保険医の生活と権利を守り、国民医療の
向上をめざす

神奈川県保険医協会とは

開業医を中心とする保険医の生活と権利を守り、
国民の健康と医療の向上を目指す

TOP > 神奈川県保険医協会とは > 私たちの考え > 医療情報問題ニュース 「医療情報の民間利用が合法に!? 『パーソナルデータ大綱』に意見提出」

医療情報問題ニュース 「医療情報の民間利用が合法に!? 『パーソナルデータ大綱』に意見提出」

 政府のIT戦略本部は2014年6月24日、個人情報保護法の改正のたたき台となる「パーソナルデータの利活用に関する制度改正大綱」を決定。主な改定内容として、個人が特定できないよう個人情報を匿名化すれば、本人の同意がなくても情報の目的外利用や第三者提供を可能にするとしている。政府は7月24日までパブリックコメントを実施、来年の通常国会に改正法案を提出する予定だ。

 パーソナルデータとは、氏名など本人を特定できる「個人情報」と、本人特定が曖昧な情報や加工・匿名化した情報も含む。大綱案では、ビッグデータによる新たな産業創出が経済活性化に寄与するとし、個人情報の範囲の曖昧さやプライバシーに係る社会的批判などを「グレーゾーン」、「利活用の壁」と表現、経済活動の阻害要因と位置付けている。その上で、パーソナルデータのうち個人情報を削除するなど加工・匿名化したデータについては、本人の同意がなくても目的外利用や第三者提供を可能にするとしている。

 情報の加工方法は一律の規制を設けず、民間の自主規制団体がルールを規定。また、データの取扱いを監視する第三者機関を設置することも盛り込まれている。

 人種、信条、社会的身分、前科・前歴などの情報は「機微情報」と位置づけ、原則として利用を禁止。顔や指紋認証データ等の利用は今後の検討課題としている。一方、医療情報は機微情報として明記せず、個人の利益・公益に資するとし、一層の利活用を期待するものと位置付けている。

 これまで医療情報が機微性の高い個人情報であることは自明のこととして広く認識されていたが、大綱はその認識自体を否定した格好だ。2011年に問題となった製薬企業等によるレセプトデータの営業利用など、民間企業による医療情報の利活用が合法化される可能性が出てきた。

 

プライバシー権保障、医療情報は特段の措置を

パブリックコメントを提出

 同大綱に対し、神奈川県保険医協会は7月24日、田辺医療情報部長名でパブリックコメントを提出した。大綱では、個人の特定性を「低減」したパーソナルデータの目的外利用及び第三者提供を、本人同意なしに認めるとしていることに対し、憲法13条が保障するプライバシー権保護を主軸に据え全面的に見直すこと、とりわけ医療情報については別途個別の個人情報保護法制のもと、他の個人情報以上の措置を講じること等を求めた(パブリックコメントの全文は下記参照)。

 


 

内閣官房 IT総合戦略室 パーソナルデータ関連制度担当室 御中

 

「パーソナルデータの利活用に関する制度改正大綱」に対する意見

 

氏名

神奈川県保険医協会 医療情報部 部長 田辺 由紀夫

住所

神奈川県横浜市神奈川区鶴屋町2-23-2 TSプラザビルディング2F

電話

045-313-2111

FAX

045-313-2113

意見

[該当箇所]

 大綱の名称及び内容全般について

[意見内容]

 「パーソナルデータの利活用」を主目的とした大綱の名称及び内容を全面的に見直し、プライバシー権の保護を主軸に据えたものに改めること。

[理由]

 本大綱は個人情報保護法の改正内容を取りまとめたものとされているが、名称及びその内容は「パーソナルデータの利活用の促進」という経済的観点が全面的に強調されており、プライバシー保護の観点が全体的に弱い。個人情報保護法とは本来、憲法13条が保障するプライバシー権、つまり個人の私生活上の事柄をみだりに公開されないことを、法的に保障し実効的に担保するものである。経済活動を優先して個人のプライバシーを軽視することは本末転倒であり、許されるものではない。この間のベネッセの個人情報売買という利活用が表面化、社会問題化するなか、基本的人権を侵害する恐れのある法改正は「百害あって一利なし」である。プライバシーの保護という基本的人権を主軸に据え、より実効性のある法の改正内容を示すことが必要である。

[該当箇所]

 P.7~8 「第2 基本的な考え方」→「Ⅱ 制度改正内容の基本的な枠組み」→「1 本人の同意がなくてもデータの利活用を可能とする枠組みの導入等」

[意見内容]

 個人の特定性(識別性)の消去が完全でない以上、現行の個人情報保護法第2条に定義される「個人情報」に該当するものと考えるべきであり、完全な匿名化が不可能なパーソナルデータについては、本人同意の原則及び目的外利用・第三者提供を禁止すべきである。

 とりわけ、医療情報等については機微性・秘匿性が高く、プライバシー保護の措置を最大限講ずるべきである。この観点から医療情報等の取り扱いについては、別途個別の個人情報保護法の制定を求める。

[理由]

 大綱の該当箇所では「個人の特定性を低減したデータへの加工」とし、個人の特定性(識別性)の「低減」はするが、「完全消去」を要件としていない。このことは、言い換えればパーソナルデータから個人の特定性(識別性)を完全に取り除くことが困難なことを政府が認めているものと理解できる。個人情報保護法第2条では、個人情報の定義として「他の情報と容易に照合することができ、それにより特定の個人を識別することができることとなるものを含む」と規定している。経済優先の観点でパーソナルデータの利活用を促進するために、個人情報保護法の根幹でもある「個人情報」の定義を改正することは、プライバシー権の軽視でしかなく、容認できない。完全な匿名化が不可能なパーソナルデータは、個人情報と同等の取り扱いとすべきである。

 とりわけ医療情報とは、個人の身体、疾病、健康等に関する情報であり、他人に知られたくない、知られることで不利益を生ずる恐れのある「機微情報」として、国民に広く認識されているところであり、JISQ15001:2006でも機微情報として位置付けられている。平成15年に個人情報保護法が成立した際、附帯決議として医療分野の個別的な個人情報保護法制の検討が盛り込まれた。大綱ではこうした認識が甘く、医療情報に対する保護の観点が弱い。医療情報の個益、公益論による利活用に期待する向きもあるが、現状でも疫学研究においては倫理指針等での個人情報の取り扱いは目的の限定など厳格化されており、被験者保護、患者のプライバシー権の保護とのバランスを取りつつ医薬品開発や医学研究など、公益の面での齟齬は来していない。また患者個人の治療に関する情報連携についても、医療現場では患者同意のもと、紙媒体での情報提供からICTへと少しずつ切り替わりつつあり、既に個益に資する利用が進められている。これらを踏まえて、医療情報については特にプライバシー保護の措置を最大限講ずるべきであり、他の個人情報以上の法制管理の下に置き、容易な民間利活用に供すべきではない。別途個別の個人情報保護法の制定を求める。

[該当箇所]

 P.10 「第3 制度設計」→「Ⅱ パーソナルデータの利活用を促進するための枠組みの導入等」→「1 個人が特定される可能性を低減したデータの取り扱い」

[意見内容]

 パーソナルデータの利活用については、個人の特定性の完全消去を要件とすること。

[理由]

 前述のとおり、個人情報保護法第2条では、個人情報の定義として「他の情報と容易に照合することができ、それにより特定の個人を識別することができることとなるものを含む」と規定している。経済優先の観点でパーソナルデータの利活用を促進するために、個人情報保護法の根幹でもある「個人情報」の定義を改正することは、プライバシー権の軽視でしかなく、容認できない。個人の特定性の完全消去が不可能なパーソナルデータは、個人情報と同等の取り扱いとすべきである。

該当箇所]

 P.11 「第3 制度設計」→「Ⅲ 基本的な制度の枠組みとこれを補完する民間の自主的な取り組みの活用」→「1 基本的な制度の枠組みに関する規律」→「(2) 機微情報」

[意見内容]

 個人の疾病、健康等に関する情報(以下「医療等情報」)については、機微情報として明確に位置づけ、明記すること。

[理由]

 前述のとおり、医療等情報は個人の身体、疾病、健康等に関する情報であり、他人に知られたくない、知られることで不利益を生ずる恐れのある「機微情報」として、国民に広く認識されているところであり、JISQ15001:2006でも機微情報として位置付けられている。しかし大綱の該当箇所には、医療等情報の記述がなく、認識の甘さが目立つ。医療等情報を機微情報として明確に位置づける必要がある。

[該当箇所]

 P.13~14 「第3 制度設計」→「Ⅳ 第三者機関の体制整備等による実効性ある制度執行の確保」

[意見内容]

 第三者機関については、公正且つ透明性を担保するためにも、各省庁、行政機関、民間企業等から独立した三条委員会として設立すること。また第三者機関の設立に関しては、人員、規模など十分な体制の構築を図ること。

[理由]

 大綱の該当箇所では、各省庁、各行政機関、民間企業等との関係性について曖昧な表記が多い。これでは、公正・透明性の担保という点では弱く、国民の信頼を得るに足らない。第三者機関は独立性の高い三条委員会として設立すべきである。

 また、第三者機関の担う業務範囲は多岐に渡るとともに非常に重要なものであることから、厳格かつ実効性の高い運営が行われるよう、十分な体制を構築すべきである。

 政府のIT戦略本部は2014年6月24日、個人情報保護法の改正のたたき台となる「パーソナルデータの利活用に関する制度改正大綱」を決定。主な改定内容として、個人が特定できないよう個人情報を匿名化すれば、本人の同意がなくても情報の目的外利用や第三者提供を可能にするとしている。政府は7月24日までパブリックコメントを実施、来年の通常国会に改正法案を提出する予定だ。

 パーソナルデータとは、氏名など本人を特定できる「個人情報」と、本人特定が曖昧な情報や加工・匿名化した情報も含む。大綱案では、ビッグデータによる新たな産業創出が経済活性化に寄与するとし、個人情報の範囲の曖昧さやプライバシーに係る社会的批判などを「グレーゾーン」、「利活用の壁」と表現、経済活動の阻害要因と位置付けている。その上で、パーソナルデータのうち個人情報を削除するなど加工・匿名化したデータについては、本人の同意がなくても目的外利用や第三者提供を可能にするとしている。

 情報の加工方法は一律の規制を設けず、民間の自主規制団体がルールを規定。また、データの取扱いを監視する第三者機関を設置することも盛り込まれている。

 人種、信条、社会的身分、前科・前歴などの情報は「機微情報」と位置づけ、原則として利用を禁止。顔や指紋認証データ等の利用は今後の検討課題としている。一方、医療情報は機微情報として明記せず、個人の利益・公益に資するとし、一層の利活用を期待するものと位置付けている。

 これまで医療情報が機微性の高い個人情報であることは自明のこととして広く認識されていたが、大綱はその認識自体を否定した格好だ。2011年に問題となった製薬企業等によるレセプトデータの営業利用など、民間企業による医療情報の利活用が合法化される可能性が出てきた。

 

プライバシー権保障、医療情報は特段の措置を

パブリックコメントを提出

 同大綱に対し、神奈川県保険医協会は7月24日、田辺医療情報部長名でパブリックコメントを提出した。大綱では、個人の特定性を「低減」したパーソナルデータの目的外利用及び第三者提供を、本人同意なしに認めるとしていることに対し、憲法13条が保障するプライバシー権保護を主軸に据え全面的に見直すこと、とりわけ医療情報については別途個別の個人情報保護法制のもと、他の個人情報以上の措置を講じること等を求めた(パブリックコメントの全文は下記参照)。

 


 

内閣官房 IT総合戦略室 パーソナルデータ関連制度担当室 御中

 

「パーソナルデータの利活用に関する制度改正大綱」に対する意見

 

氏名

神奈川県保険医協会 医療情報部 部長 田辺 由紀夫

住所

神奈川県横浜市神奈川区鶴屋町2-23-2 TSプラザビルディング2F

電話

045-313-2111

FAX

045-313-2113

意見

[該当箇所]

 大綱の名称及び内容全般について

[意見内容]

 「パーソナルデータの利活用」を主目的とした大綱の名称及び内容を全面的に見直し、プライバシー権の保護を主軸に据えたものに改めること。

[理由]

 本大綱は個人情報保護法の改正内容を取りまとめたものとされているが、名称及びその内容は「パーソナルデータの利活用の促進」という経済的観点が全面的に強調されており、プライバシー保護の観点が全体的に弱い。個人情報保護法とは本来、憲法13条が保障するプライバシー権、つまり個人の私生活上の事柄をみだりに公開されないことを、法的に保障し実効的に担保するものである。経済活動を優先して個人のプライバシーを軽視することは本末転倒であり、許されるものではない。この間のベネッセの個人情報売買という利活用が表面化、社会問題化するなか、基本的人権を侵害する恐れのある法改正は「百害あって一利なし」である。プライバシーの保護という基本的人権を主軸に据え、より実効性のある法の改正内容を示すことが必要である。

[該当箇所]

 P.7~8 「第2 基本的な考え方」→「Ⅱ 制度改正内容の基本的な枠組み」→「1 本人の同意がなくてもデータの利活用を可能とする枠組みの導入等」

[意見内容]

 個人の特定性(識別性)の消去が完全でない以上、現行の個人情報保護法第2条に定義される「個人情報」に該当するものと考えるべきであり、完全な匿名化が不可能なパーソナルデータについては、本人同意の原則及び目的外利用・第三者提供を禁止すべきである。

 とりわけ、医療情報等については機微性・秘匿性が高く、プライバシー保護の措置を最大限講ずるべきである。この観点から医療情報等の取り扱いについては、別途個別の個人情報保護法の制定を求める。

[理由]

 大綱の該当箇所では「個人の特定性を低減したデータへの加工」とし、個人の特定性(識別性)の「低減」はするが、「完全消去」を要件としていない。このことは、言い換えればパーソナルデータから個人の特定性(識別性)を完全に取り除くことが困難なことを政府が認めているものと理解できる。個人情報保護法第2条では、個人情報の定義として「他の情報と容易に照合することができ、それにより特定の個人を識別することができることとなるものを含む」と規定している。経済優先の観点でパーソナルデータの利活用を促進するために、個人情報保護法の根幹でもある「個人情報」の定義を改正することは、プライバシー権の軽視でしかなく、容認できない。完全な匿名化が不可能なパーソナルデータは、個人情報と同等の取り扱いとすべきである。

 とりわけ医療情報とは、個人の身体、疾病、健康等に関する情報であり、他人に知られたくない、知られることで不利益を生ずる恐れのある「機微情報」として、国民に広く認識されているところであり、JISQ15001:2006でも機微情報として位置付けられている。平成15年に個人情報保護法が成立した際、附帯決議として医療分野の個別的な個人情報保護法制の検討が盛り込まれた。大綱ではこうした認識が甘く、医療情報に対する保護の観点が弱い。医療情報の個益、公益論による利活用に期待する向きもあるが、現状でも疫学研究においては倫理指針等での個人情報の取り扱いは目的の限定など厳格化されており、被験者保護、患者のプライバシー権の保護とのバランスを取りつつ医薬品開発や医学研究など、公益の面での齟齬は来していない。また患者個人の治療に関する情報連携についても、医療現場では患者同意のもと、紙媒体での情報提供からICTへと少しずつ切り替わりつつあり、既に個益に資する利用が進められている。これらを踏まえて、医療情報については特にプライバシー保護の措置を最大限講ずるべきであり、他の個人情報以上の法制管理の下に置き、容易な民間利活用に供すべきではない。別途個別の個人情報保護法の制定を求める。

[該当箇所]

 P.10 「第3 制度設計」→「Ⅱ パーソナルデータの利活用を促進するための枠組みの導入等」→「1 個人が特定される可能性を低減したデータの取り扱い」

[意見内容]

 パーソナルデータの利活用については、個人の特定性の完全消去を要件とすること。

[理由]

 前述のとおり、個人情報保護法第2条では、個人情報の定義として「他の情報と容易に照合することができ、それにより特定の個人を識別することができることとなるものを含む」と規定している。経済優先の観点でパーソナルデータの利活用を促進するために、個人情報保護法の根幹でもある「個人情報」の定義を改正することは、プライバシー権の軽視でしかなく、容認できない。個人の特定性の完全消去が不可能なパーソナルデータは、個人情報と同等の取り扱いとすべきである。

該当箇所]

 P.11 「第3 制度設計」→「Ⅲ 基本的な制度の枠組みとこれを補完する民間の自主的な取り組みの活用」→「1 基本的な制度の枠組みに関する規律」→「(2) 機微情報」

[意見内容]

 個人の疾病、健康等に関する情報(以下「医療等情報」)については、機微情報として明確に位置づけ、明記すること。

[理由]

 前述のとおり、医療等情報は個人の身体、疾病、健康等に関する情報であり、他人に知られたくない、知られることで不利益を生ずる恐れのある「機微情報」として、国民に広く認識されているところであり、JISQ15001:2006でも機微情報として位置付けられている。しかし大綱の該当箇所には、医療等情報の記述がなく、認識の甘さが目立つ。医療等情報を機微情報として明確に位置づける必要がある。

[該当箇所]

 P.13~14 「第3 制度設計」→「Ⅳ 第三者機関の体制整備等による実効性ある制度執行の確保」

[意見内容]

 第三者機関については、公正且つ透明性を担保するためにも、各省庁、行政機関、民間企業等から独立した三条委員会として設立すること。また第三者機関の設立に関しては、人員、規模など十分な体制の構築を図ること。

[理由]

 大綱の該当箇所では、各省庁、各行政機関、民間企業等との関係性について曖昧な表記が多い。これでは、公正・透明性の担保という点では弱く、国民の信頼を得るに足らない。第三者機関は独立性の高い三条委員会として設立すべきである。

 また、第三者機関の担う業務範囲は多岐に渡るとともに非常に重要なものであることから、厳格かつ実効性の高い運営が行われるよう、十分な体制を構築すべきである。