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2022/12/23 理事長談話 「医療現場、患者・国民の双方が望まない『オンライン資格確認の原則義務化』の撤回を強く求める」

医療現場、患者・国民の双方が望まない

「オンライン資格確認の原則義務化」の撤回を強く求める

 

神奈川県保険医協会

理事長  田辺 由紀夫

 


 

 12月21日、23日に中医協総会が開かれ、来年4月からのオンライン資格確認の原則義務化に関して、8月の中医協附帯意見に沿って、やむを得ない事情等によりシステム導入が間に合わない医療機関等に対する経過措置が示され、決定した。約6割の医療機関等がシステム未導入・未稼働である実情等を勘案した対応として一定の評価はするものの、経過措置の対象となる"やむを得ない事情"は、そのほとんどが「システム整備が間に合わない」、「ネットワークの整備が困難」など、物理的な事由に限定されている。

 現在、オン資システムはカードリーダーの起動不全、有効な保険証を無効と表示するエラーなど、深刻なトラブルが多く報告されている。また、昨今頻発する医療機関を狙ったサイバー攻撃への脅威なども重なり、医療現場はデジタル化に対し不安や懸念を抱いている。薬剤情報の閲覧等のメリットに比しても、それを上回るリスクと感じているのだ。こうした医療現場の意識は、当会をはじめ、保団連や全国の保険医協会の会員調査でも明らかとなっており、厚労省にも継続的に伝えたところである。オン資のシステム導入・運用を義務化するのであれば、こうした医療現場の不安の解消は必須条件だと考える。

 それにも関わらず、21日の中医協で示された診療側の資料は、オンライン資格確認推進協議会を構成し、オン資義務化を是認する日医・日歯等の調査結果のみである。保団連や全国の保険医協会・保険医会の調査結果との乖離も散見される。保団連等の調査も資料提示されなければ医療現場の声を正しく反映した議論が出来るはずもない。

 また、数名の中医協委員から「オン資義務化については、ここにいる全員が賛成・推進で一致している」との発言がなされた。全国の保険医協会・保険医会や保団連の会員調査では半数超がオン資義務化に「反対」であり、この点でも中医協委員と医療現場の意識は大きく乖離している。

 中医協では、9割超のカードリーダー申込率だけを切り取って医療機関の整備が進んでいるとの見解を示したが、実態は異なる。保団連調査でも明らかなように、カードリーダーを申し込んだ医療機関の大多数は、必要性を感じていないが「義務化なので仕方なく」、「補助金の申請に間に合わない」など、消極的な理由で申し込んでいるのだ。カードリーダーの申込率に比してシステム導入済み・運用開始の医療機関が圧倒的に少ない実態は、オン資に対する消極的・否定的な医療現場の意識・心情を反映したものと見るべきである。

 更には、オン資の導入・普及の徹底の観点から、「医療情報・システム基盤整備体制充実加算」の来年4月から12月までの時限的な設定として、マイナ保険証での受診については点数を据え置きにする一方で、保険証受診の患者に対する初診時の加算増点と再診時の新設が提案・了承された。これは保険証で受診する患者に対する懲罰的な点数設定としか言いようがなく、国民の受療権を阻害するものである。マイナ保険証の利用が広がらない理由は、患者・国民の多くがメリットを感じていないからに他ならない。お金で国民を振り回す政治手法は厳に慎むべきである。

 いずれにせよ、今回の中医協で決定した経過措置等については、医療現場の実態や心情を十分に反映したものとは言い難く、国民の理解も得られるものではない。我々は、医療現場と患者・国民の双方が望まないオンライン資格確認の原則義務化の撤回を強く求めるとともに、年明け以降も中医協で継続的に議論・検討することを求める。

2022年12月23日

 

医療現場、患者・国民の双方が望まない

「オンライン資格確認の原則義務化」の撤回を強く求める

 

神奈川県保険医協会

理事長  田辺 由紀夫

 


 

 12月21日、23日に中医協総会が開かれ、来年4月からのオンライン資格確認の原則義務化に関して、8月の中医協附帯意見に沿って、やむを得ない事情等によりシステム導入が間に合わない医療機関等に対する経過措置が示され、決定した。約6割の医療機関等がシステム未導入・未稼働である実情等を勘案した対応として一定の評価はするものの、経過措置の対象となる"やむを得ない事情"は、そのほとんどが「システム整備が間に合わない」、「ネットワークの整備が困難」など、物理的な事由に限定されている。

 現在、オン資システムはカードリーダーの起動不全、有効な保険証を無効と表示するエラーなど、深刻なトラブルが多く報告されている。また、昨今頻発する医療機関を狙ったサイバー攻撃への脅威なども重なり、医療現場はデジタル化に対し不安や懸念を抱いている。薬剤情報の閲覧等のメリットに比しても、それを上回るリスクと感じているのだ。こうした医療現場の意識は、当会をはじめ、保団連や全国の保険医協会の会員調査でも明らかとなっており、厚労省にも継続的に伝えたところである。オン資のシステム導入・運用を義務化するのであれば、こうした医療現場の不安の解消は必須条件だと考える。

 それにも関わらず、21日の中医協で示された診療側の資料は、オンライン資格確認推進協議会を構成し、オン資義務化を是認する日医・日歯等の調査結果のみである。保団連や全国の保険医協会・保険医会の調査結果との乖離も散見される。保団連等の調査も資料提示されなければ医療現場の声を正しく反映した議論が出来るはずもない。

 また、数名の中医協委員から「オン資義務化については、ここにいる全員が賛成・推進で一致している」との発言がなされた。全国の保険医協会・保険医会や保団連の会員調査では半数超がオン資義務化に「反対」であり、この点でも中医協委員と医療現場の意識は大きく乖離している。

 中医協では、9割超のカードリーダー申込率だけを切り取って医療機関の整備が進んでいるとの見解を示したが、実態は異なる。保団連調査でも明らかなように、カードリーダーを申し込んだ医療機関の大多数は、必要性を感じていないが「義務化なので仕方なく」、「補助金の申請に間に合わない」など、消極的な理由で申し込んでいるのだ。カードリーダーの申込率に比してシステム導入済み・運用開始の医療機関が圧倒的に少ない実態は、オン資に対する消極的・否定的な医療現場の意識・心情を反映したものと見るべきである。

 更には、オン資の導入・普及の徹底の観点から、「医療情報・システム基盤整備体制充実加算」の来年4月から12月までの時限的な設定として、マイナ保険証での受診については点数を据え置きにする一方で、保険証受診の患者に対する初診時の加算増点と再診時の新設が提案・了承された。これは保険証で受診する患者に対する懲罰的な点数設定としか言いようがなく、国民の受療権を阻害するものである。マイナ保険証の利用が広がらない理由は、患者・国民の多くがメリットを感じていないからに他ならない。お金で国民を振り回す政治手法は厳に慎むべきである。

 いずれにせよ、今回の中医協で決定した経過措置等については、医療現場の実態や心情を十分に反映したものとは言い難く、国民の理解も得られるものではない。我々は、医療現場と患者・国民の双方が望まないオンライン資格確認の原則義務化の撤回を強く求めるとともに、年明け以降も中医協で継続的に議論・検討することを求める。

2022年12月23日