神奈川県保険医協会とは
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2004/12/18 理事長談話 「混合診療の"全面解禁"に道を開く決着に断固抗議する」
混合診療の"全面解禁"に道を開く決着に断固抗議する
神奈川県保険医協会
理事長 平尾 紘一
混合診療をめぐり、尾辻厚労相と村上規制改革担当相は12月15日、合意し小泉首相も了承した。マスコミ各紙の「全面解禁見送り」報道と異なり、内実は"全面解禁"に道を開くものとなっており、最悪の決着となった。この合意に、われわれは断固抗議する。
今回の決着は、無条件解禁とせずに、表面上は「療養の給付」=現物給付原則を残したかに見えるが、合意内容は、これを実質的に掘り崩すものとなっている。
「合意」では、06年の法整備までは、今の"部分解禁"制度(特定療養費)の拡充を図り、「中度先進医療」(=かならずしも高度でない先進技術)、「国内未承認薬」、「制限回数を超える医療」の3分野を新たに追加し、混合診療を可能にするとした。
「中度先進医療」は、医学会からの保険導入の要望の強い約100技術と、大学病院、臨床研修指定病院など約2000医療機関が対象と想定されており、普及度や汎用性を考えれば影響は、レアケースの高度先進医療とは格段に違ってくる。
実際、保険外診療部分の自由料金を払える金持ち層にとっては基礎的部分に保険が適応され、負担軽減されるが、そもそも負担能力のない大多数の層にとって何ら福音とはならない。それどころか、保険給付が「中度先進医療」の分だけ膨らみ、逆に「軽医療」やOTC類似医薬品の保険外しの理由にされかねない。
更には、将来の開業医を輩出する大学病院などでの混合診療の日常化は、いずれ混合診療の常態化へとつながり、第一線の臨床現場に混乱をきたすことは必至である。
「国内未承認薬」は治験と医療保険の弾力運用で患者要望に応えた部分もあるが、逆に日本での治験を遅らせる懸念や、医療被害・事故の際の責任の所在や補償が不明で、危惧を禁じえない。
「制限回数を超える医療」は、従来、保険外規定で厳格に上乗せ料金の徴収を禁じていたものを、180度方針転換した。これは医療保険の不十分性を患者負担として転嫁するものでしかない。回数制限・日数制限は、検査に限定されず、指導管理、処置、投薬、入院にまで及んでいる。混合診療を可能とするため、部分的に「療養費」構成にすることとなり、「療養の給付」原則に大きな風穴が開くことになる。
この"技術料差額"といえる混合診療は、医療機関は特定されておらず、どこの医療機関でも徴収できるようになっている。これが実施されれば、かつて歯科が旧差額時代に起こしたモラルハザードの再現が危惧される。06年の診療報酬改定は外来医療の専門科別の通院回数制限も現役官僚から口に出されており、医療界全体に与える影響は予断を許さない。
また「合意」は06年の法整備で「保険導入検討医療」と「患者選択同意医療」の新制度を作り、保険医療全体のあり方を再構成するとした。しかし、前者は保険導入が確約されたものでなく、"検討"対象でしかない。また後者は、保険導入が前提とされておらず、保険外し・給付制限プラス自由料金のシステムとして機能することが目に見えている。
このように、今回の合意は、療養費払い化を容認し監督権限を維持した厚生労省と、全面解禁に固執する規制改革・民間開放推進会議との妥協の産物であり、厚労省自らが言う通りの「実質的解禁」である。われわれは、世界一の健康度と高いコストパフォーマンスの日本の医療保険制度を台無しする、天下の愚策の撤回と、保険給付の充実・拡充を強く求めるものである。
2004年12月18日
混合診療の"全面解禁"に道を開く決着に断固抗議する
神奈川県保険医協会
理事長 平尾 紘一
混合診療をめぐり、尾辻厚労相と村上規制改革担当相は12月15日、合意し小泉首相も了承した。マスコミ各紙の「全面解禁見送り」報道と異なり、内実は"全面解禁"に道を開くものとなっており、最悪の決着となった。この合意に、われわれは断固抗議する。
今回の決着は、無条件解禁とせずに、表面上は「療養の給付」=現物給付原則を残したかに見えるが、合意内容は、これを実質的に掘り崩すものとなっている。
「合意」では、06年の法整備までは、今の"部分解禁"制度(特定療養費)の拡充を図り、「中度先進医療」(=かならずしも高度でない先進技術)、「国内未承認薬」、「制限回数を超える医療」の3分野を新たに追加し、混合診療を可能にするとした。
「中度先進医療」は、医学会からの保険導入の要望の強い約100技術と、大学病院、臨床研修指定病院など約2000医療機関が対象と想定されており、普及度や汎用性を考えれば影響は、レアケースの高度先進医療とは格段に違ってくる。
実際、保険外診療部分の自由料金を払える金持ち層にとっては基礎的部分に保険が適応され、負担軽減されるが、そもそも負担能力のない大多数の層にとって何ら福音とはならない。それどころか、保険給付が「中度先進医療」の分だけ膨らみ、逆に「軽医療」やOTC類似医薬品の保険外しの理由にされかねない。
更には、将来の開業医を輩出する大学病院などでの混合診療の日常化は、いずれ混合診療の常態化へとつながり、第一線の臨床現場に混乱をきたすことは必至である。
「国内未承認薬」は治験と医療保険の弾力運用で患者要望に応えた部分もあるが、逆に日本での治験を遅らせる懸念や、医療被害・事故の際の責任の所在や補償が不明で、危惧を禁じえない。
「制限回数を超える医療」は、従来、保険外規定で厳格に上乗せ料金の徴収を禁じていたものを、180度方針転換した。これは医療保険の不十分性を患者負担として転嫁するものでしかない。回数制限・日数制限は、検査に限定されず、指導管理、処置、投薬、入院にまで及んでいる。混合診療を可能とするため、部分的に「療養費」構成にすることとなり、「療養の給付」原則に大きな風穴が開くことになる。
この"技術料差額"といえる混合診療は、医療機関は特定されておらず、どこの医療機関でも徴収できるようになっている。これが実施されれば、かつて歯科が旧差額時代に起こしたモラルハザードの再現が危惧される。06年の診療報酬改定は外来医療の専門科別の通院回数制限も現役官僚から口に出されており、医療界全体に与える影響は予断を許さない。
また「合意」は06年の法整備で「保険導入検討医療」と「患者選択同意医療」の新制度を作り、保険医療全体のあり方を再構成するとした。しかし、前者は保険導入が確約されたものでなく、"検討"対象でしかない。また後者は、保険導入が前提とされておらず、保険外し・給付制限プラス自由料金のシステムとして機能することが目に見えている。
このように、今回の合意は、療養費払い化を容認し監督権限を維持した厚生労省と、全面解禁に固執する規制改革・民間開放推進会議との妥協の産物であり、厚労省自らが言う通りの「実質的解禁」である。われわれは、世界一の健康度と高いコストパフォーマンスの日本の医療保険制度を台無しする、天下の愚策の撤回と、保険給付の充実・拡充を強く求めるものである。
2004年12月18日