神奈川県保険医協会とは
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2014/5/12 抗議文「保険医療機関等に対する個別指導と監査の違いを理解し、公正な報道を望みます」
2014年5月12日
朝日新聞社御中
担当 沢伸也、月舘彩子各記者
神奈川県保険医協会指導監査対策委員会
委員長 入澤 彰仁
保険医療機関等に対する個別指導と監査の違いを理解し、
公正な報道を望みます
5月11日付朝日新聞1面に「診療報酬不適切請求の疑い 厚労省、半数の調査放置 対象、8000医療機関」との記事が掲載されました。一般国民から見れば、何事が起ったのかと驚くに違いありません。記事を見てみると個別指導の選定を行っても実際には指導が半数しか行われていないと批判する内容となっています。そもそも個別指導とはどのようなものかご存知でしょうか。法的には保険医や保険医療機関が厚生労働大臣から受ける行政指導です。そして指導大綱は「保険診療の取り扱い、診療報酬の請求等に関する事項について周知徹底させることを主眼とし、懇切丁寧に行う。」と定めています。つまり、本来は行政指導であり保険診療について懇切丁寧に指導する場なのです。それをはき違え、「調査」を目的として取り調べのような個別指導が一部で行われているのが実態であり、自殺に追い込まれる保険医が後を絶ちません。本来の指導には質問検査権はなく、あくまで任意の行政指導の範囲で実施されるべきことを、「調査放置」と断ずるのは、誤解も甚だしいと指摘せざるを得ません。
また、個別指導は大きく分けて(1)情報提供による個別指導、(2)再指導、(3)各科別の平均点数から1.2倍(病院は1.1倍)を超えた医療機関が選定される個別指導(いわゆる高点数個別指導)があります。記事にもその解説がありますが、(3)については「患者一人あたりの診療報酬請求書が高額で過剰診療の可能性がある」としています。指導大綱には高点数個別指導について過剰診療の可能性があるとはしていません。
そもそも高点数個別指導の選定は医科診療所では、今年度から12区分となりました。これまで内科の区分は透析医療機関が別枠になっていただけで、それ以外の内科は前年度までは一括りでした。今年度からは在宅療養支援診療所が別枠なりましたが、その理由は在宅専門医療機関の平均点数が他の内科と比して高くなり、選定される医療機関のうち在宅専門が多数を占めることになったからです。つまり、医学の進歩や地域医療の実情により、同じ標榜科だからと言って、同じ医療行為をしているとは限りません。たとえば内科であっても内視鏡を専門にしている医療機関であればおのずと平均点数は上がってきます。また、整形外科であってもリハビリテーションの施設基準をクリアし疾患別リハビリを実施しているところとそうでないところでは平均点数の差が出てきます。さらに精神科であれば、精神科デイケア等を実施している医療機関とそうでない医療機関でも平均点数に大きな差が生じます。これは過剰診療ではなく、医療機能の違いによって出てくる平均点数の差であって、「不適切請求」ではありません。
厚生労働省は、個別指導を一律に医療機関数の4%を実施するという目標値を掲げたため、人口が多い都道府県は分母になる対象医療機関数が大きくなり、その件数の個別指導が消化できないことになっているのが実情です。しかし、その中身は、いわゆる情報提供による個別指導や、前年度の個別指導により再指導になっている場合は、実施されており、選定数と差異が出るのは、単なる点数の差だけで選出した高点数個別指導だけです。
このような実態には一切ふれず、あたかも個別指導に選定された8000の医療機関がすべて「不適切請求」の疑いをもたれているというような印象を与える記事の構成は、真実を追求すべきジャーナリズムの本質から逸脱しているといわざるを得ません。
また、記事中に神奈川県の選定委員会の件が触れられています。記事では「10年7月の神奈川県の選定委では、2年連続で個別指導に呼び出されたのに欠席し続け、それでも処分を免れている医療機関が話題になった。欠席理由は「(医療機関を)廃止する予定」だったが、医療行為は続いていた。委員の一人が「ずっとだまされていたのか。それならだましたもの得ですね」と皮肉ると、厚生局は「結果的にそうですね」と答えていた。」とあります。しかし、実際の議事録では、「結果的にそうですね」と答えたのは「2年間騙され続けたということですか」という質問に対して答えた発言であって、「だましたもの得」を認めたわけではありません。質問者も他の医療機関に説明がつくのかと聞いているだけで、それに対しては「他の医療機関の方に説明というのは、ちょっと私も今の時点では言えないのですけども」としか答えていません。関東信越厚生局神奈川事務所に確認したところ、朝日新聞からの取材は一切なかったということですから、公正な記事の作り方とは言えないと考えます。
これらの事を踏まえ、貴社には公正な報道を希望します。
2014年5月12日
朝日新聞社御中
担当 沢伸也、月舘彩子各記者
神奈川県保険医協会指導監査対策委員会
委員長 入澤 彰仁
保険医療機関等に対する個別指導と監査の違いを理解し、
公正な報道を望みます
5月11日付朝日新聞1面に「診療報酬不適切請求の疑い 厚労省、半数の調査放置 対象、8000医療機関」との記事が掲載されました。一般国民から見れば、何事が起ったのかと驚くに違いありません。記事を見てみると個別指導の選定を行っても実際には指導が半数しか行われていないと批判する内容となっています。そもそも個別指導とはどのようなものかご存知でしょうか。法的には保険医や保険医療機関が厚生労働大臣から受ける行政指導です。そして指導大綱は「保険診療の取り扱い、診療報酬の請求等に関する事項について周知徹底させることを主眼とし、懇切丁寧に行う。」と定めています。つまり、本来は行政指導であり保険診療について懇切丁寧に指導する場なのです。それをはき違え、「調査」を目的として取り調べのような個別指導が一部で行われているのが実態であり、自殺に追い込まれる保険医が後を絶ちません。本来の指導には質問検査権はなく、あくまで任意の行政指導の範囲で実施されるべきことを、「調査放置」と断ずるのは、誤解も甚だしいと指摘せざるを得ません。
また、個別指導は大きく分けて(1)情報提供による個別指導、(2)再指導、(3)各科別の平均点数から1.2倍(病院は1.1倍)を超えた医療機関が選定される個別指導(いわゆる高点数個別指導)があります。記事にもその解説がありますが、(3)については「患者一人あたりの診療報酬請求書が高額で過剰診療の可能性がある」としています。指導大綱には高点数個別指導について過剰診療の可能性があるとはしていません。
そもそも高点数個別指導の選定は医科診療所では、今年度から12区分となりました。これまで内科の区分は透析医療機関が別枠になっていただけで、それ以外の内科は前年度までは一括りでした。今年度からは在宅療養支援診療所が別枠なりましたが、その理由は在宅専門医療機関の平均点数が他の内科と比して高くなり、選定される医療機関のうち在宅専門が多数を占めることになったからです。つまり、医学の進歩や地域医療の実情により、同じ標榜科だからと言って、同じ医療行為をしているとは限りません。たとえば内科であっても内視鏡を専門にしている医療機関であればおのずと平均点数は上がってきます。また、整形外科であってもリハビリテーションの施設基準をクリアし疾患別リハビリを実施しているところとそうでないところでは平均点数の差が出てきます。さらに精神科であれば、精神科デイケア等を実施している医療機関とそうでない医療機関でも平均点数に大きな差が生じます。これは過剰診療ではなく、医療機能の違いによって出てくる平均点数の差であって、「不適切請求」ではありません。
厚生労働省は、個別指導を一律に医療機関数の4%を実施するという目標値を掲げたため、人口が多い都道府県は分母になる対象医療機関数が大きくなり、その件数の個別指導が消化できないことになっているのが実情です。しかし、その中身は、いわゆる情報提供による個別指導や、前年度の個別指導により再指導になっている場合は、実施されており、選定数と差異が出るのは、単なる点数の差だけで選出した高点数個別指導だけです。
このような実態には一切ふれず、あたかも個別指導に選定された8000の医療機関がすべて「不適切請求」の疑いをもたれているというような印象を与える記事の構成は、真実を追求すべきジャーナリズムの本質から逸脱しているといわざるを得ません。
また、記事中に神奈川県の選定委員会の件が触れられています。記事では「10年7月の神奈川県の選定委では、2年連続で個別指導に呼び出されたのに欠席し続け、それでも処分を免れている医療機関が話題になった。欠席理由は「(医療機関を)廃止する予定」だったが、医療行為は続いていた。委員の一人が「ずっとだまされていたのか。それならだましたもの得ですね」と皮肉ると、厚生局は「結果的にそうですね」と答えていた。」とあります。しかし、実際の議事録では、「結果的にそうですね」と答えたのは「2年間騙され続けたということですか」という質問に対して答えた発言であって、「だましたもの得」を認めたわけではありません。質問者も他の医療機関に説明がつくのかと聞いているだけで、それに対しては「他の医療機関の方に説明というのは、ちょっと私も今の時点では言えないのですけども」としか答えていません。関東信越厚生局神奈川事務所に確認したところ、朝日新聞からの取材は一切なかったということですから、公正な記事の作り方とは言えないと考えます。
これらの事を踏まえ、貴社には公正な報道を希望します。