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2021/10/28 政策部長談話 「歯科材料・金パラの価格改定ルールを考える 『見える化』と『納得感』ある原理原則を」
歯科材料・金パラの価格改定ルールを考える
「見える化」と「納得感」ある原理原則を
神奈川県保険医協会
政策部長 磯崎 哲男
「逆ザヤ」解決へ差益前提の意識改革と対案型議論を
歯科治療で使う歯科材料・金銀パラジウム合金(金パラ)の公定価格が市場価格を下回る「逆ザヤ」解消のため、公定価格決定ルールの根本的な見直しは必須である。現行ルールの弥縫策では差損解消は不可能だ。歯科界の宿願達成へわれわれは現在の中医協の議論に期待をしている。当協会は今年3月、方法論として「超過価格設定&マイナス補正」を提案した。これは薬価と同様に保管損耗等の経営上の余裕幅を確実に担保することを考えた、差益前提の方法である。この方法論を適用するとどうなるかをここに示す。併せて理論値である素材平均価格と市場実勢価格との推移を踏まえた関係式の作成を試み、今後の議論に一石を投じたい。関係方面の議論の促進を強く望むものである。
金パラの市場価格の急騰と公定価格との乖離幅の膨張
図1は、金パラの公定価格と、市場価格、素材価格(=素材金属の平均価格を含有比率で計算した「理論値」)の過去5年間の推移である。一目でわかるように公定価格を市場価格が殆ど上回っている。歯科材料の不採算、「逆ザヤ」である。その乖離幅は20年7月に公定価格が市場価格に接近した一瞬を除き、拡大膨張している。理論値と市場価格はほぼ同様のトレンドを示すが、乖離幅は近年拡大している。20年4月以降の乖離率は16%~11%であり、理論値のほぼ1.16倍が市場価格となっている。
診療報酬改定(20年4月)以降に市場価格は21年5月に最大の1.22倍になったものの、公定価格は1.28倍(理論値は1.27倍)であり、倍率の差はほぼない。問題は乖離幅にある。
20年4月の公定価格は対市場価格の75.8%しかない。つまり乖離幅24.2%、「逆ザヤ」率▲24.2%となる。20年7月に99.2%と近接するが総じて乖離幅は大きく、平均の「逆ザヤ」率は▲15%である。金パラの市場価格が上昇軌道にある際は、乖離幅は埋まらない仕組みとなっている。
金パラの高騰速度への対応に叡智が必須
現行の金パラの公定価格は薬価と同様に、9月の市場価格の加重平均値を基本に、その後の素材貴金属の価格変動分を加味し、消費税分を乗せ、一定幅を加えたものである。「一定幅」の差益を仕組み上、認めている。この一定幅を担保できるよう、当協会は「超過価格設定&マイナス補正」を提案した。これは通常改定の告示価格(基準値)の1.5倍を当初の公定価格とし、半年ごとに基準値に素材貴金属の変動分を乗せ5%以上の乖離がある場合にマイナス補正をするものである。
実際に適用すると、20年4月は3,124円(=2,083円×1.5)となる。20年10月には素材貴金属の変動分445円を基準値2,083円に加えた2,528円が、3,124円の95%値2,968円より小さいので、仮にその差額440円の1/8をマイナス補正とする。公定価格は3,069円(=3,124円-440円/8)となる。
ただ、その次の21年4月へ適用すると市場価格を下回る(∵3,069円の95%値2,916円。基準値に更なる変動分80円を加えた累計2,608円。その差額308円。新たな公定価格は3,069円-308円/8=3,030円<市場価格3,252円)。
経験則的に基準値の1.5倍としたが、高騰速度が速いため、1年単位で基準値に変動分を加え1.5倍し公定価格3,912円(=2,608円×1.5)と仕切りなおすか、当初時点の倍数を1.7~2倍としマイナス補正の手法を検討していくこととなる。歯科材料部分の患者負担低減や解消の叡智も要る。
素材価格の理論値を利用した算出も一つの方法
既に見たように、素材貴金属の理論値の1.16倍が市場価格となっている。金パラは直近告示価格の4%が「一定幅」と認められているので、理論値の1.21倍(=1.16×1.04)を公定価格とするのも一法である。随時改定Ⅱが導入された点も踏まえ、3カ月単位で「直近の理論値×1.21」として改定すれば簡便である。その際の倍数の精緻化や微積分の応用など、算式の検討は議論に値すると思われる。
過日、中医協では来年1月の随時改定Ⅱの実施が見送られた。逆ザヤの解消、公定価格の新ルール策定は急務である。関係方面の真摯な議論と尽力を切に、われわれは求める。
2021年10月28日
【参考資料】
図1 金パラの公定価格、市場価格、素材価格の比較
公定価格と市場価格の乖離幅や充足率、市場価格と素材価格の比
図2 当協会の提案した超価格設定の例
素材価格の変動幅
歯科材料・金パラの価格改定ルールを考える
「見える化」と「納得感」ある原理原則を
神奈川県保険医協会
政策部長 磯崎 哲男
「逆ザヤ」解決へ差益前提の意識改革と対案型議論を
歯科治療で使う歯科材料・金銀パラジウム合金(金パラ)の公定価格が市場価格を下回る「逆ザヤ」解消のため、公定価格決定ルールの根本的な見直しは必須である。現行ルールの弥縫策では差損解消は不可能だ。歯科界の宿願達成へわれわれは現在の中医協の議論に期待をしている。当協会は今年3月、方法論として「超過価格設定&マイナス補正」を提案した。これは薬価と同様に保管損耗等の経営上の余裕幅を確実に担保することを考えた、差益前提の方法である。この方法論を適用するとどうなるかをここに示す。併せて理論値である素材平均価格と市場実勢価格との推移を踏まえた関係式の作成を試み、今後の議論に一石を投じたい。関係方面の議論の促進を強く望むものである。
金パラの市場価格の急騰と公定価格との乖離幅の膨張
図1は、金パラの公定価格と、市場価格、素材価格(=素材金属の平均価格を含有比率で計算した「理論値」)の過去5年間の推移である。一目でわかるように公定価格を市場価格が殆ど上回っている。歯科材料の不採算、「逆ザヤ」である。その乖離幅は20年7月に公定価格が市場価格に接近した一瞬を除き、拡大膨張している。理論値と市場価格はほぼ同様のトレンドを示すが、乖離幅は近年拡大している。20年4月以降の乖離率は16%~11%であり、理論値のほぼ1.16倍が市場価格となっている。
診療報酬改定(20年4月)以降に市場価格は21年5月に最大の1.22倍になったものの、公定価格は1.28倍(理論値は1.27倍)であり、倍率の差はほぼない。問題は乖離幅にある。
20年4月の公定価格は対市場価格の75.8%しかない。つまり乖離幅24.2%、「逆ザヤ」率▲24.2%となる。20年7月に99.2%と近接するが総じて乖離幅は大きく、平均の「逆ザヤ」率は▲15%である。金パラの市場価格が上昇軌道にある際は、乖離幅は埋まらない仕組みとなっている。
金パラの高騰速度への対応に叡智が必須
現行の金パラの公定価格は薬価と同様に、9月の市場価格の加重平均値を基本に、その後の素材貴金属の価格変動分を加味し、消費税分を乗せ、一定幅を加えたものである。「一定幅」の差益を仕組み上、認めている。この一定幅を担保できるよう、当協会は「超過価格設定&マイナス補正」を提案した。これは通常改定の告示価格(基準値)の1.5倍を当初の公定価格とし、半年ごとに基準値に素材貴金属の変動分を乗せ5%以上の乖離がある場合にマイナス補正をするものである。
実際に適用すると、20年4月は3,124円(=2,083円×1.5)となる。20年10月には素材貴金属の変動分445円を基準値2,083円に加えた2,528円が、3,124円の95%値2,968円より小さいので、仮にその差額440円の1/8をマイナス補正とする。公定価格は3,069円(=3,124円-440円/8)となる。
ただ、その次の21年4月へ適用すると市場価格を下回る(∵3,069円の95%値2,916円。基準値に更なる変動分80円を加えた累計2,608円。その差額308円。新たな公定価格は3,069円-308円/8=3,030円<市場価格3,252円)。
経験則的に基準値の1.5倍としたが、高騰速度が速いため、1年単位で基準値に変動分を加え1.5倍し公定価格3,912円(=2,608円×1.5)と仕切りなおすか、当初時点の倍数を1.7~2倍としマイナス補正の手法を検討していくこととなる。歯科材料部分の患者負担低減や解消の叡智も要る。
素材価格の理論値を利用した算出も一つの方法
既に見たように、素材貴金属の理論値の1.16倍が市場価格となっている。金パラは直近告示価格の4%が「一定幅」と認められているので、理論値の1.21倍(=1.16×1.04)を公定価格とするのも一法である。随時改定Ⅱが導入された点も踏まえ、3カ月単位で「直近の理論値×1.21」として改定すれば簡便である。その際の倍数の精緻化や微積分の応用など、算式の検討は議論に値すると思われる。
過日、中医協では来年1月の随時改定Ⅱの実施が見送られた。逆ザヤの解消、公定価格の新ルール策定は急務である。関係方面の真摯な議論と尽力を切に、われわれは求める。
2021年10月28日
【参考資料】
図1 金パラの公定価格、市場価格、素材価格の比較
公定価格と市場価格の乖離幅や充足率、市場価格と素材価格の比
図2 当協会の提案した超価格設定の例
素材価格の変動幅