かれてきている。7:1入院基本料の在院日数の短縮と看護必要度の強化で、"杯型"分布の川上にある33万床が高度急性期18万床へ向け篩(ふるい)にかけられ、また24時間対応の在宅療養支援診療所・病院も新たなタイプの新設とグループ化、系列化の布石が打たれてきた。

 また、都市部の団塊世代対策、コンパクトシティーづくりのこの国策に沿い、サービスつき高齢者向け住宅に100戸規模で最大1億円強の補助金もセットされ、住み替え事業も進められてきている。

 この路線の下、国民会議では、自立自助が強調された「推進法」の解釈を改めて「規定」する、いわば解釈改定を行った感がある。それは皆保険の「原則化」=例外の容認と当会が危険視した、法第6条に関し、「皆保険制度の維持」を敷衍(ふえん)し、弱体化の際にある国保財政の安定化のため、後期高齢者医療制度の支援金の総報酬割を全面化し、協会けんぽに投入している国庫負担の浮いた財源を国保に回すとした。虚を衝かれた厚生労働省の抵抗や内部で意見の不一致が伝わってきているが、この新機軸は、大方が望む制度間・組合間の不公正の是正、緻密な所得把握が困難な中での医療保険の一本化の「一里塚」の感がある。

 また、政府の文書ではじめて、政策当局による診療報酬誘導と「梯子外し」により、医療提供者の政策当局への不信と危機回避行動による提供体制の歪みが生じたことを断罪し、諫言。徒な重装備の大病院志向がフリーアクセスを逆に壊すと直言し、「必要なときに必要な医療にかかれるよう」その是正に論及した。さらには、一律的な医療給付の抑制により必要な医療まで煽りを受ける保険外しを避け、地域実情に応じた提供体制の再構築のため柔軟な利用を認めた基金方式の活用を図り、提供体制と医療需要とのミスマッチを解消し、医療費を適正水準にするなど、従来とは趣を異にしている。

 経済的弱者に関しても、狭い減免範囲の拡大や、富裕層の保険料が限度額にとどまり逆進的であることの是正、はたまた非正規労働が若年層のかなりを占めている現実を踏まえた社会保障制度の合理的適応と厚みをもたせた給付への転換も説いている。病床の機能分化、機能分担に関しても、「受け皿」の紹介・準備を「担保」した上での患者移動と条件づけタガをはめた点も新しい。

 「2025年モデル」「地域完結型医療」など意識改革のワードで問題意識の共有化と、今後の方向性へ全体を糾合しようとの試みも、一定の評価ができる。

 ゆえに、これに対抗するかのように、国会版「社会保障制度改革国民会議」が超党派の国会議員により立ち上がりコストカッター的な内容が提言され、健保連が社会保障制度審議会で「期待外れ」と述べるなど批判の矢は喧しい。

 ただ、国民会議報告書は70-74歳の2割負担化、緩やかなゲートキーパー、県単位の国保統合、それと連動した提供体制の整備権限の県への付与、簡素な医療需要データ偏重の提供体制整備、介護の地域支援事業の再編と在宅介護拠点事業との統合などの内容を盛り込んでおり、受診抑制への懸念、市町村の賦課水準の多寡とペナルティー措置、道州制への布石、疾患の変化への対応や施設整備のタイムラグ、貧相な介護事業など、現場にとって懸念や批判、違和感、誤解が多い内容となっている。

 今後、各種審議会を経て法案化された段階で、改めて見解を示すが、われわれは医療の最大のミスマッチは、経済的理由で受診できないことであり、規模的にも年間250万人と看過できない状況の解消が喫緊であると考えている。その上で、超高齢社会を前にした医療政策に関し以下、要望したい。今報告書は国策の「地域包括ケアシステム」に収斂した感が否めず、在宅医療に重点をおき、需給分析による施設・人員の配置で図面を敷くことに政策は矮小化されない。

 病気をつくらない一次予防、病気の重症化を防ぐ二次予防が、医療費を適正化し、それで浮いた財源の再投資で医療内容の拡充が図られ、医療の再生産にとってカギを握ると考える。とりわけ糖尿病、高血圧、脂質異常の疾患対策が脳卒中や骨折による寝たきり予防の土台となる

 いま患者数は糖尿病270万人、高血圧900万人、高脂血症190万人(「患者調査」)である。医療費は糖尿病が1.2兆円、高血圧が1.8兆円、高脂血症が1兆円と計4兆円である。これらは人工透析、失明、脳卒中、がんなどの他の疾病の温床でもあり、食生活の変化による脂肪成分の摂取過多の傾向とあいまって、一向に増加傾向は止まない。自覚症状が乏しく、治療の「盲点」となっている。糖尿病が疑われるものは実に1,070万人にも及んでいる(「国民健康栄養調査」)。

 しかし、これらの疾病を減らす地域実践、モデル事業の成功例は過去にいくつもあり、様々なチャンネルで厚労省にも集積されているが、システム化など活かされていない。

 今報告書では、医療費削減のための「医療費適正化計画」に貫かれていたこれまでの「医療計画」「介護保険事業計画」をそこから解き放ち、先駆的な研究の取り入れなど、データ重視で地域実情にあった計画への衣替えを提案している。

 医療計画は、神奈川県が全国第1号であり、これは健康づくり・予防の「保健」を組み入れ、神奈川県地域保健計画とし1985年に作成され、成人保健、産業保健や、糖尿病、肝疾患など疾患別対策など広範囲にわたり、医学・医療に立脚して中学校区単位できめ細かく方策が盛られたのである。そこでは、医療・保健・福祉の連携による包括的な「在宅ケア」システムの構築さえ先駆的に提唱している。しかし、現実は病床規制の枠組みのみ実効化させ、それ以降の計画は方法論のない目標の羅列に堕している。

 古くは大阪府八尾市の糖尿病の患者登録システムによる失明予防、また現在の長野県の食生活改善推進委員による減塩、野菜摂取による脳卒中予防など、学ぶべきものは医療現場にたくさんある。

 地域包括ケアの萌芽といわれる広島県御調町は病院・保健所・福祉施設が廊下でつながった拠点を活かしたものであった。

 地域包括ケアは依然、「主体者」は誰が座るかなど融通無碍な雲をつかむ感がある中、自治体が「地域診断」の責任者と唱える向きも見聞するが、「地域診断」は保健師の役割であり、この20年は保健所機能の弱体化、保健師の役割の否定の連続であったことを、本来、猛省し転換すべきである。

 われわれは最近も、地域医療再生基金を利用した、糖尿病の重症化予防対策として、過去の厚生省のモデル事業の成功実績を踏まえた、患者登録と手帳の発行、年1回の眼底検査による失明予防を県に提唱したが、ICT利用を盾に採用されず国庫に県が全額返上するような事態さえ起きている。

 専門医とかかりつけ医の連携による診療内容に関する「気づき」を通じた診療向上や、患者数の集積による数多い診断と治療が「専門医」を養成するなど、医療現場の治療連携と、人材育成は「複雑」であり、トコロテン式の施設分担や系列下に単純化されない。企業ベースのICT利用、診断機器利用の疾患治療連携システムが散見されるが、医療現場主導ではないゆえ勝算がないことは専門家的見地から明らかである。

 在宅で高齢者を支えるにも、食事、着脱、移動、排泄、入浴、外出など多くの場面で人手やサービスが必要になり、「施設」の方が機能的で合理的な患者も多い。無論、医療をはじめ受診時、サービス利用時の「負担」は、嵩むその重さから手控えとなる。「地域完結型」も雲散霧消する。応能負担の徹底は、利用時ではなく保険料・税の負担で徹底を貫くべきである。

 国民会議の報告書は冒頭で社会保障制度審議会50年勧告を引いたが、そこでは公的扶助は自助・共助の補完で終わらず、「社会保障制度は、社会保険、国家扶助、公衆衛生及び社会福祉の各行政が、相互の関連を保ちつつ綜合一元的に運営されてこそはじめてその究極の目的を達する」とうたっている。戦後の復興の曙で新たな社会建設の決意を込めて出されたこの「勧告」の、「原点」を取り戻した改革を強く望むものである。

2013年8月15日

 

負担増ではなく、国民会議の報告書の「思想」を制度に活かし

医療現場に耳を傾けた施策の実施を求める

神奈川県保険医協会

政策部長  桑島 政臣


 社会保障制度改革国民会議が8月5日、報告書をまとめ翌6日に首相に提出した。これに基づき改革に関し今月21日までに実施時期と内容を定めた「プログラム法案」が作成され今秋の臨時国会に提出される。また個別の法案が医療法改定案とともに来年の通常国会に上程の運びとなっている。

 既に「負担増のオンパレード」「実施時期が不明」など様々な方面から批判がされているが、この報告書では「応能負担主義の徹底」「非正規雇用者の被用者保険適用」「経済弱者の減免適用範囲の拡大」「政策当局による診療報酬誘導と梯子外しへの批判・牽制」など、税と社会保障の一体改革のこれまでの流れから、ある意味「思想転換」を図っており、個別の施策の当否や整合の問題はあるが、その思想、指向性が活かされ、制度的に花開くよう強く求める。

 そもそも国民会議は、社会保障制度改革推進法に基づき設置され、社会保障改革、とりわけ医療・介護の絵図面を書くことが目的であった。一体改革は、消費税増税5%分のうち1%分2.7兆円が社会保障財源にあてられ、医療・介護に1.6兆円が回る。内訳は医療保険財政の綻びに1兆円、提供体制に0.6兆円である。この財政制約のもと、この会議は始まっており、「卓袱台返し」のようなことはこの会議では起こりえない。

 既に一体改革は、一昨年7月1日の「成案」、昨年2月17日の「大綱」に基づき、「医療から介護」「施設から在宅へ」のキャッチフレーズの下、国策の「地域包括ケアシステム」のネットワーク作りと医療体制・病床の再編に向け、昨年4月の診療報酬・介護報酬の同時改定でレールは敷かれてきている。7:1入院基本料の在院日数の短縮と看護必要度の強化で、"杯型"分布の川上にある33万床が高度急性期18万床へ向け篩(ふるい)にかけられ、また24時間対応の在宅療養支援診療所・病院も新たなタイプの新設とグループ化、系列化の布石が打たれてきた。

 また、都市部の団塊世代対策、コンパクトシティーづくりのこの国策に沿い、サービスつき高齢者向け住宅に100戸規模で最大1億円強の補助金もセットされ、住み替え事業も進められてきている。

 この路線の下、国民会議では、自立自助が強調された「推進法」の解釈を改めて「規定」する、いわば解釈改定を行った感がある。それは皆保険の「原則化」=例外の容認と当会が危険視した、法第6条に関し、「皆保険制度の維持」を敷衍(ふえん)し、弱体化の際にある国保財政の安定化のため、後期高齢者医療制度の支援金の総報酬割を全面化し、協会けんぽに投入している国庫負担の浮いた財源を国保に回すとした。虚を衝かれた厚生労働省の抵抗や内部で意見の不一致が伝わってきているが、この新機軸は、大方が望む制度間・組合間の不公正の是正、緻密な所得把握が困難な中での医療保険の一本化の「一里塚」の感がある。

 また、政府の文書ではじめて、政策当局による診療報酬誘導と「梯子外し」により、医療提供者の政策当局への不信と危機回避行動による提供体制の歪みが生じたことを断罪し、諫言。徒な重装備の大病院志向がフリーアクセスを逆に壊すと直言し、「必要なときに必要な医療にかかれるよう」その是正に論及した。さらには、一律的な医療給付の抑制により必要な医療まで煽りを受ける保険外しを避け、地域実情に応じた提供体制の再構築のため柔軟な利用を認めた基金方式の活用を図り、提供体制と医療需要とのミスマッチを解消し、医療費を適正水準にするなど、従来とは趣を異にしている。

 経済的弱者に関しても、狭い減免範囲の拡大や、富裕層の保険料が限度額にとどまり逆進的であることの是正、はたまた非正規労働が若年層のかなりを占めている現実を踏まえた社会保障制度の合理的適応と厚みをもたせた給付への転換も説いている。病床の機能分化、機能分担に関しても、「受け皿」の紹介・準備を「担保」した上での患者移動と条件づけタガをはめた点も新しい。

 「2025年モデル」「地域完結型医療」など意識改革のワードで問題意識の共有化と、今後の方向性へ全体を糾合しようとの試みも、一定の評価ができる。

 ゆえに、これに対抗するかのように、国会版「社会保障制度改革国民会議」が超党派の国会議員により立ち上がりコストカッター的な内容が提言され、健保連が社会保障制度審議会で「期待外れ」と述べるなど批判の矢は喧しい。

 ただ、国民会議報告書は70-74歳の2割負担化、緩やかなゲートキーパー、県単位の国保統合、それと連動した提供体制の整備権限の県への付与、簡素な医療需要データ偏重の提供体制整備、介護の地域支援事業の再編と在宅介護拠点事業との統合などの内容を盛り込んでおり、受診抑制への懸念、市町村の賦課水準の多寡とペナルティー措置、道州制への布石、疾患の変化への対応や施設整備のタイムラグ、貧相な介護事業など、現場にとって懸念や批判、違和感、誤解が多い内容となっている。

 今後、各種審議会を経て法案化された段階で、改めて見解を示すが、われわれは医療の最大のミスマッチは、経済的理由で受診できないことであり、規模的にも年間250万人と看過できない状況の解消が喫緊であると考えている。その上で、超高齢社会を前にした医療政策に関し以下、要望したい。今報告書は国策の「地域包括ケアシステム」に収斂した感が否めず、在宅医療に重点をおき、需給分析による施設・人員の配置で図面を敷くことに政策は矮小化されない。

 病気をつくらない一次予防、病気の重症化を防ぐ二次予防が、医療費を適正化し、それで浮いた財源の再投資で医療内容の拡充が図られ、医療の再生産にとってカギを握ると考える。とりわけ糖尿病、高血圧、脂質異常の疾患対策が脳卒中や骨折による寝たきり予防の土台となる

 いま患者数は糖尿病270万人、高血圧900万人、高脂血症190万人(「患者調査」)である。医療費は糖尿病が1.2兆円、高血圧が1.8兆円、高脂血症が1兆円と計4兆円である。これらは人工透析、失明、脳卒中、がんなどの他の疾病の温床でもあり、食生活の変化による脂肪成分の摂取過多の傾向とあいまって、一向に増加傾向は止まない。自覚症状が乏しく、治療の「盲点」となっている。糖尿病が疑われるものは実に1,070万人にも及んでいる(「国民健康栄養調査」)。

 しかし、これらの疾病を減らす地域実践、モデル事業の成功例は過去にいくつもあり、様々なチャンネルで厚労省にも集積されているが、システム化など活かされていない。

 今報告書では、医療費削減のための「医療費適正化計画」に貫かれていたこれまでの「医療計画」「介護保険事業計画」をそこから解き放ち、先駆的な研究の取り入れなど、データ重視で地域実情にあった計画への衣替えを提案している。

 医療計画は、神奈川県が全国第1号であり、これは健康づくり・予防の「保健」を組み入れ、神奈川県地域保健計画とし1985年に作成され、成人保健、産業保健や、糖尿病、肝疾患など疾患別対策など広範囲にわたり、医学・医療に立脚して中学校区単位できめ細かく方策が盛られたのである。そこでは、医療・保健・福祉の連携による包括的な「在宅ケア」システムの構築さえ先駆的に提唱している。しかし、現実は病床規制の枠組みのみ実効化させ、それ以降の計画は方法論のない目標の羅列に堕している。

 古くは大阪府八尾市の糖尿病の患者登録システムによる失明予防、また現在の長野県の食生活改善推進委員による減塩、野菜摂取による脳卒中予防など、学ぶべきものは医療現場にたくさんある。

 地域包括ケアの萌芽といわれる広島県御調町は病院・保健所・福祉施設が廊下でつながった拠点を活かしたものであった。

 地域包括ケアは依然、「主体者」は誰が座るかなど融通無碍な雲をつかむ感がある中、自治体が「地域診断」の責任者と唱える向きも見聞するが、「地域診断」は保健師の役割であり、この20年は保健所機能の弱体化、保健師の役割の否定の連続であったことを、本来、猛省し転換すべきである。

 われわれは最近も、地域医療再生基金を利用した、糖尿病の重症化予防対策として、過去の厚生省のモデル事業の成功実績を踏まえた、患者登録と手帳の発行、年1回の眼底検査による失明予防を県に提唱したが、ICT利用を盾に採用されず国庫に県が全額返上するような事態さえ起きている。

 専門医とかかりつけ医の連携による診療内容に関する「気づき」を通じた診療向上や、患者数の集積による数多い診断と治療が「専門医」を養成するなど、医療現場の治療連携と、人材育成は「複雑」であり、トコロテン式の施設分担や系列下に単純化されない。企業ベースのICT利用、診断機器利用の疾患治療連携システムが散見されるが、医療現場主導ではないゆえ勝算がないことは専門家的見地から明らかである。

 在宅で高齢者を支えるにも、食事、着脱、移動、排泄、入浴、外出など多くの場面で人手やサービスが必要になり、「施設」の方が機能的で合理的な患者も多い。無論、医療をはじめ受診時、サービス利用時の「負担」は、嵩むその重さから手控えとなる。「地域完結型」も雲散霧消する。応能負担の徹底は、利用時ではなく保険料・税の負担で徹底を貫くべきである。

 国民会議の報告書は冒頭で社会保障制度審議会50年勧告を引いたが、そこでは公的扶助は自助・共助の補完で終わらず、「社会保障制度は、社会保険、国家扶助、公衆衛生及び社会福祉の各行政が、相互の関連を保ちつつ綜合一元的に運営されてこそはじめてその究極の目的を達する」とうたっている。戦後の復興の曙で新たな社会建設の決意を込めて出されたこの「勧告」の、「原点」を取り戻した改革を強く望むものである。

2013年8月15日