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特定健診問題ニュース 「厚労省、制度設計のずさんさを露呈」

 

特定健診・特定保健指導(08年度開始)、データ集積は08年度から??

厚労省、制度設計のずさんさを露呈

 08年4月より始まる「特定健診・特定保健指導」について、当協会は11月10日、11月30日と2回にわたり厚労省担当課と懇談を行った。厚労省は現行の市町村健診等と比較して、特定健診・特定保健指導が有効であるという十分なエビデンスがないことを認め、「データは08年度から集積していくことになる」と無責任な弁を展開した。

 「特定健診・特定保健指導」は、医療費適正化計画の中長期的目標である「生活習慣病有病者・予備群の25%減少」を達成させるための柱として、08年4月から全保険者に実施が義務付けられる。従来の健診は、“疾病の早期発見・早期治療”を目的としていたが、今後は“生活習慣病有病者及び予備群の抽出・行動変容”へと大きな概念転換がはかられる。各保険者は数値目標を立てることとなっており、達成できない場合はペナルティ(後期高齢者医療制度(※1)への拠出金増額)も用意されている。“メタボリック・シンドローム”への国民的関心が高まる中、国は生活習慣病の自己責任論を浸透させようと躍起だ。

 しかし、特定健診・特定保健指導の実施マニュアル(以下、「プログラム」)をみると、健診内容の簡略化(メタボ偏重の検査項目)、保健指導対象者のスクリーニングの手法とウエスト基準値(男性85cm、女性90cm)への疑義、十分な財源が確保されないままの民間企業への丸投げの懸念、保健指導の手法が未確立?など、制度設計はきわめて杜撰。全国規模の“社会実験”の感が否めない。

 (※1)後期高齢者医療制度

 08年4月より始まる75歳以上の高齢者の独立医療保険制度。県下全市町村が加入する都道府県ごとの「広域連合」が運営主体。保険者は目標値を達成できない場合、広域連合への支援金を加算される。

実現不可能な数値目標 “根拠なし”と認める

 特定健診の目標受診率は80%(初年度は60%)とされているが、現行の自治体健診の平均受診率は40%強。自治体担当者からも「高すぎる」と不安の声が上がっている。受診率を40%から80%まで上げるには、必要となる費用とエネルギーは指数関数的に上昇し、単にヒトとカネを2倍にすればよいという問題ではない。「目標値が達成できるという根拠は」との質問に対し厚労省は、根拠はないことを認めた。本当にこの事業を成功させる気があるのか、疑問である。

目標達成で医療費上昇 “承知している”

 プログラムには「受診率80%」「保健指導率100%」という数値目標は具体的に提示されているが、その達成のためにどれだけの予算と人員が必要となるかは示されていない。さらに、仮に受診率が60%、80%に達すると患者が増え、一時的に医療費は上昇する。この点につき質すと厚労省は、「一時的に(医療費が)上がることは承知している」と回答。しかしプログラムや事業予算、この間示されている医療費推計では、そのことは明示されていない。

「痩せにくい」遺伝的素因 考慮せず

 メタボ以外の疾病の発見に繋がる検査項目をどうするのかという当会の質問に対し、厚労省は「保険者の努力義務となるため、これまでどおり健康事業として実施してほしい」と回答。また、プログラムで示されている対象者のスクリーニング法では、メタボでない純粋な糖尿病患者を見落とす危険性が高い。この点を当会が質すと、「今回はメタボに焦点を絞った。純粋な糖尿病患者は生活習慣改善よりむしろ治療が必要なので、対象から外した」とした。

 しかし肥満の糖尿病患者の中にも、遺伝的素因によって痩せやすい人、痩せにくい人がいる。そのためいくら保健指導がきちんとなされても痩せられない人もいる。「それが生活習慣によるものなのか、遺伝的素因によるものか、どのように把握するのか」との当会の質問に厚労省は、「非常に難しい問題。今後の課題である」との弁に終始した。

過去の成功例取り入れ“勝てる”計画を

 当会はまた、特定健診・特定保健指導の検討会では20?30年前の議論を繰り返し行っており、非常にプリミティブであることを指摘。1993年に厚労省の研究費で行われた糖尿病と失明予防の研究では、糖尿病患者の登録システムが有効であることが証明済みであるが、今回のプログラムには、この成功例は取り入れられていない。健康づくりは上からの強制でなく、住民の健康意識を高めることによってしか成功しないことは、これまでの多くの研究で既に証明済み。当会はプログラムを策定した委員らに対し、ヒアリングの場の設定を求めていく。

2006年12月22日

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特定健診・特定保健指導(08年度開始)、データ集積は08年度から??

厚労省、制度設計のずさんさを露呈

 08年4月より始まる「特定健診・特定保健指導」について、当協会は11月10日、11月30日と2回にわたり厚労省担当課と懇談を行った。厚労省は現行の市町村健診等と比較して、特定健診・特定保健指導が有効であるという十分なエビデンスがないことを認め、「データは08年度から集積していくことになる」と無責任な弁を展開した。

 「特定健診・特定保健指導」は、医療費適正化計画の中長期的目標である「生活習慣病有病者・予備群の25%減少」を達成させるための柱として、08年4月から全保険者に実施が義務付けられる。従来の健診は、“疾病の早期発見・早期治療”を目的としていたが、今後は“生活習慣病有病者及び予備群の抽出・行動変容”へと大きな概念転換がはかられる。各保険者は数値目標を立てることとなっており、達成できない場合はペナルティ(後期高齢者医療制度(※1)への拠出金増額)も用意されている。“メタボリック・シンドローム”への国民的関心が高まる中、国は生活習慣病の自己責任論を浸透させようと躍起だ。

 しかし、特定健診・特定保健指導の実施マニュアル(以下、「プログラム」)をみると、健診内容の簡略化(メタボ偏重の検査項目)、保健指導対象者のスクリーニングの手法とウエスト基準値(男性85cm、女性90cm)への疑義、十分な財源が確保されないままの民間企業への丸投げの懸念、保健指導の手法が未確立?など、制度設計はきわめて杜撰。全国規模の“社会実験”の感が否めない。

 (※1)後期高齢者医療制度

 08年4月より始まる75歳以上の高齢者の独立医療保険制度。県下全市町村が加入する都道府県ごとの「広域連合」が運営主体。保険者は目標値を達成できない場合、広域連合への支援金を加算される。

実現不可能な数値目標 “根拠なし”と認める

 特定健診の目標受診率は80%(初年度は60%)とされているが、現行の自治体健診の平均受診率は40%強。自治体担当者からも「高すぎる」と不安の声が上がっている。受診率を40%から80%まで上げるには、必要となる費用とエネルギーは指数関数的に上昇し、単にヒトとカネを2倍にすればよいという問題ではない。「目標値が達成できるという根拠は」との質問に対し厚労省は、根拠はないことを認めた。本当にこの事業を成功させる気があるのか、疑問である。

目標達成で医療費上昇 “承知している”

 プログラムには「受診率80%」「保健指導率100%」という数値目標は具体的に提示されているが、その達成のためにどれだけの予算と人員が必要となるかは示されていない。さらに、仮に受診率が60%、80%に達すると患者が増え、一時的に医療費は上昇する。この点につき質すと厚労省は、「一時的に(医療費が)上がることは承知している」と回答。しかしプログラムや事業予算、この間示されている医療費推計では、そのことは明示されていない。

「痩せにくい」遺伝的素因 考慮せず

 メタボ以外の疾病の発見に繋がる検査項目をどうするのかという当会の質問に対し、厚労省は「保険者の努力義務となるため、これまでどおり健康事業として実施してほしい」と回答。また、プログラムで示されている対象者のスクリーニング法では、メタボでない純粋な糖尿病患者を見落とす危険性が高い。この点を当会が質すと、「今回はメタボに焦点を絞った。純粋な糖尿病患者は生活習慣改善よりむしろ治療が必要なので、対象から外した」とした。

 しかし肥満の糖尿病患者の中にも、遺伝的素因によって痩せやすい人、痩せにくい人がいる。そのためいくら保健指導がきちんとなされても痩せられない人もいる。「それが生活習慣によるものなのか、遺伝的素因によるものか、どのように把握するのか」との当会の質問に厚労省は、「非常に難しい問題。今後の課題である」との弁に終始した。

過去の成功例取り入れ“勝てる”計画を

 当会はまた、特定健診・特定保健指導の検討会では20?30年前の議論を繰り返し行っており、非常にプリミティブであることを指摘。1993年に厚労省の研究費で行われた糖尿病と失明予防の研究では、糖尿病患者の登録システムが有効であることが証明済みであるが、今回のプログラムには、この成功例は取り入れられていない。健康づくりは上からの強制でなく、住民の健康意識を高めることによってしか成功しないことは、これまでの多くの研究で既に証明済み。当会はプログラムを策定した委員らに対し、ヒアリングの場の設定を求めていく。

2006年12月22日

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