神奈川県保険医協会とは
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2009/10/2 医療運動部会長談話「"負担軽減運動"の目標についての提言―"窓口負担解消"運動との併存のために 誰にも解りやすい、患者負担の『半減運動』を考えてみてください」
"負担軽減運動"の目標についての提言―"窓口負担解消"運動との併存のために
誰にも解りやすい、患者負担の「半減運動」を考えてみてください
神奈川県保険医協会
医療運動部会長 野本 哲夫
患者の治療中断、受診抑制は健保3割以降、顕著である。実に、外来。入院とも医科は、受診延べ日数が2002年度から7年連続でマイナスの、外来累計▲5.2%、入院累計▲5.6%となっている。つまり外来で20人に1人は受診が出来なくなり、全国の外来患者数は709万人なので、40万人近くの患者が受診できなくなったことになる。近く公表の患者調査(平成20年度)では劇的な受診減の実態が明らかになると思われる。
当会は日々の医療現場の実感や患者の困窮に接し、基礎疾患をもつ高齢者の孤独死が続出する現実を踏まえ、07年に「医療費の窓口負担ゼロの会」を発足させ、"患者窓口負担の解消"を求め、広く世論形成に努めてきた。これは、経済的な理由で受診が左右されずに、病気であれば誰でもが受診できる社会の実現、少なくとも負担感を感じない水準の実現を目的に、窓口負担そのものを問う運動である。つまりは健康保険法の本旨である現物給付、医療そのものを患者にきちんと保障する、この原点に医療制度を立ち返させる運動であり、ヨーロッパで常識の窓口負担ゼロの社会を日本で実現する、いわば「戦略的課題」である。
一方、これとは別に窓口負担の2割軽減、前期高齢者の1割負担軽減など、医療団体を中心に窓口負担軽減の運動が行われている。われわれは、この軽減運動を「戦術課題」と位置付け支持し、両者の併存は矛盾がないと理解しているが、われわれは上述の理由から「運動課題」として「戦略課題」の"窓口負担解消"運動を進めている。この観点に立ち、負担軽減の運動発展のために以下、2点を提案したい。
第一は負担割合に関し、何割という歩合表示で考えることをやめ、百分率の何%で表示することを提案したい。現在、歩合表示が多くの人々の固定観念となっているため、負担軽減というと過去の負担割合の改悪の歴史を逆コースで「3割→2割→1割」と辿る発想を抜け出ず、患者の実際的な要望に接近できないからである。当会は映画「シッコ」の上映会を県下各地で行ってきているが、参加者アンケートで許容できる患者負担の水準は「10%以下」が8割を占める結果となっている。つまり、「20%負担」は国民要求と大きく乖離しているのであり、患者負担の軽減水準の模索が必要となっているのである。その点で百分率は、負担水準の選択肢の自由度を大きく増やすのである。
第二点は、すべての窓口負担の「半減運動」を提起したい。なぜなら、年齢に応じ窓口負担を部分的に10%やゼロ%にしたり、年齢ごとに段階的に負担軽減をする、複雑な入れ子細工的な軽減要求は一般の国民には分かりにくいからである。しかも、年代間の対立分断を生じさせ、要求の糾合が難しいからである。これに対し簡素な「負担半減」であれば、誰でも理解が容易であり、第一回目の半減運動が成功すれば、一般は15%、6歳未満と70-74歳は10%、高齢者は5%と、負担感が大きく減殺される。第二回目の運動が成功すれば、各々7.5%、5%、2.5%と、負担感を感じない水準の「負担ゼロ」に収斂していくことになる。
外来医療費12,275円(平均)の窓口負担は7.5%となれば920円となり千円を切る。同様に入院医療費396,729円(平均)の窓口負担は29,754円となり、大きな福音となる。
窓口負担半減は、必要財源規模も第一回目は2.5兆円、第二回目は1.25兆円と試算や諸施策との政策費用の対比がしやすいという利点もある。
尚、付言すれば、昨今の消費税の財源論議や、医療機関の損税解消のための消費税課税化においても窓口負担の%表示は、これらとの切り結びでも関係性の理解のため有益でもある。
関係方面のご意見や批判、ご議論をお願いしたい。
2009年10月2日
"負担軽減運動"の目標についての提言―"窓口負担解消"運動との併存のために
誰にも解りやすい、患者負担の「半減運動」を考えてみてください
神奈川県保険医協会
医療運動部会長 野本 哲夫
患者の治療中断、受診抑制は健保3割以降、顕著である。実に、外来。入院とも医科は、受診延べ日数が2002年度から7年連続でマイナスの、外来累計▲5.2%、入院累計▲5.6%となっている。つまり外来で20人に1人は受診が出来なくなり、全国の外来患者数は709万人なので、40万人近くの患者が受診できなくなったことになる。近く公表の患者調査(平成20年度)では劇的な受診減の実態が明らかになると思われる。
当会は日々の医療現場の実感や患者の困窮に接し、基礎疾患をもつ高齢者の孤独死が続出する現実を踏まえ、07年に「医療費の窓口負担ゼロの会」を発足させ、"患者窓口負担の解消"を求め、広く世論形成に努めてきた。これは、経済的な理由で受診が左右されずに、病気であれば誰でもが受診できる社会の実現、少なくとも負担感を感じない水準の実現を目的に、窓口負担そのものを問う運動である。つまりは健康保険法の本旨である現物給付、医療そのものを患者にきちんと保障する、この原点に医療制度を立ち返させる運動であり、ヨーロッパで常識の窓口負担ゼロの社会を日本で実現する、いわば「戦略的課題」である。
一方、これとは別に窓口負担の2割軽減、前期高齢者の1割負担軽減など、医療団体を中心に窓口負担軽減の運動が行われている。われわれは、この軽減運動を「戦術課題」と位置付け支持し、両者の併存は矛盾がないと理解しているが、われわれは上述の理由から「運動課題」として「戦略課題」の"窓口負担解消"運動を進めている。この観点に立ち、負担軽減の運動発展のために以下、2点を提案したい。
第一は負担割合に関し、何割という歩合表示で考えることをやめ、百分率の何%で表示することを提案したい。現在、歩合表示が多くの人々の固定観念となっているため、負担軽減というと過去の負担割合の改悪の歴史を逆コースで「3割→2割→1割」と辿る発想を抜け出ず、患者の実際的な要望に接近できないからである。当会は映画「シッコ」の上映会を県下各地で行ってきているが、参加者アンケートで許容できる患者負担の水準は「10%以下」が8割を占める結果となっている。つまり、「20%負担」は国民要求と大きく乖離しているのであり、患者負担の軽減水準の模索が必要となっているのである。その点で百分率は、負担水準の選択肢の自由度を大きく増やすのである。
第二点は、すべての窓口負担の「半減運動」を提起したい。なぜなら、年齢に応じ窓口負担を部分的に10%やゼロ%にしたり、年齢ごとに段階的に負担軽減をする、複雑な入れ子細工的な軽減要求は一般の国民には分かりにくいからである。しかも、年代間の対立分断を生じさせ、要求の糾合が難しいからである。これに対し簡素な「負担半減」であれば、誰でも理解が容易であり、第一回目の半減運動が成功すれば、一般は15%、6歳未満と70-74歳は10%、高齢者は5%と、負担感が大きく減殺される。第二回目の運動が成功すれば、各々7.5%、5%、2.5%と、負担感を感じない水準の「負担ゼロ」に収斂していくことになる。
外来医療費12,275円(平均)の窓口負担は7.5%となれば920円となり千円を切る。同様に入院医療費396,729円(平均)の窓口負担は29,754円となり、大きな福音となる。
窓口負担半減は、必要財源規模も第一回目は2.5兆円、第二回目は1.25兆円と試算や諸施策との政策費用の対比がしやすいという利点もある。
尚、付言すれば、昨今の消費税の財源論議や、医療機関の損税解消のための消費税課税化においても窓口負担の%表示は、これらとの切り結びでも関係性の理解のため有益でもある。
関係方面のご意見や批判、ご議論をお願いしたい。
2009年10月2日