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2022/4/13 歯科保険診療対策部長声明 「患者さんも歯科医院も悲鳴 『ウクライナ危機』が5月以降の『銀歯』など窓口負担額に影響 『金パラ』価格問題へ、さらなる対応を国へ求めます」

患者さんも歯科医院も悲鳴

「ウクライナ危機」が5月以降の「銀歯」など窓口負担額に影響

「金パラ」価格問題へ、さらなる対応を国へ求めます

 

神奈川県保険医協会

歯科保険診療対策部長 田中 敏章

 


 

 本日、中央社会保険医療協議会(厚労大臣の諮問機関)総会で歯科鋳造用金銀パラジウム合金(金パラ)を含む歯科用貴金属価格の緊急改定が承認されました。これは2月24日、ロシアのウクライナ侵攻に端を発した「ウクライナ危機」によるパラジウム価格急騰、そして金パラの市場価格急騰を受けての緊急改定です。当初は7月実施予定だった随時改定を5月に前倒しした格好となります。金パラは歯科治療における歯冠修復・欠損補綴(銀歯・ブリッジ等)に幅広く用いられる歯科用材料です。当会は3月1日に発表した声明で高騰する金パラ価格問題への対応を国へ求めていたので、今回の有事対応の緊急改定については歓迎したいと思います。しかし、今回の緊急改定で金パラ価格問題が全て解決したわけではありません。4月末までの金パラの告示価格は9万4,470円(30gあたり)。これが55月1日から10万2,390円(30gあたり)となります。しかし、4月11日時点の金パラ市場価格は10万8,900円(A社)。現時点で金パラの市場価格は5月1日以降の告示価格をすでに上回っています。なぜ、国が定める告示価格と市場価格に乖離―いわゆる「逆ザヤ」―が生じるかというと、5月1日からの告示価格は今年1月~3月までの金・銀・パラジウムの各素材価格を参照しているためです。さらに金パラの市場価格が高騰すれば、「逆ザヤ」幅はさらに広がることになります。

 また、この緊急改定は患者さんにも影響を及ぼします。今年5月1日から、金パラを用いた銀歯・ブリッジ関連の窓口負担額も増えることになります。窓口負担3割の患者さんに金パラを用いた銀歯(全部金属冠)を作製し奥歯(大臼歯)にセットした場合の窓口負担額はこの12年間で2倍になっております。これは金パラ価格が上昇を続けているためです。しかし一方で、技術料は変わっていないため、金パラ価格高騰で窓口負担が増えても歯科医院の増収になっているわけではありません。

 患者さん側は窓口負担金額が増え、歯科医療機関では材料料で赤字いわゆる「逆ザヤ」が生じる。これらは制度そのものに矛盾があることに加え、「金パラ」価格高騰に原因があります。歯科医療も社会インフラであり、安心して治療を受けられるのが国民皆保険制度です。患者さんや歯科医院が金パラの市場価格に振り回されるのは問題です。これ以上の窓口負担増は歯科受診抑制や健康格差につながる恐れがあります。

 5月からの銀歯・ブリッジ関連の診療報酬点数及び患者窓口負担額が増える前に、患者窓口負担軽減対策等の有事対応と金パラ価格改定制度の抜本的改善を求めます。

2022年4月13日

 

患者さんも歯科医院も悲鳴

「ウクライナ危機」が5月以降の「銀歯」など窓口負担額に影響

「金パラ」価格問題へ、さらなる対応を国へ求めます

 

神奈川県保険医協会

歯科保険診療対策部長 田中 敏章

 


 

 本日、中央社会保険医療協議会(厚労大臣の諮問機関)総会で歯科鋳造用金銀パラジウム合金(金パラ)を含む歯科用貴金属価格の緊急改定が承認されました。これは2月24日、ロシアのウクライナ侵攻に端を発した「ウクライナ危機」によるパラジウム価格急騰、そして金パラの市場価格急騰を受けての緊急改定です。当初は7月実施予定だった随時改定を5月に前倒しした格好となります。金パラは歯科治療における歯冠修復・欠損補綴(銀歯・ブリッジ等)に幅広く用いられる歯科用材料です。当会は3月1日に発表した声明で高騰する金パラ価格問題への対応を国へ求めていたので、今回の有事対応の緊急改定については歓迎したいと思います。しかし、今回の緊急改定で金パラ価格問題が全て解決したわけではありません。4月末までの金パラの告示価格は9万4,470円(30gあたり)。これが55月1日から10万2,390円(30gあたり)となります。しかし、4月11日時点の金パラ市場価格は10万8,900円(A社)。現時点で金パラの市場価格は5月1日以降の告示価格をすでに上回っています。なぜ、国が定める告示価格と市場価格に乖離―いわゆる「逆ザヤ」―が生じるかというと、5月1日からの告示価格は今年1月~3月までの金・銀・パラジウムの各素材価格を参照しているためです。さらに金パラの市場価格が高騰すれば、「逆ザヤ」幅はさらに広がることになります。

 また、この緊急改定は患者さんにも影響を及ぼします。今年5月1日から、金パラを用いた銀歯・ブリッジ関連の窓口負担額も増えることになります。窓口負担3割の患者さんに金パラを用いた銀歯(全部金属冠)を作製し奥歯(大臼歯)にセットした場合の窓口負担額はこの12年間で2倍になっております。これは金パラ価格が上昇を続けているためです。しかし一方で、技術料は変わっていないため、金パラ価格高騰で窓口負担が増えても歯科医院の増収になっているわけではありません。

 患者さん側は窓口負担金額が増え、歯科医療機関では材料料で赤字いわゆる「逆ザヤ」が生じる。これらは制度そのものに矛盾があることに加え、「金パラ」価格高騰に原因があります。歯科医療も社会インフラであり、安心して治療を受けられるのが国民皆保険制度です。患者さんや歯科医院が金パラの市場価格に振り回されるのは問題です。これ以上の窓口負担増は歯科受診抑制や健康格差につながる恐れがあります。

 5月からの銀歯・ブリッジ関連の診療報酬点数及び患者窓口負担額が増える前に、患者窓口負担軽減対策等の有事対応と金パラ価格改定制度の抜本的改善を求めます。

2022年4月13日