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2006/1/31 医療運動部会長談話 「医師をスケープゴートにし、国民の受療権の剥奪を狙う 冷酷な年金未納対策に抗議する」

医師をスケープゴートにし、国民の受療権の剥奪を狙う冷酷な年金未納対策に抗議する

                          神奈川県保険医協会

医療運動部会長  池川 明


 1月31日、社会保険庁は国民年金保険料が未納の医師、歯科医師について保険医登録の更新を認めない方針を固めたと報じられた(1/31毎日新聞『年金未納 保険医登録 更新せず 所得がある人 国保給付制限も』)。

 また、所得のある国保未納の一般の人に対しては。有効期限が3ヶ月程度と通常より短い保険証(短期保険証)を交付し、更新に訪れずに期限切れになれば、医療費を全額負担させる仕組みを導入するとしている。

 この年金未納と保険医登録の更新要件の連動、国保の給付制限ともに、立法化措置をするとし、3月の国会に法案を提出の予定となっている。

 われられは、この方針に異様な違和感と理不尽な衝撃を覚える。

 この件について、当協会では1月31日、直接、社会保険庁年金保険課に質したところ、①そもそも、未納者の職業は把握していないので、医師、歯科医師の未納者の実態は把握しておらず、数はおろか存在すらも不明であり、一人もいない可能性もある。②「社会保険制度に関連する資格なら制限は可能と判断した」と報じられている点は、国土交通省の所管の運転免許と違い、年金の保険医登録更新も厚生労働省の所管であり、立法化裁量が厚生労働省のあることが理由となっている-、この2点が明らかとなった。

 いわば、実態が不明にもかかわらず、しかも年金制度と医療制度という別次元のものを一緒くたとする、非常に乱暴な施策の方針化でしかない。ちなに、保険医とは、法的には保険者の国民に対する医療給付の責務を代行しているのであり、生活保障のための将来の蓄えである年金制度とは、全く異質のものであり、何ら関係性はない。

 この未納者への保険医登録更新認めずーの方針は、「一般に高額所得者みられている」と報道されるように、医師、歯科医師への懲罰を見せしめにし、一般の国民年金未納者への制裁措置を甘受させる、"梃子"とするために出された感が強い。

 これとておかしな話である。制度の垣根を超えて、別制度で追加的に制裁をかけること自体、法論理的に異常である。また、医療給付は医療サービスの現物給付で、受療権を確認するものが保険証であり、年金は所得保障であり現金給付である。この制度の根本原理を無視している。

 すでに、国保は保険料滞納(未納)により窓口10割負担の資格30万世帯約50万人以上に発行されており、いわばこれらの人々は「無保険」状態となっており、「格差社会」の象徴でもある。

 ここにお門違いの年金保険料未納者への医療保険給付の制限が加われば、更に大量の「無保険者」が続出することになる。

 国保は世帯所得170万円(年間)、世帯あたり保険料15.5万円、平均年齢52歳が平均的な姿であり、保険料の所得に占める割合は8.4%と、政管健保(4.5%)、組合健保(3.7%)に比べて高い。つまり所得が極めて低く、負担が重い構造にある。皆保険の趣旨に反し、誰もが納められる保険料設定や、保険料の減免基準が一向に是正されないため、払えたくても払えない保険料未納者が続出する構図となっている。

 このような世帯に、とって唯一のセーフネットである医療を受ける権利を剥奪する今回の社会保険庁の方針は、まさに苛斂誅求であり"冷酷"そのものである。今、とられるべきは、将来への安心ある制度設計と、そのための国庫負担の増額である。

 しかし、これ以上に指弾されるべきは、年金保険料を原資としたグリーンピア事業の破綻による4千億円の損失をはじめ、職員宿舎の建設から公用車購入。香典にいたるまで5兆6千億円に上る巨費の保険料流用、年金事業運営の失敗など歴代厚生大臣、厚生官僚の責任である。

 このことを忘却したかのように、本末転倒の年金未納者への制裁措置を強化することは言語道断である。

 繰り返すが、保険医登録も、国保の受療権も、年金とは全く制度的には無関係なはなしである。

 われわれは、木に竹を接ぐ、無手勝流の施策と、社会保障をことごとく崩す、政府の施策の撤回を強く求める。

2006年1月31日

 

医師をスケープゴートにし、国民の受療権の剥奪を狙う冷酷な年金未納対策に抗議する

                          神奈川県保険医協会

医療運動部会長  池川 明


 1月31日、社会保険庁は国民年金保険料が未納の医師、歯科医師について保険医登録の更新を認めない方針を固めたと報じられた(1/31毎日新聞『年金未納 保険医登録 更新せず 所得がある人 国保給付制限も』)。

 また、所得のある国保未納の一般の人に対しては。有効期限が3ヶ月程度と通常より短い保険証(短期保険証)を交付し、更新に訪れずに期限切れになれば、医療費を全額負担させる仕組みを導入するとしている。

 この年金未納と保険医登録の更新要件の連動、国保の給付制限ともに、立法化措置をするとし、3月の国会に法案を提出の予定となっている。

 われられは、この方針に異様な違和感と理不尽な衝撃を覚える。

 この件について、当協会では1月31日、直接、社会保険庁年金保険課に質したところ、①そもそも、未納者の職業は把握していないので、医師、歯科医師の未納者の実態は把握しておらず、数はおろか存在すらも不明であり、一人もいない可能性もある。②「社会保険制度に関連する資格なら制限は可能と判断した」と報じられている点は、国土交通省の所管の運転免許と違い、年金の保険医登録更新も厚生労働省の所管であり、立法化裁量が厚生労働省のあることが理由となっている-、この2点が明らかとなった。

 いわば、実態が不明にもかかわらず、しかも年金制度と医療制度という別次元のものを一緒くたとする、非常に乱暴な施策の方針化でしかない。ちなに、保険医とは、法的には保険者の国民に対する医療給付の責務を代行しているのであり、生活保障のための将来の蓄えである年金制度とは、全く異質のものであり、何ら関係性はない。

 この未納者への保険医登録更新認めずーの方針は、「一般に高額所得者みられている」と報道されるように、医師、歯科医師への懲罰を見せしめにし、一般の国民年金未納者への制裁措置を甘受させる、"梃子"とするために出された感が強い。

 これとておかしな話である。制度の垣根を超えて、別制度で追加的に制裁をかけること自体、法論理的に異常である。また、医療給付は医療サービスの現物給付で、受療権を確認するものが保険証であり、年金は所得保障であり現金給付である。この制度の根本原理を無視している。

 すでに、国保は保険料滞納(未納)により窓口10割負担の資格30万世帯約50万人以上に発行されており、いわばこれらの人々は「無保険」状態となっており、「格差社会」の象徴でもある。

 ここにお門違いの年金保険料未納者への医療保険給付の制限が加われば、更に大量の「無保険者」が続出することになる。

 国保は世帯所得170万円(年間)、世帯あたり保険料15.5万円、平均年齢52歳が平均的な姿であり、保険料の所得に占める割合は8.4%と、政管健保(4.5%)、組合健保(3.7%)に比べて高い。つまり所得が極めて低く、負担が重い構造にある。皆保険の趣旨に反し、誰もが納められる保険料設定や、保険料の減免基準が一向に是正されないため、払えたくても払えない保険料未納者が続出する構図となっている。

 このような世帯に、とって唯一のセーフネットである医療を受ける権利を剥奪する今回の社会保険庁の方針は、まさに苛斂誅求であり"冷酷"そのものである。今、とられるべきは、将来への安心ある制度設計と、そのための国庫負担の増額である。

 しかし、これ以上に指弾されるべきは、年金保険料を原資としたグリーンピア事業の破綻による4千億円の損失をはじめ、職員宿舎の建設から公用車購入。香典にいたるまで5兆6千億円に上る巨費の保険料流用、年金事業運営の失敗など歴代厚生大臣、厚生官僚の責任である。

 このことを忘却したかのように、本末転倒の年金未納者への制裁措置を強化することは言語道断である。

 繰り返すが、保険医登録も、国保の受療権も、年金とは全く制度的には無関係なはなしである。

 われわれは、木に竹を接ぐ、無手勝流の施策と、社会保障をことごとく崩す、政府の施策の撤回を強く求める。

2006年1月31日