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2020/2/7 歯科部会長談話 「『金銀パラジウム合金価格問題』 厚労省の無為無策に断固抗議する」
「金銀パラジウム合金価格問題」
厚労省の無為無策に断固抗議する
神奈川県保険医協会
歯科部会長 馬場 一郎
歯科治療に用いられる歯科鋳造用金銀パラジウム合金(金パラ)の市場価格がかつてないほど高騰し続けている。金パラは金属歯冠修復物やブリッジのポンティック、有床義歯の鉤や鋳造バーの材料として幅広く用いられる特定保険医療材料だ。
歯科医院は金パラを製品として市場価格で購入し、歯科技工所へ製作を依頼する(または院内技工で製作する)。一方で、金パラは診療報酬上で告示価格が定められており、この告示価格をもとに診療報酬上の材料料が決定する。
問題になるのは、前述の金パラの市場価格と告示価格に大きな乖離があり、価格変動が大きい金パラ市場価格が保険点数である材料料へ適正に反映されていないことだ。金パラの市場価格は日々変動しているが、告示価格は2年に一度の基準材料価格改定(前年の特定保険医療材料価格調査(調査結果は非公表)に基づく改定)と半年に1回の随時改定(数カ月前一定期間の素材価格の市場動向を勘案して改定(金パラ市場価格は反映されていない))で変更される。ただし、随時改定については素材価格の「変動幅」が±5%の範囲内であれば改定されない。結局のところ告示価格は市場価格の「後追い」にならざるを得ない。また、この制度上、市場価格が上がり続ければ、いつまでも告示価格は市場価格に追いつけないことになる。
2019年10月改定により金パラ告示価格(消費税及び地方消費税に相当する額を含む)は1g : 1,458円から1,675円へ改定された。一般的に取引される単位の30g当りでみると50,250円(消費税相当額を含む)となる。しかし、改定後も金パラ市場価格は上昇し続けており、乖離幅が広がっているのが現状だ。全国保険医団体連合会・保険医協会の全国実勢価格調査では2020年1月の金パラ仕入れ平均価格は77,571円(税込)となり、公定価格との差額は27,321円にものぼる。1月30日時点で30g : 91,971円(税込)になっている地域もある。例えばこの価格の金パラ3gを使用して大臼歯全部金属冠(FMC)を作製したとすると、金パラの費用は9,197円。一方でFMCの保険点数は1,044点(保険材料料590点+保険技術料454点)となっており、保険材料料としては5,900円となる。つまり、このFMC作製のケースでは材料料で3,297円の赤字が生じてしまう。さらに、技工所に支払う技工料が発生することも考慮すると、医療機関として人件費を賄うこともままならないことになる。ただでさえ診療報酬のマイナス改定が続く中、金パラを用いた金属歯冠修復物等を作製すればするほど医療機関としての赤字が増大することになり、医院経営が圧迫されてしまっている。もはや医療現場の経営努力で解決出来るラインを超え、「緊急事態」に至っている。言うまでも無く診療報酬は「公定価格」であり、かつ保険で使用できる材料は限られている。それにも関わらず、歯科医療機関が材料の市場価格に振り回され、「赤字」が生じてしまう制度そのものに問題があると言わざるを得ない。医院経営の圧迫は歯科医療の質の低下につながり、結果、患者・国民の不利益につながる。
この問題について、厚労省は無策だったと言わざるを得ない。責任を持って迅速に問題解決することをここに求める。
2020年2月7日
「金銀パラジウム合金価格問題」
厚労省の無為無策に断固抗議する
神奈川県保険医協会
歯科部会長 馬場 一郎
歯科治療に用いられる歯科鋳造用金銀パラジウム合金(金パラ)の市場価格がかつてないほど高騰し続けている。金パラは金属歯冠修復物やブリッジのポンティック、有床義歯の鉤や鋳造バーの材料として幅広く用いられる特定保険医療材料だ。
歯科医院は金パラを製品として市場価格で購入し、歯科技工所へ製作を依頼する(または院内技工で製作する)。一方で、金パラは診療報酬上で告示価格が定められており、この告示価格をもとに診療報酬上の材料料が決定する。
問題になるのは、前述の金パラの市場価格と告示価格に大きな乖離があり、価格変動が大きい金パラ市場価格が保険点数である材料料へ適正に反映されていないことだ。金パラの市場価格は日々変動しているが、告示価格は2年に一度の基準材料価格改定(前年の特定保険医療材料価格調査(調査結果は非公表)に基づく改定)と半年に1回の随時改定(数カ月前一定期間の素材価格の市場動向を勘案して改定(金パラ市場価格は反映されていない))で変更される。ただし、随時改定については素材価格の「変動幅」が±5%の範囲内であれば改定されない。結局のところ告示価格は市場価格の「後追い」にならざるを得ない。また、この制度上、市場価格が上がり続ければ、いつまでも告示価格は市場価格に追いつけないことになる。
2019年10月改定により金パラ告示価格(消費税及び地方消費税に相当する額を含む)は1g : 1,458円から1,675円へ改定された。一般的に取引される単位の30g当りでみると50,250円(消費税相当額を含む)となる。しかし、改定後も金パラ市場価格は上昇し続けており、乖離幅が広がっているのが現状だ。全国保険医団体連合会・保険医協会の全国実勢価格調査では2020年1月の金パラ仕入れ平均価格は77,571円(税込)となり、公定価格との差額は27,321円にものぼる。1月30日時点で30g : 91,971円(税込)になっている地域もある。例えばこの価格の金パラ3gを使用して大臼歯全部金属冠(FMC)を作製したとすると、金パラの費用は9,197円。一方でFMCの保険点数は1,044点(保険材料料590点+保険技術料454点)となっており、保険材料料としては5,900円となる。つまり、このFMC作製のケースでは材料料で3,297円の赤字が生じてしまう。さらに、技工所に支払う技工料が発生することも考慮すると、医療機関として人件費を賄うこともままならないことになる。ただでさえ診療報酬のマイナス改定が続く中、金パラを用いた金属歯冠修復物等を作製すればするほど医療機関としての赤字が増大することになり、医院経営が圧迫されてしまっている。もはや医療現場の経営努力で解決出来るラインを超え、「緊急事態」に至っている。言うまでも無く診療報酬は「公定価格」であり、かつ保険で使用できる材料は限られている。それにも関わらず、歯科医療機関が材料の市場価格に振り回され、「赤字」が生じてしまう制度そのものに問題があると言わざるを得ない。医院経営の圧迫は歯科医療の質の低下につながり、結果、患者・国民の不利益につながる。
この問題について、厚労省は無策だったと言わざるを得ない。責任を持って迅速に問題解決することをここに求める。
2020年2月7日