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2012/11/16 政策部長談話「民間版『健康保険』導入へ、金融審議会で奔走 "現物給付""直接支払"の概念を駆使する生保・損保に厳重警戒を」

民間版「健康保険」導入へ、金融審議会で奔走

"現物給付""直接支払"の概念を駆使する生保・損保に厳重警戒を

神奈川県保険医協会

政策部長  桑島 政臣


 金融審議会を舞台に、生保・損保による民間版「健康保険」導入に向け議論が重ねられている。頓挫した08年の経験を踏まえ、生損保側は迂回策も駆使しだしている。社会保障の皆保険を瓦解させ、その機能の弱体化による市場確立と商品開発を前提としたこの企図は、映画『シッコ』(マイケル・ムーア監督)に見る米国型「管理医療」(HMO)が終着点となる。われわれは、国民皆保険を守り患者を守るうえから、民間版「健康保険」導入に断固反対する。

 保険会社が、保険金に代えて医療サービスそのものを提供する「現物給付型」商品がいま審議会のワーキング・グループ(WG)で議論されている。かつてこの商品は、契約者の将来の疾病リスクが不確定なもと設計が可能なのか等の疑問もあり見送られた。が、生保・損保は巻き返しを図っている。

 11月12日のWGには、「現物給付型保険」と「保険金直接支払サービス」の2タイプの特徴に関する資料が出されている。前者は保険会社が物・サービスの給付を約束し、提携の事業者より契約者に提供するもの。事業者へは保険会社が対価を払う。後者は、保険金を契約者ではなく、サービスを提供する事業者に支払うものである。つまり、各々は医療でいうところの「療養の給付」と「療養費の支給」にあたるものであり、運用上はどちらも「現物給付」である。

 審議会では、葬祭、有料老人ホームの入居権、公的介護保険の上乗せ・横だしサービスなどが、その対象として挙げられている。

 また、現物給付型の商品設計の隘路、疑問の解決策として、給付上限の導入(サービス提供事業者への対価の限度額設定)など、実現性を示す資料の提示が新たに生損保からなされてもいる。

 いま、明治安田生命は医療費連動型で患者負担の実額を補填する商品を販売している。うまく考えたもので保険外併用療養(混合診療)の「先進医療」に関し、全額自費の技術料部分さえも全て補填し、公的医療保険を念頭に置いた設計となっている。「直接支払」は、審議会で明治安田生命から提案されており、この商品に適用されれば、キャッシュレスで疑似的に窓口負担はゼロとなる。

 保険会社からの医療機関への保険金の直接支払、口座振り込みが一般化し、医療機関との関係性が深くなることで、提携関係(「囲い込み」)が作られる。この段階で、公的な医療保険での保険ルールや審査・指導に縛られない、保険会社による民間「健康保険」商品を開発し、CMやDMで普及を図ることは想像に難くない。"軒を借りて母屋を乗っ取る"、「直接支払」を梃に「現物給付」に結実する。

 その先行実施例として、「現物給付型」は葬祭や有料老人ホーム入居権など給付実額の変動リスクが少ないものからの導入が検討され始めている。本丸は昔から医療であり、いま保険代理店では「いずれ、患者負担は4割、5割となる」と言い募り、勧誘をしてさえいる。最近の仙谷元官房長官の「窓口負担増は必要」発言とも気脈を通じている。米国の保険会社の跋扈は、TPPを背景に、この金融審議会の企図で拍車がかかる危険もある。公民の「二階建て保険」すら超えた話となる。

 健保3割負担導入、保険外併用療養の創設(混合診療の制度化)と、そのたびに生保・損保業界は業績を上げてきた。患者・国民に無用な不安を煽り立て混乱させ、皆保険の瓦解を前提に新たな商品開発を企図する。しかも手順である保険法の論議を飛ばし、解釈改定で保険業法の範囲で実現を図ろうとする。このような策動に、われわれは医療界を挙げて断固反対をする。

2012年11月16日

 

民間版「健康保険」導入へ、金融審議会で奔走

"現物給付""直接支払"の概念を駆使する生保・損保に厳重警戒を

神奈川県保険医協会

政策部長  桑島 政臣


 金融審議会を舞台に、生保・損保による民間版「健康保険」導入に向け議論が重ねられている。頓挫した08年の経験を踏まえ、生損保側は迂回策も駆使しだしている。社会保障の皆保険を瓦解させ、その機能の弱体化による市場確立と商品開発を前提としたこの企図は、映画『シッコ』(マイケル・ムーア監督)に見る米国型「管理医療」(HMO)が終着点となる。われわれは、国民皆保険を守り患者を守るうえから、民間版「健康保険」導入に断固反対する。

 保険会社が、保険金に代えて医療サービスそのものを提供する「現物給付型」商品がいま審議会のワーキング・グループ(WG)で議論されている。かつてこの商品は、契約者の将来の疾病リスクが不確定なもと設計が可能なのか等の疑問もあり見送られた。が、生保・損保は巻き返しを図っている。

 11月12日のWGには、「現物給付型保険」と「保険金直接支払サービス」の2タイプの特徴に関する資料が出されている。前者は保険会社が物・サービスの給付を約束し、提携の事業者より契約者に提供するもの。事業者へは保険会社が対価を払う。後者は、保険金を契約者ではなく、サービスを提供する事業者に支払うものである。つまり、各々は医療でいうところの「療養の給付」と「療養費の支給」にあたるものであり、運用上はどちらも「現物給付」である。

 審議会では、葬祭、有料老人ホームの入居権、公的介護保険の上乗せ・横だしサービスなどが、その対象として挙げられている。

 また、現物給付型の商品設計の隘路、疑問の解決策として、給付上限の導入(サービス提供事業者への対価の限度額設定)など、実現性を示す資料の提示が新たに生損保からなされてもいる。

 いま、明治安田生命は医療費連動型で患者負担の実額を補填する商品を販売している。うまく考えたもので保険外併用療養(混合診療)の「先進医療」に関し、全額自費の技術料部分さえも全て補填し、公的医療保険を念頭に置いた設計となっている。「直接支払」は、審議会で明治安田生命から提案されており、この商品に適用されれば、キャッシュレスで疑似的に窓口負担はゼロとなる。

 保険会社からの医療機関への保険金の直接支払、口座振り込みが一般化し、医療機関との関係性が深くなることで、提携関係(「囲い込み」)が作られる。この段階で、公的な医療保険での保険ルールや審査・指導に縛られない、保険会社による民間「健康保険」商品を開発し、CMやDMで普及を図ることは想像に難くない。"軒を借りて母屋を乗っ取る"、「直接支払」を梃に「現物給付」に結実する。

 その先行実施例として、「現物給付型」は葬祭や有料老人ホーム入居権など給付実額の変動リスクが少ないものからの導入が検討され始めている。本丸は昔から医療であり、いま保険代理店では「いずれ、患者負担は4割、5割となる」と言い募り、勧誘をしてさえいる。最近の仙谷元官房長官の「窓口負担増は必要」発言とも気脈を通じている。米国の保険会社の跋扈は、TPPを背景に、この金融審議会の企図で拍車がかかる危険もある。公民の「二階建て保険」すら超えた話となる。

 健保3割負担導入、保険外併用療養の創設(混合診療の制度化)と、そのたびに生保・損保業界は業績を上げてきた。患者・国民に無用な不安を煽り立て混乱させ、皆保険の瓦解を前提に新たな商品開発を企図する。しかも手順である保険法の論議を飛ばし、解釈改定で保険業法の範囲で実現を図ろうとする。このような策動に、われわれは医療界を挙げて断固反対をする。

2012年11月16日