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2018/11/5 政策部長談話 「外国人向け医療ツーリズムの自由診療病院に反対する 過剰病床地域での開設、医師不足に拍車、営利目的を擬装 医療秩序に混乱来たす、制度の間隙に乗じた枠組みでの開設を厳しく問う」

外国人向け医療ツーリズムの自由診療病院に反対する

過剰病床地域での開設医師不足に拍車営利目的を擬装

医療秩序に混乱来たす、制度の間隙に乗じた枠組みでの開設を厳しく問う

神奈川県保険医協会

政策部長  桑島 政臣


◆ 医療界に衝撃 (医)葵会100床の自由診療病院の開設計画

 川崎市で、外国人向けの医療ツーリズムを自由診療で行う100床の病院開設が浮上し、医療界へ大きな衝撃を与えている。医療法人社団・葵会が、病床過剰地域の川崎南部医療圏で開設する予定だが、医師確保等に伴う医師不足・医師偏在の助長や地域との軋轢、営利目的の隠れ蓑利用、医療保険制度への影響など、現在の日本医療の秩序を混乱させる危険を内包している。経済産業省が絡んだ医療のインバウンドのビジネスモデルの「典型」となるだけに看過できない。われわれは、外国人向け医療ツーリズムの自由診療病院の開設に強く反対する。

◆ 川崎市、神奈川県など地元医師会、病院協会はこぞって反対

 この外国人専用の医療ツーリズム病院の開設に関しては、10月1日から中旬までに川崎市医師会をはじめ、川崎市病院協会、神奈川県医師会、横浜市医師会、相模原医師会、相模市医師会連合会、横浜市病院協会から、川崎市健康福祉局長や川崎市長へ、開設反対の意見書、要望書が提出されている。10月28日には14大都市医師会連絡協議会で問題となり近く日本医師会に決議文書を提出する。

 いずれも事業の営利目的性や地域医療構想との不整合、医療人材確保での軋轢、自由診療病床の拡大・医療保険への浸食を指摘し問題としている。

 日本医師会も中川副会長が10月26日、厚労省の地域医療構想に関する会議で、急浮上したこの病床過剰地域での自由診療病院開設の動きに触れ、構想区域ごとの自由診療の早急な実態把握をすかさず要望している。

 葵会が川崎市や川崎市医師会に提示した資料「医療ツーリズムホスピタル(仮称)開院について(案)」では、開設目的とし、外国人患者に日本の最先端医療を提供することとしている。診療科目は整形外科、脳神経外科、循環器内科、消化器外科、呼吸器外科、心臓外科、血管外科、形成外科の8つ。2病棟でCT、MRI、PETやリハビリロボットHALなどの設備機器を備える。医師は最大22名、看護師50名など医療専門職90名強、医療通訳やシステム管理を含む管理・事務部門16名で総勢110名程度の陣容となっている。場所は先端医療などの国際戦略総合特区、国家戦略特区として指定を受けた川崎区殿町の殿町国際戦略拠点(キングスカイフロント)の近傍である。

 10月30日の川崎市地域医療審議会では2時間超の審議となり、医療関係者から病床の他法人への移譲や保険診療への進出など数多くの疑問や懸念がだされた。後半の葵会へのヒアリングでは、医師や医療人材確保での地域競合や悪影響に関し、十分な回答はなされなかった。審議会は継続審議となっている。11月19日には川崎地区地域医療構想調整会議が予定されている。

◆ 医療法の病院開設の大前提は、「国民の健康の保持に寄与すること」 外国人専用は法に外れる

 病床過剰地域での病院開設は、保険医療機関としての指定をしないことで実質の病床規制を行っている。自由診療のみを行う病院の場合、この法的規制をすり抜けることとなる。

 医療法では、病院の開設許可申請があった場合は、営利を目的とする場合を除き、構造設備・人員要件に適合すれば許可を知事(指定都市の市長)は与えなければならない(第7条)となっている。また、民間病院に対して知事は、医療計画の達成の推進のため特に必要がある場合は、県の医療審議会の意見を聞いて「勧告」はできるが、強制力のある「命令」は出せないことになっている。

 このことから、営利目的性にまず焦点があてられている。しかし、そもそも医療法は医療提供施設を定めた法律であるが、第一条が示すとおり、良質で適切な効率的な医療提供体制の確保は、国民の健康の保持に寄与すること、を目的としたものである。

 よって、外国人専用の病床のみの病院開設は、法の趣旨、法の理念からは外れている。無論、医療法に基づかない病院開設はありえず、法に外れた病院病床での医療提供は違法である。

 実際、外国人が国内で治療、入院する場合はある。これは「例外」であり、人道的、国際的な見地からの対応である。このことと、外国人専用の病院開設は厳格に峻別すべきことである。

◆ 100床で35億円の診療・健診収入? 過大な収入規模 営利性判断は「実質」で

 営利目的性の問題だが、葵会の外国人専用病院は経産省が旗振りをする医療ツーリズムの枠組みにそって㈱JTBグループのJMHC(ジャパン・メディカル&ヘルスツーリズムセンター)が外国人患者をコーディネイトする。現地とのやりとり、医療情報授受、宿泊、移動、通訳、受診、支払いなど一手に行う。この企業は「医療渡航支援企業」といい、国の定めたガイドラインに基づきMEJ(一般社団法人Medical Excellence JAPAN)が認証するライセンスで、この保持なしにはコーディネイト業務は法律上できない。またMEJは国内54社を会員とする医療ツーリズムの中核組織である。

 10月30日の川崎市地域医療審議会では、平成5年の非営利性確認の医政局通知が触れられ、厚労省に照会中で検討中とされた。ただ、医療法人の外形的な営利企業との関係をもって、非営利に該当との観測もあるが、営利企業との紐帯がとても強い事業であり、市場原理が色濃く帯びるだけに「実質」での判断が求められる。

 葵会の提示では、新設の外国人専用病院の治療費・健診「収入」は年間35億4,000万円とされている。急性期一般病棟入院料5を参考単価とし、外来診療を行うにしても100床の規模ではかなり巨額である。中医協の医療経済実態調査報告(H29年度)で同程度の体制(旧10対1入院基本料・133床・国公立除く)の医業収益は22億7千万円であり、1.5倍超である。100床換算では2倍である。

◆ 虎視眈々と準備 世界と先端医療を視野に

 葵会は外国人専用病院の開設にあたり、①多摩川を挟む羽田空港と川崎区殿町との間に連絡橋が建設、2020年完成となり世界に一番近い位置となること、②研究機関・新産業の集積する殿町国際戦略拠点に近接していることを優位点として挙げている。この特区の拠点には、川崎生命科学・環境研究センターLiSE、実験動物中央研究所、ナノ医療イノベーションセンター、ジョンソン・エンド・ジョンソン東京サイエンスセンター(手術トレーニング施設)、サイバーダイン㈱(装着ロボットHAL)、ペプチドリーム㈱(創薬開発企業)、国立医薬品食品衛生研究所などが集積している。今年6月には東急REIホテルがオープンした。

 当会が昨年11月、この地区を視察した際、川崎市の担当はサイバーダインのHALは脊髄損傷や脳卒中の患者の歩行・運動機能改善に資し、この開発と治療を慶應義塾大学とともに行い病床をもつ予定だとしていた。葵会の新設病院の第一標榜は整形外科でHALを設備としており、符号している。

◆ 病床規制の突破口 民間保険でのキャッシュレス導入 皆保険の悪用も

 葵会は国家戦略特区の枠組みで、再生医療やがん免疫療法、医療ツーリズムなど高度医療の提供をすることで、病床規制の特例として20床を川崎南部医療圏でAOI国際病院が獲得している。これ以上の病床獲得には、保険診療を度外視した自由診療の病床での病院開設となり、先進医療の症例数を重ねるうえで外国人患者専用というのは、ある意味合目的である。葵会は北京、上海以外の中国の成都、カザフスタン、タイ、ベトナムからの外国人患者への期待を医療審議会で上げている。

 自由診療もすでに外国人向けの民間医療保険が存在する。政府は医療ツーリズムにあわせキャッシュレス化の推進体制を組んでいる。国内の民間医療保険は病気の際の保険金を医療機関に直接支払うキャッシュレス化(公的保険の受領委任払いと同様)が金融庁のお墨付きを得ており、自由診療部門への拡大も想定される。先進医療では重粒子線治療の費用カバーで実施されている。

 医療ツーリズムは医療目的の渡航であれ、外国人患者や家族・関係者の国内移動はあり、移動先での疾病・負傷治療が出てくる。キャッシュレス患者の日常化は、公的保険の患者負担を補填する民間保険のキャッシュレス制度の流通の壁を低くする。皆保険が揺らいでくる。

 いま、在留3か月を悪用した外国人の国保加入での治療が問題化しているが、外国人専用病院の出現はこの助長の梃となる懸念がある。在留外国人約247万人、年間の観光目的の訪日外国人2,869万人、医療目的は数千~1万人の数に変化を来たし、わが国の医療保険への影響は否定できない。

 医療ツーリズムの中核組織MEJは国内45施設をJIH(Japan International Hospital)と判定・推奨し、観光庁がHPで海外にPRしてきた。これが外国人専用病院の登場で次元が変わる。

 国策の地域包括ケアの構築、医療資源の有効活用・医療需要と医療施設のデータ制御を期した地域医療構想と、この外国人専用病院の開設は全く相いれない。審議中の医師の働き方改革においても医師の健康と地域医療の確保の両立の難題、労働時間短縮に対しても冷や水を浴びせ、地域での医療人材確保に軋みを生じさせ、医療機関関係の悪化、地域医療連携に水を差すものとなる。

 日本人を対象とした自由診療病院の呼び水や、キャッシュレス民間医療保険の補填を前提とした公的医療保険の運営、公的給付範囲の縮小・削減、医療機関内の混乱が想起される。

 われわれは、市場原理の医療ビジネスを視野に置く、医療ツーリズムの外国人専用病院開設に改めて強く反対する。

2018年11月5日

(図)葵会の外国人専用病院開設予定地と殿町国際戦略拠点、羽田空港の位置関係図

(川崎市ホームページより *一部改変)

20181105danwa.jpg

外国人向け医療ツーリズムの自由診療病院に反対する

過剰病床地域での開設医師不足に拍車営利目的を擬装

医療秩序に混乱来たす、制度の間隙に乗じた枠組みでの開設を厳しく問う

神奈川県保険医協会

政策部長  桑島 政臣


◆ 医療界に衝撃 (医)葵会100床の自由診療病院の開設計画

 川崎市で、外国人向けの医療ツーリズムを自由診療で行う100床の病院開設が浮上し、医療界へ大きな衝撃を与えている。医療法人社団・葵会が、病床過剰地域の川崎南部医療圏で開設する予定だが、医師確保等に伴う医師不足・医師偏在の助長や地域との軋轢、営利目的の隠れ蓑利用、医療保険制度への影響など、現在の日本医療の秩序を混乱させる危険を内包している。経済産業省が絡んだ医療のインバウンドのビジネスモデルの「典型」となるだけに看過できない。われわれは、外国人向け医療ツーリズムの自由診療病院の開設に強く反対する。

◆ 川崎市、神奈川県など地元医師会、病院協会はこぞって反対

 この外国人専用の医療ツーリズム病院の開設に関しては、10月1日から中旬までに川崎市医師会をはじめ、川崎市病院協会、神奈川県医師会、横浜市医師会、相模原医師会、相模市医師会連合会、横浜市病院協会から、川崎市健康福祉局長や川崎市長へ、開設反対の意見書、要望書が提出されている。10月28日には14大都市医師会連絡協議会で問題となり近く日本医師会に決議文書を提出する。

 いずれも事業の営利目的性や地域医療構想との不整合、医療人材確保での軋轢、自由診療病床の拡大・医療保険への浸食を指摘し問題としている。

 日本医師会も中川副会長が10月26日、厚労省の地域医療構想に関する会議で、急浮上したこの病床過剰地域での自由診療病院開設の動きに触れ、構想区域ごとの自由診療の早急な実態把握をすかさず要望している。

 葵会が川崎市や川崎市医師会に提示した資料「医療ツーリズムホスピタル(仮称)開院について(案)」では、開設目的とし、外国人患者に日本の最先端医療を提供することとしている。診療科目は整形外科、脳神経外科、循環器内科、消化器外科、呼吸器外科、心臓外科、血管外科、形成外科の8つ。2病棟でCT、MRI、PETやリハビリロボットHALなどの設備機器を備える。医師は最大22名、看護師50名など医療専門職90名強、医療通訳やシステム管理を含む管理・事務部門16名で総勢110名程度の陣容となっている。場所は先端医療などの国際戦略総合特区、国家戦略特区として指定を受けた川崎区殿町の殿町国際戦略拠点(キングスカイフロント)の近傍である。

 10月30日の川崎市地域医療審議会では2時間超の審議となり、医療関係者から病床の他法人への移譲や保険診療への進出など数多くの疑問や懸念がだされた。後半の葵会へのヒアリングでは、医師や医療人材確保での地域競合や悪影響に関し、十分な回答はなされなかった。審議会は継続審議となっている。11月19日には川崎地区地域医療構想調整会議が予定されている。

◆ 医療法の病院開設の大前提は、「国民の健康の保持に寄与すること」 外国人専用は法に外れる

 病床過剰地域での病院開設は、保険医療機関としての指定をしないことで実質の病床規制を行っている。自由診療のみを行う病院の場合、この法的規制をすり抜けることとなる。

 医療法では、病院の開設許可申請があった場合は、営利を目的とする場合を除き、構造設備・人員要件に適合すれば許可を知事(指定都市の市長)は与えなければならない(第7条)となっている。また、民間病院に対して知事は、医療計画の達成の推進のため特に必要がある場合は、県の医療審議会の意見を聞いて「勧告」はできるが、強制力のある「命令」は出せないことになっている。

 このことから、営利目的性にまず焦点があてられている。しかし、そもそも医療法は医療提供施設を定めた法律であるが、第一条が示すとおり、良質で適切な効率的な医療提供体制の確保は、国民の健康の保持に寄与すること、を目的としたものである。

 よって、外国人専用の病床のみの病院開設は、法の趣旨、法の理念からは外れている。無論、医療法に基づかない病院開設はありえず、法に外れた病院病床での医療提供は違法である。

 実際、外国人が国内で治療、入院する場合はある。これは「例外」であり、人道的、国際的な見地からの対応である。このことと、外国人専用の病院開設は厳格に峻別すべきことである。

◆ 100床で35億円の診療・健診収入? 過大な収入規模 営利性判断は「実質」で

 営利目的性の問題だが、葵会の外国人専用病院は経産省が旗振りをする医療ツーリズムの枠組みにそって㈱JTBグループのJMHC(ジャパン・メディカル&ヘルスツーリズムセンター)が外国人患者をコーディネイトする。現地とのやりとり、医療情報授受、宿泊、移動、通訳、受診、支払いなど一手に行う。この企業は「医療渡航支援企業」といい、国の定めたガイドラインに基づきMEJ(一般社団法人Medical Excellence JAPAN)が認証するライセンスで、この保持なしにはコーディネイト業務は法律上できない。またMEJは国内54社を会員とする医療ツーリズムの中核組織である。

 10月30日の川崎市地域医療審議会では、平成5年の非営利性確認の医政局通知が触れられ、厚労省に照会中で検討中とされた。ただ、医療法人の外形的な営利企業との関係をもって、非営利に該当との観測もあるが、営利企業との紐帯がとても強い事業であり、市場原理が色濃く帯びるだけに「実質」での判断が求められる。

 葵会の提示では、新設の外国人専用病院の治療費・健診「収入」は年間35億4,000万円とされている。急性期一般病棟入院料5を参考単価とし、外来診療を行うにしても100床の規模ではかなり巨額である。中医協の医療経済実態調査報告(H29年度)で同程度の体制(旧10対1入院基本料・133床・国公立除く)の医業収益は22億7千万円であり、1.5倍超である。100床換算では2倍である。

◆ 虎視眈々と準備 世界と先端医療を視野に

 葵会は外国人専用病院の開設にあたり、①多摩川を挟む羽田空港と川崎区殿町との間に連絡橋が建設、2020年完成となり世界に一番近い位置となること、②研究機関・新産業の集積する殿町国際戦略拠点に近接していることを優位点として挙げている。この特区の拠点には、川崎生命科学・環境研究センターLiSE、実験動物中央研究所、ナノ医療イノベーションセンター、ジョンソン・エンド・ジョンソン東京サイエンスセンター(手術トレーニング施設)、サイバーダイン㈱(装着ロボットHAL)、ペプチドリーム㈱(創薬開発企業)、国立医薬品食品衛生研究所などが集積している。今年6月には東急REIホテルがオープンした。

 当会が昨年11月、この地区を視察した際、川崎市の担当はサイバーダインのHALは脊髄損傷や脳卒中の患者の歩行・運動機能改善に資し、この開発と治療を慶應義塾大学とともに行い病床をもつ予定だとしていた。葵会の新設病院の第一標榜は整形外科でHALを設備としており、符号している。

◆ 病床規制の突破口 民間保険でのキャッシュレス導入 皆保険の悪用も

 葵会は国家戦略特区の枠組みで、再生医療やがん免疫療法、医療ツーリズムなど高度医療の提供をすることで、病床規制の特例として20床を川崎南部医療圏でAOI国際病院が獲得している。これ以上の病床獲得には、保険診療を度外視した自由診療の病床での病院開設となり、先進医療の症例数を重ねるうえで外国人患者専用というのは、ある意味合目的である。葵会は北京、上海以外の中国の成都、カザフスタン、タイ、ベトナムからの外国人患者への期待を医療審議会で上げている。

 自由診療もすでに外国人向けの民間医療保険が存在する。政府は医療ツーリズムにあわせキャッシュレス化の推進体制を組んでいる。国内の民間医療保険は病気の際の保険金を医療機関に直接支払うキャッシュレス化(公的保険の受領委任払いと同様)が金融庁のお墨付きを得ており、自由診療部門への拡大も想定される。先進医療では重粒子線治療の費用カバーで実施されている。

 医療ツーリズムは医療目的の渡航であれ、外国人患者や家族・関係者の国内移動はあり、移動先での疾病・負傷治療が出てくる。キャッシュレス患者の日常化は、公的保険の患者負担を補填する民間保険のキャッシュレス制度の流通の壁を低くする。皆保険が揺らいでくる。

 いま、在留3か月を悪用した外国人の国保加入での治療が問題化しているが、外国人専用病院の出現はこの助長の梃となる懸念がある。在留外国人約247万人、年間の観光目的の訪日外国人2,869万人、医療目的は数千~1万人の数に変化を来たし、わが国の医療保険への影響は否定できない。

 医療ツーリズムの中核組織MEJは国内45施設をJIH(Japan International Hospital)と判定・推奨し、観光庁がHPで海外にPRしてきた。これが外国人専用病院の登場で次元が変わる。

 国策の地域包括ケアの構築、医療資源の有効活用・医療需要と医療施設のデータ制御を期した地域医療構想と、この外国人専用病院の開設は全く相いれない。審議中の医師の働き方改革においても医師の健康と地域医療の確保の両立の難題、労働時間短縮に対しても冷や水を浴びせ、地域での医療人材確保に軋みを生じさせ、医療機関関係の悪化、地域医療連携に水を差すものとなる。

 日本人を対象とした自由診療病院の呼び水や、キャッシュレス民間医療保険の補填を前提とした公的医療保険の運営、公的給付範囲の縮小・削減、医療機関内の混乱が想起される。

 われわれは、市場原理の医療ビジネスを視野に置く、医療ツーリズムの外国人専用病院開設に改めて強く反対する。

2018年11月5日

(図)葵会の外国人専用病院開設予定地と殿町国際戦略拠点、羽田空港の位置関係図

(川崎市ホームページより *一部改変)

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