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2021/8/13 政策部長談話「オンライン診療『初診』のなし崩し解禁に警鐘を鳴らす 検証もエビデンスもない政策展開は果たして患者のためなのか」

オンライン診療「初診」のなし崩し解禁に警鐘を鳴らす
検証もエビデンスもない政策展開は果たして患者のためなのか

 

神奈川県保険医協会

政策部長  磯崎 哲男


 

緊急避難措置の最中、オンライン「初診」の恒久化が闖入(ちんにゅう)する不思議

 コロナ禍、緊急避難的に初診からのオンライン診療が認められている。これは感染リスクと受診自粛のリスクを考慮した、感染収束までの時限的特例的措置である。この措置は3か月毎に検証をし、その継続の可否を判断している。ところが感染収束もせず、エビデンスの提示もないまま、初診からのオンライン診療の恒久化が、突如、三大臣合意となり、規制改革実施計画、骨太方針2021に盛られ、規定路線となっている。患者需要の実態は極僅少であり、オンライン診療「初診」の恒久化に拘泥する政府の姿勢は強引、奇異である。臨床現場と乖離した商機を狙った構想も蠢いている。われわれは、医療の混乱を憂慮し、拙速を改め限度・限界を踏まえた冷静な議論とすべきと考え、強く警鐘をする。

 

オンライン診療「初診」、緊急時でも全体の0.18

 オンライン診療は、通院困難者、医療過疎地、在宅医療などで有用性はあり、全否定はしていない。ただ、対面診療が問診、視診、触診、聴打診、理学所見、検査で、診断を確定し治療するプロセスを取るのと違い、オンライン診療は問診と視診の一部となる。限度・限界があり、対面診療の「代替」とはならず、「対面診療の補完」を超えない。「初診」からの適用は安全性・信頼性の点で難がある。

 実際に、コロナ禍で昨年4月からとられた緊急避難措置では、電話やオンライン診療等の情報通信機器を用いた診療で初診から実施した医療機関は、全体の0.71%(昨年度平均)に過ぎない。しかもその実施診療件数のうちオンライン診療は25.0%(昨年度平均)で、殆どは電話診療である。単純推計で全体の0.18%(0.71%×25.0%)しか、オンライン診療「初診」はない(2021.5.31「第15回オンライン診療の適切な実施に関する指針の見直しに関する検討会」資料より算出。以下同様)。

 米国研究製薬工業協会(PhRMA)が今年218日に公表した、「コロナ禍における健康・医療に関する意識・実態調査」では、患者(月2回以上かつ1年以上通院)に対し通院方法の変化を尋ねたところ、「変えていない」が91.7%であり、「オンライン診療に変えた」は僅かに3.7%でしかない。

 「有事」でさえ患者需要が僅少なオンライン診療「初診」は、「平時」では推して知るべし、である。

 

首相の指示で、初診からのオンライン診療の「なし崩し」恒久化へ

 緊急避難的に認められている初診からのオンライン診療は、昨年410日の医政局医事課の事務連絡「新型コロナウイルス感染症の拡大に際しての電話や情報通信機器を用いた診療等の時限的・特例的な取扱いについて」によっている。これは①電話や②ZoomSkype等のテレビ電話「汎用システム」、③オンライン診療の「専用システム」の、いずれかを用い「初診」からの「診療」を認めたものである。ただ麻薬や向精神薬の処方は禁じ、診断や処方が困難な場合は対面診療が促されている。

 しかし「受診歴のない患者」の診療を認めている。処方7日間上限、抗悪性腫瘍剤や免疫抑制剤等の処方は禁じているが、再診以降の非対面診療も認めており、リスクが大きく対面診療の原則を逸脱している。医政局の事務連絡でも診療の不十分性や患者のなりすまし等、問題性認識は示されている。

 この緊急避難措置は、「有事」限定である。感染収束後の「平時」には「廃止」となり、対面診療が初診の原則となる。いまは「有事」限定の「時限的」枠内でのオンライン診療の規制緩和でしかない。

 これが恒久措置へと向かっている経緯はこうである。緊急措置に闖入する形で、初診からのオンライン診療の「恒久化」が、昨年610日の国家戦略特別区域諮問会議で検討開始。714日の経団連の提言を経、916日の菅首相の就任時の「オンライン診療の恒久化」指示で大きく動き、108日の三大臣合意で「安全性と信頼性をベースに、初診を含め原則解禁する」に至る。112日の厚労省の検討会で追認し、今後の方向性として「原則解禁」が確認されルール作りの議論となっている。

 

「受診歴のない患者」のオンライン初診を医療現場は忌避 「有事」での実施さえ0.09

 オンライン診療の恒久化のルール作りは、「初診」からの適用は当然のこととなっており、「受診歴のない患者」をどう合法化していくかが焦点になっている。緊急措置をどれだけ恒久措置に組み込むかである。そのルール作りは「オンライン診療の適切な実施に関する指針の見直しに関する検討会」(以下、「検討会」)が担い、①緊急避難措置の検証と、②恒久措置の設計を平行論議している。

 そもそも、「平時」において、オンライン診療を緊急時に初診で適用することは認められている。これが、「普段使い」「日常診療」で、「初診」から適用となることは、診療情報の取得の点では先述の通り限界があり問題である。「受診歴」があっても、定期通院の患者ではなく、病状変化があっての「初診」であり、日常診療に組み入れ、「標準」とするのは無理がある。既に触れたように「有事」でも、電話・情報機器での初診は全体の0.71%、オンライン診療は0.18%に過ぎない。このことは臨床現場の医学的判断による証左でもある。

 「受診歴のない患者」の受診はどうか。これも検討会での緊急避難措置の検証結果が物語っている。初診からの実施医療機関は全体の0.71%で、受診歴のない患者へ実施した医療機関は0.37%に過ぎない。オンライン診療で受診歴のない患者に初診を行った医療機関は0.09%と極僅少である。

 診療件数も電話・情報機器で初診から実施した医療機関の月平均の該当患者数は9.6件と少ない。受診歴のない患者はその約半分なので4.8件。うちオンライン診療は約1/4なので1.2件に過ぎない。

 

検証で露呈する「違反」は依然解消されず リピーター率3割

 検証結果は、それだけにとどまらない。「違反例」が3か月毎に報告されているが、直近データの今年13月期で298件ある。当初(昨年46月期)の714件から減ったものの、以降の四半期は300件程度で推移しており、最も多いのは、受診歴のない患者(基礎疾患の情報がない場合)への限度7日を超えた処方で、7割を占める。初診からの麻薬・向精神薬の処方や、受診歴のない患者へのハイリスク薬の処方も生じている。これら違反例の7割は、新規の医療機関によるものであり、違反は広がっている。また3割は"再犯"である。これら要件違反へは都道府県からの厳重な指導と追加調査報告が国から依頼されているものの、解消はされていない。恒久化された際に拡大していく危険も孕む。オンライン診療では必須の研修がなされていないことも「検討会」では問題とされている。

 

医療界は慎重論が大勢 医学会連合がネガティブリスト公表

 「初診」からのオンライン診療の恒久化に関し、61日に日本医学会連合は「オンライン診療の初診に関する提言」を公表。「問診と画面越しの動画のみで診断を確定することができる疾患はほとんどない」として、「初診のオンライン診療はかかりつけの医師(背景の分かっている患者に対して行う場合のみ)の初診からのオンライン診療が原則」とした。その上で、オンライン診療については全例、最初に症状の評価を行い、必要なときは対面診療に切り替えることが必要としている。また「オンライン診療の初診に適さない症状・状態」を内科系など12の診療系で解説。抗悪性腫瘍薬など「オンライン診療の初診投与で十分な検討が必要な薬剤」も整理し記載している。日医はじめ医療界は慎重姿勢を崩しておらず、初診適用の際の「かかりつけ医」での実施は大原則と釘をさし、「解決困難な要因で医療機関へのアクセスが制限されている場合に対面診療を補完するもの」と強調している。

 「検討会」では、「受診歴がない患者」について、どのような情報があれば初診からのオンライン診療を可能とするかの議論に比重が移っている。規制改革実施計画では「かかりつけ医以外」が別途、オンライン面談で患者の医療履歴、基礎疾患などの情報把握をし、医師・患者双方の合意で初診からのオンライン診療を認める方向が示されている。つまり、かかりつけ医以外が「オンライン健康医療相談」を行い、そのまま途中から「オンライン診療」への切り替えが可能となる。630日の「検討会」ではこの方向が確認され詳細を詰めて、秋をめどに「オンライン診療の指針改定」の予定である。

 

医療現場へ混乱をもたらす平時のオンライン診療「初診」の導入は再考を

 初診からのオンライン診療は①かかりつけ医、②かかりつけ医から情報提供を受けた「かかりつけ医以外」(専門医等)、③診療連携のない「かかりつけ医以外」(企業的な専従実施)となる。「かかりつけ医」を持つことを説き、「忙しい勤労世代がオンライン診療を活用したいというのは自然の流れ」と厚労省幹部は吹聴するが、病気がなければ受診して「かかりつけ医」を持つことはなく、安全性・信頼性のある受診は対面診療であり、論理的にも倒錯している。企業は「健康経営」と称し、従業員への健康投資が生産性向上をもたらすとし受診勧奨に力を入れ、厚労省は治療と職業生活両立のガイドラインを示し、受診勧奨と受診のための時間単位の有給休暇の導入を提唱してきた。矛盾している。

 受診のため勤労世代の休暇取得が容易となる環境整備が本道である。実はオンライン診療は通常診療の合間の休診時間等に対応し労働強化となる。医師の働き方改革に逆行する盲点も内在している。

 昨年7月、ソフトバンクは医師などの医療職が医療・健康相談に常時対応し受診・投薬につなげるオンライン健康医療相談サービス「HELPO」を開始した。オンライン診療・服薬指導、処方配送を一体的に扱うプラットフォームの構築を構想しており、他企業での皮算用の類例は他にもある。

 オンライン診療の出自は規制改革推進会議の投資等ワーキンググループであり、この専用システム企業の株主の多くは大手企業である。関連銘柄7社の株価が株式情報webサイトで注視されてもいる。

オンライン診療料などの診療報酬の点数水準も、改定論議として焦点が当てられているが、この施設基準の届出施設は全体で7.2%に過ぎない。昨春のコロナ禍対応で上昇したが実施施設数ではない。執拗に保険点数増で患者負担が軽減すると専用システム企業が喧伝するが、これは指南する別途徴収の情報機器の運用費用への上乗せ自費分が保険点数に代替する意であり、現状運営にも疑義がある。

 われわれは、医療に混乱を来す、オンライン診療の初診適用の恒久化の拙速を改めて警鐘する。

2021年8月13日

 


 

【参考】神奈川県保険医協会・政策部作成

 

オンライン診療料の届出医療機関数割合

20210813danwa-01.jpg

* 全国各地方厚生局「届出受理医療機関名簿(都道府県別)」、「コード内容別医療機関一覧表(都道府県別)」より、逐次集計作業し作成

 

時限的・特例的な取扱いに対応する医療機関の数(令和2年4月~令和3年4月)

電話や情報通信機器を用いた診療を初診から実施したとして報告のあった医療機関数

及び受診歴のない患者に初診から実施したとして報告のあった医療機関数の推移

20210813danwa-02.jpg

* 出典:第15回オンライン診療の適切な実施に関する指針の見直しに関する検討会資料より一部改変

 

オンライン診療「初診」のなし崩し解禁に警鐘を鳴らす
検証もエビデンスもない政策展開は果たして患者のためなのか

 

神奈川県保険医協会

政策部長  磯崎 哲男


 

緊急避難措置の最中、オンライン「初診」の恒久化が闖入(ちんにゅう)する不思議

 コロナ禍、緊急避難的に初診からのオンライン診療が認められている。これは感染リスクと受診自粛のリスクを考慮した、感染収束までの時限的特例的措置である。この措置は3か月毎に検証をし、その継続の可否を判断している。ところが感染収束もせず、エビデンスの提示もないまま、初診からのオンライン診療の恒久化が、突如、三大臣合意となり、規制改革実施計画、骨太方針2021に盛られ、規定路線となっている。患者需要の実態は極僅少であり、オンライン診療「初診」の恒久化に拘泥する政府の姿勢は強引、奇異である。臨床現場と乖離した商機を狙った構想も蠢いている。われわれは、医療の混乱を憂慮し、拙速を改め限度・限界を踏まえた冷静な議論とすべきと考え、強く警鐘をする。

 

オンライン診療「初診」、緊急時でも全体の0.18

 オンライン診療は、通院困難者、医療過疎地、在宅医療などで有用性はあり、全否定はしていない。ただ、対面診療が問診、視診、触診、聴打診、理学所見、検査で、診断を確定し治療するプロセスを取るのと違い、オンライン診療は問診と視診の一部となる。限度・限界があり、対面診療の「代替」とはならず、「対面診療の補完」を超えない。「初診」からの適用は安全性・信頼性の点で難がある。

 実際に、コロナ禍で昨年4月からとられた緊急避難措置では、電話やオンライン診療等の情報通信機器を用いた診療で初診から実施した医療機関は、全体の0.71%(昨年度平均)に過ぎない。しかもその実施診療件数のうちオンライン診療は25.0%(昨年度平均)で、殆どは電話診療である。単純推計で全体の0.18%(0.71%×25.0%)しか、オンライン診療「初診」はない(2021.5.31「第15回オンライン診療の適切な実施に関する指針の見直しに関する検討会」資料より算出。以下同様)。

 米国研究製薬工業協会(PhRMA)が今年218日に公表した、「コロナ禍における健康・医療に関する意識・実態調査」では、患者(月2回以上かつ1年以上通院)に対し通院方法の変化を尋ねたところ、「変えていない」が91.7%であり、「オンライン診療に変えた」は僅かに3.7%でしかない。

 「有事」でさえ患者需要が僅少なオンライン診療「初診」は、「平時」では推して知るべし、である。

 

首相の指示で、初診からのオンライン診療の「なし崩し」恒久化へ

 緊急避難的に認められている初診からのオンライン診療は、昨年410日の医政局医事課の事務連絡「新型コロナウイルス感染症の拡大に際しての電話や情報通信機器を用いた診療等の時限的・特例的な取扱いについて」によっている。これは①電話や②ZoomSkype等のテレビ電話「汎用システム」、③オンライン診療の「専用システム」の、いずれかを用い「初診」からの「診療」を認めたものである。ただ麻薬や向精神薬の処方は禁じ、診断や処方が困難な場合は対面診療が促されている。

 しかし「受診歴のない患者」の診療を認めている。処方7日間上限、抗悪性腫瘍剤や免疫抑制剤等の処方は禁じているが、再診以降の非対面診療も認めており、リスクが大きく対面診療の原則を逸脱している。医政局の事務連絡でも診療の不十分性や患者のなりすまし等、問題性認識は示されている。

 この緊急避難措置は、「有事」限定である。感染収束後の「平時」には「廃止」となり、対面診療が初診の原則となる。いまは「有事」限定の「時限的」枠内でのオンライン診療の規制緩和でしかない。

 これが恒久措置へと向かっている経緯はこうである。緊急措置に闖入する形で、初診からのオンライン診療の「恒久化」が、昨年610日の国家戦略特別区域諮問会議で検討開始。714日の経団連の提言を経、916日の菅首相の就任時の「オンライン診療の恒久化」指示で大きく動き、108日の三大臣合意で「安全性と信頼性をベースに、初診を含め原則解禁する」に至る。112日の厚労省の検討会で追認し、今後の方向性として「原則解禁」が確認されルール作りの議論となっている。

 

「受診歴のない患者」のオンライン初診を医療現場は忌避 「有事」での実施さえ0.09

 オンライン診療の恒久化のルール作りは、「初診」からの適用は当然のこととなっており、「受診歴のない患者」をどう合法化していくかが焦点になっている。緊急措置をどれだけ恒久措置に組み込むかである。そのルール作りは「オンライン診療の適切な実施に関する指針の見直しに関する検討会」(以下、「検討会」)が担い、①緊急避難措置の検証と、②恒久措置の設計を平行論議している。

 そもそも、「平時」において、オンライン診療を緊急時に初診で適用することは認められている。これが、「普段使い」「日常診療」で、「初診」から適用となることは、診療情報の取得の点では先述の通り限界があり問題である。「受診歴」があっても、定期通院の患者ではなく、病状変化があっての「初診」であり、日常診療に組み入れ、「標準」とするのは無理がある。既に触れたように「有事」でも、電話・情報機器での初診は全体の0.71%、オンライン診療は0.18%に過ぎない。このことは臨床現場の医学的判断による証左でもある。

 「受診歴のない患者」の受診はどうか。これも検討会での緊急避難措置の検証結果が物語っている。初診からの実施医療機関は全体の0.71%で、受診歴のない患者へ実施した医療機関は0.37%に過ぎない。オンライン診療で受診歴のない患者に初診を行った医療機関は0.09%と極僅少である。

 診療件数も電話・情報機器で初診から実施した医療機関の月平均の該当患者数は9.6件と少ない。受診歴のない患者はその約半分なので4.8件。うちオンライン診療は約1/4なので1.2件に過ぎない。

 

検証で露呈する「違反」は依然解消されず リピーター率3割

 検証結果は、それだけにとどまらない。「違反例」が3か月毎に報告されているが、直近データの今年13月期で298件ある。当初(昨年46月期)の714件から減ったものの、以降の四半期は300件程度で推移しており、最も多いのは、受診歴のない患者(基礎疾患の情報がない場合)への限度7日を超えた処方で、7割を占める。初診からの麻薬・向精神薬の処方や、受診歴のない患者へのハイリスク薬の処方も生じている。これら違反例の7割は、新規の医療機関によるものであり、違反は広がっている。また3割は"再犯"である。これら要件違反へは都道府県からの厳重な指導と追加調査報告が国から依頼されているものの、解消はされていない。恒久化された際に拡大していく危険も孕む。オンライン診療では必須の研修がなされていないことも「検討会」では問題とされている。

 

医療界は慎重論が大勢 医学会連合がネガティブリスト公表

 「初診」からのオンライン診療の恒久化に関し、61日に日本医学会連合は「オンライン診療の初診に関する提言」を公表。「問診と画面越しの動画のみで診断を確定することができる疾患はほとんどない」として、「初診のオンライン診療はかかりつけの医師(背景の分かっている患者に対して行う場合のみ)の初診からのオンライン診療が原則」とした。その上で、オンライン診療については全例、最初に症状の評価を行い、必要なときは対面診療に切り替えることが必要としている。また「オンライン診療の初診に適さない症状・状態」を内科系など12の診療系で解説。抗悪性腫瘍薬など「オンライン診療の初診投与で十分な検討が必要な薬剤」も整理し記載している。日医はじめ医療界は慎重姿勢を崩しておらず、初診適用の際の「かかりつけ医」での実施は大原則と釘をさし、「解決困難な要因で医療機関へのアクセスが制限されている場合に対面診療を補完するもの」と強調している。

 「検討会」では、「受診歴がない患者」について、どのような情報があれば初診からのオンライン診療を可能とするかの議論に比重が移っている。規制改革実施計画では「かかりつけ医以外」が別途、オンライン面談で患者の医療履歴、基礎疾患などの情報把握をし、医師・患者双方の合意で初診からのオンライン診療を認める方向が示されている。つまり、かかりつけ医以外が「オンライン健康医療相談」を行い、そのまま途中から「オンライン診療」への切り替えが可能となる。630日の「検討会」ではこの方向が確認され詳細を詰めて、秋をめどに「オンライン診療の指針改定」の予定である。

 

医療現場へ混乱をもたらす平時のオンライン診療「初診」の導入は再考を

 初診からのオンライン診療は①かかりつけ医、②かかりつけ医から情報提供を受けた「かかりつけ医以外」(専門医等)、③診療連携のない「かかりつけ医以外」(企業的な専従実施)となる。「かかりつけ医」を持つことを説き、「忙しい勤労世代がオンライン診療を活用したいというのは自然の流れ」と厚労省幹部は吹聴するが、病気がなければ受診して「かかりつけ医」を持つことはなく、安全性・信頼性のある受診は対面診療であり、論理的にも倒錯している。企業は「健康経営」と称し、従業員への健康投資が生産性向上をもたらすとし受診勧奨に力を入れ、厚労省は治療と職業生活両立のガイドラインを示し、受診勧奨と受診のための時間単位の有給休暇の導入を提唱してきた。矛盾している。

 受診のため勤労世代の休暇取得が容易となる環境整備が本道である。実はオンライン診療は通常診療の合間の休診時間等に対応し労働強化となる。医師の働き方改革に逆行する盲点も内在している。

 昨年7月、ソフトバンクは医師などの医療職が医療・健康相談に常時対応し受診・投薬につなげるオンライン健康医療相談サービス「HELPO」を開始した。オンライン診療・服薬指導、処方配送を一体的に扱うプラットフォームの構築を構想しており、他企業での皮算用の類例は他にもある。

 オンライン診療の出自は規制改革推進会議の投資等ワーキンググループであり、この専用システム企業の株主の多くは大手企業である。関連銘柄7社の株価が株式情報webサイトで注視されてもいる。

オンライン診療料などの診療報酬の点数水準も、改定論議として焦点が当てられているが、この施設基準の届出施設は全体で7.2%に過ぎない。昨春のコロナ禍対応で上昇したが実施施設数ではない。執拗に保険点数増で患者負担が軽減すると専用システム企業が喧伝するが、これは指南する別途徴収の情報機器の運用費用への上乗せ自費分が保険点数に代替する意であり、現状運営にも疑義がある。

 われわれは、医療に混乱を来す、オンライン診療の初診適用の恒久化の拙速を改めて警鐘する。

2021年8月13日

 


 

【参考】神奈川県保険医協会・政策部作成

 

オンライン診療料の届出医療機関数割合

20210813danwa-01.jpg

* 全国各地方厚生局「届出受理医療機関名簿(都道府県別)」、「コード内容別医療機関一覧表(都道府県別)」より、逐次集計作業し作成

 

時限的・特例的な取扱いに対応する医療機関の数(令和2年4月~令和3年4月)

電話や情報通信機器を用いた診療を初診から実施したとして報告のあった医療機関数

及び受診歴のない患者に初診から実施したとして報告のあった医療機関数の推移

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* 出典:第15回オンライン診療の適切な実施に関する指針の見直しに関する検討会資料より一部改変