神奈川県保険医協会とは
開業医を中心とする保険医の生活と権利を守り、
国民の健康と医療の向上を目指す
TOP > 神奈川県保険医協会とは > 私たちの考え > 2016/2/12 政策部長談話 「かかりつけ医機能の強化に逆行する画餅の点数改定 初診料・再診料の据え置きに抗議する」
2016/2/12 政策部長談話 「かかりつけ医機能の強化に逆行する画餅の点数改定 初診料・再診料の据え置きに抗議する」
かかりつけ医機能の強化に逆行する画餅の点数改定
初診料・再診料の据え置きに抗議する
神奈川県保険医協会
政策部長 桑島 政臣
次期診療報酬改定の点数が2月10日答申された。本体+0.49%と前回(+0.1%)の5倍の財源確保といわれているものの、医療機関の基礎的な点数である、初診料、再診料、入院基本料はいずれも据え置かれた。とりわけ、第一線医療にとって喫緊の2000年代水準への復元、つまりは診療所の初診料286点<消費税対応分12点含む>、再診料77点<同3点含む>への要望は中医協では一顧だにされておらず、かかりつけ医機能の強化に完全に逆行している。われわれはこれに強く抗議する。
◆画餅のかかりつけ医機能の強化 疾病により「かかりつけ医」は1機関に限定されない
今次改定の柱の一つに、かかりつけ医の機能強化が挙げられている。しかしながら、厚労省のいう「かかりつけ医」は、地域包括診療料、地域包括診療加算を算定する医療機関と同義とされている。これは常勤医3名、24時間対応、高血圧・糖尿病・脂質異常・認知症のうち複数疾病の患者などを要件とし、「全人的医療」の提供を評価したものとしている。
しかし、この届出医療機関は地域包括診療料で93施設、地域包括診療加算で4,713施設(H27.7)と、前年の各々122施設、6,536施設から▲29施設、▲1,823施設と大幅に減少している。
今次改定で常勤医2名などの要件緩和や認知症に着目した改編型点数項目を新設したが、その思惑とは裏腹に勝算には疑問符がつく。
全国には一般病院7,426施設、診療所10万461施設(H26医療施設調査)があり、地域包括診療加算の算定は5%にも満たない。これでは、厚労省の期待する「かかりつけ医」の点数とはいえない。
そもそも、患者にとって「かかりつけ医」は1医療機関に限定されない。胃潰瘍で膝関節痛の患者は内科と整形外科で「かかりつけ医」がいる。白内障や前立腺肥大があれば、眼科や泌尿器科で「かかりつけ医」をもつ。
逆に、専門医が開業する診療所は、自己研鑽と実践、診療経験を通じ専門領域外の診療能力・対応能力を高め全人的医療の提供への近接に努力し、また適切に他の専門医への紹介・連携を図っている。
患者に複数疾病がなくとも、「かかりつけ医」はその機能を果たしており、患者にとって「かかりつけ医」は1医療機関に限らない。この自明な現実に対し、患者と医療機関を「1対1」の関係性の「鋳型」にハメ込み、包括点数化を企図しても事態は進まない。
かつて老人外来総合診療料、後期高齢者診療料などの包括点数は、最終的に廃止となったが、医療界はハシゴを外された過去や、加算点数の本点数へのマルメなどの政策手段も忘れてはいない。
◆かかりつけ医機能の分解・個別評価で第一線医療の強化を 定額負担の追加は最悪の愚策
かかりつけ医機能を本当に評価するのであれば、診療所の半数が経営悪化で2割が赤字と示された中医協の医療経済実態調査に応え、経営の土台となる初診料、再診料をまず引き上げ、第一線医療の基盤を強化すべきである。その上で、ハードルの高い包括点数や加算の設定ではなく、「診断」や「疾病管理」「複数疾病の診療対応」「他科連携・紹介」「生活指導」「相談・助言」「時間外対応」など、かかりつけ医」が患者個別に果たした"機能"を評価する組み立てに代えるべきである。
決して、厚労省が企図する「かかりつけ医」以外への受診の際は3割負担に定額負担を追加するなどというペナルティー方式による普及であってはならない。この夢想は患者、医療機関にとって混乱を生じさせかねない。
われわれは、かかりつけ医の機能強化を図るため、初診料、再診料の引き上げを改めて求める。
2016年2月12日
かかりつけ医機能の強化に逆行する画餅の点数改定
初診料・再診料の据え置きに抗議する
神奈川県保険医協会
政策部長 桑島 政臣
次期診療報酬改定の点数が2月10日答申された。本体+0.49%と前回(+0.1%)の5倍の財源確保といわれているものの、医療機関の基礎的な点数である、初診料、再診料、入院基本料はいずれも据え置かれた。とりわけ、第一線医療にとって喫緊の2000年代水準への復元、つまりは診療所の初診料286点<消費税対応分12点含む>、再診料77点<同3点含む>への要望は中医協では一顧だにされておらず、かかりつけ医機能の強化に完全に逆行している。われわれはこれに強く抗議する。
◆画餅のかかりつけ医機能の強化 疾病により「かかりつけ医」は1機関に限定されない
今次改定の柱の一つに、かかりつけ医の機能強化が挙げられている。しかしながら、厚労省のいう「かかりつけ医」は、地域包括診療料、地域包括診療加算を算定する医療機関と同義とされている。これは常勤医3名、24時間対応、高血圧・糖尿病・脂質異常・認知症のうち複数疾病の患者などを要件とし、「全人的医療」の提供を評価したものとしている。
しかし、この届出医療機関は地域包括診療料で93施設、地域包括診療加算で4,713施設(H27.7)と、前年の各々122施設、6,536施設から▲29施設、▲1,823施設と大幅に減少している。
今次改定で常勤医2名などの要件緩和や認知症に着目した改編型点数項目を新設したが、その思惑とは裏腹に勝算には疑問符がつく。
全国には一般病院7,426施設、診療所10万461施設(H26医療施設調査)があり、地域包括診療加算の算定は5%にも満たない。これでは、厚労省の期待する「かかりつけ医」の点数とはいえない。
そもそも、患者にとって「かかりつけ医」は1医療機関に限定されない。胃潰瘍で膝関節痛の患者は内科と整形外科で「かかりつけ医」がいる。白内障や前立腺肥大があれば、眼科や泌尿器科で「かかりつけ医」をもつ。
逆に、専門医が開業する診療所は、自己研鑽と実践、診療経験を通じ専門領域外の診療能力・対応能力を高め全人的医療の提供への近接に努力し、また適切に他の専門医への紹介・連携を図っている。
患者に複数疾病がなくとも、「かかりつけ医」はその機能を果たしており、患者にとって「かかりつけ医」は1医療機関に限らない。この自明な現実に対し、患者と医療機関を「1対1」の関係性の「鋳型」にハメ込み、包括点数化を企図しても事態は進まない。
かつて老人外来総合診療料、後期高齢者診療料などの包括点数は、最終的に廃止となったが、医療界はハシゴを外された過去や、加算点数の本点数へのマルメなどの政策手段も忘れてはいない。
◆かかりつけ医機能の分解・個別評価で第一線医療の強化を 定額負担の追加は最悪の愚策
かかりつけ医機能を本当に評価するのであれば、診療所の半数が経営悪化で2割が赤字と示された中医協の医療経済実態調査に応え、経営の土台となる初診料、再診料をまず引き上げ、第一線医療の基盤を強化すべきである。その上で、ハードルの高い包括点数や加算の設定ではなく、「診断」や「疾病管理」「複数疾病の診療対応」「他科連携・紹介」「生活指導」「相談・助言」「時間外対応」など、かかりつけ医」が患者個別に果たした"機能"を評価する組み立てに代えるべきである。
決して、厚労省が企図する「かかりつけ医」以外への受診の際は3割負担に定額負担を追加するなどというペナルティー方式による普及であってはならない。この夢想は患者、医療機関にとって混乱を生じさせかねない。
われわれは、かかりつけ医の機能強化を図るため、初診料、再診料の引き上げを改めて求める。
2016年2月12日