神奈川県保険医協会とは
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2011/11/7 政策部長談話「第一線医療の『連続倒産』の危機!が真実 中医協調査の解明と真剣な対応を求める」
第一線医療の「連続倒産」の危機!が真実
中医協調査の解明と真剣な対応を求める
神奈川県保険医協会
政策部長 桑島 政臣
中医協は11月2日、医療経済実態調査(H23年度)の確報値を公表した。概して、医療機関の事業所損益が前回調査に比べ極端に下落、支出費用を削減しても前回水準を確保できない「構造的問題」が浮き彫りになっている。いま診療報酬のマイナス改定の検討が報じられており、確実に第一線医療をになう医科、歯科の診療所、中小病院の倒産が今後、連続する危険が高い。被災地に踏みとどまり、艱難辛苦の末に仮設復旧した医療機関にとっては深刻な事態となる。われわれは、被災地に混乱をもたらす診療報酬の今次改定は見送るべきとの基本的立場であるが、改定を強行するのであれば、医療の再生産を確実に保障する、構造転換が可能な、改定幅と改定内容が必須だと強く訴える。
驚愕の数値が調査で明らかになった。事業所収入から事業所費用を差し引いた、医療機関の損益差額(=収支差額)は前回調査(H21年度)対比で、診療所(個人・入院収益なし)▲14.5%(▲29.7万円/月)、歯科診療所(個人)▲17.2%(▲20.7万円)である。これは2カ月分の減収に相当(2カ月÷12カ月=16.6%)する規模である。
しかも、診療所は保険診療収入(収益)が▲2.1%となる中、支出の委託費を▲4.6%と切り詰めても損益差額が▲14.5%となっており限界である。とりわけ、この傾向は内科診療所では顕著で保険診療収入▲7.9%と収入が激減、その下で給与費▲9.6%、委託費▲22.0%、建物減価償却費▲4.5%、医療機器減価償却費▲3.5%と、徹底した支出削減を行っても、損益差額が▲17.4%と壊滅的である。
歯科診療所では保険診療収益は+0.6%と微増なものの、自費診療部分が▲18.8%と落ち込み、医業収入が▲2.5%の下、歯科材料費▲4.5%、委託費▲5.0%と削減しても損益差額▲17.2%である。
この損益差額のマイナスは今に始まった話ではない。対前回調査対比での損益差額を遡り振り返ると、H21年度は、診療所(個人・入院収益なし)▲8.6%(▲19.3万円/月)、歯科診療所(個人)▲2.2%(▲2.7万円/月)。同じくH19年度は診療所▲2.1%(▲4.7万円)、歯科診療所▲9.0%(▲12.2万円)である。
「医療崩壊」という言葉が一般的になってきた、2005年度(H17年度)を起点とした2011年度までの損益差額の累計は、診療所(個人・入院収益なし)▲23.5%、歯科(個人)▲26.4%となっており、事業所得が1/4程度喪失、3か月分の所得が消し飛んだに等しい。
このままでは、第一線医療を支える医療機関の経営基盤が崩れ、地滑り的に診療所倒産が連続することに、異常な危機感を覚える。
病院の損益差額は一見持ち直したかに見えるが、国公立以外の医療法人や個人、社会保険関係法人、医療生協などの病院は、入院・外来の保険収入は大幅なマイナスであり、これを給与、医薬品費、委託費、設備関係費に大鉈を振い、極端な削減をして、損益差額が前回比でプラスになったにすぎない。
事業所得を個人収入と誤解し、勤務医と開業医を比較する、調査数値に全く不理解な報道が依然となされている。書くべき問題はそこではない。第一線医療が崩れれば、二次、三次、救急救命、高度医療などの医療の役割分担による重層構造は、簡単に崩れていく。
この調査は平均値であり、「最頻値」は過去の報告から考えてもっと深刻である。われわれが求めてきた階級別「度数分布」は今回も公表されず、「中央値」と「最頻値」さえも不明である。
医療再生のためフェアな議論と、根本的な政策転換、十分な財政投入を厳に求めたい。
2011年11月7日
第一線医療の「連続倒産」の危機!が真実
中医協調査の解明と真剣な対応を求める
神奈川県保険医協会
政策部長 桑島 政臣
中医協は11月2日、医療経済実態調査(H23年度)の確報値を公表した。概して、医療機関の事業所損益が前回調査に比べ極端に下落、支出費用を削減しても前回水準を確保できない「構造的問題」が浮き彫りになっている。いま診療報酬のマイナス改定の検討が報じられており、確実に第一線医療をになう医科、歯科の診療所、中小病院の倒産が今後、連続する危険が高い。被災地に踏みとどまり、艱難辛苦の末に仮設復旧した医療機関にとっては深刻な事態となる。われわれは、被災地に混乱をもたらす診療報酬の今次改定は見送るべきとの基本的立場であるが、改定を強行するのであれば、医療の再生産を確実に保障する、構造転換が可能な、改定幅と改定内容が必須だと強く訴える。
驚愕の数値が調査で明らかになった。事業所収入から事業所費用を差し引いた、医療機関の損益差額(=収支差額)は前回調査(H21年度)対比で、診療所(個人・入院収益なし)▲14.5%(▲29.7万円/月)、歯科診療所(個人)▲17.2%(▲20.7万円)である。これは2カ月分の減収に相当(2カ月÷12カ月=16.6%)する規模である。
しかも、診療所は保険診療収入(収益)が▲2.1%となる中、支出の委託費を▲4.6%と切り詰めても損益差額が▲14.5%となっており限界である。とりわけ、この傾向は内科診療所では顕著で保険診療収入▲7.9%と収入が激減、その下で給与費▲9.6%、委託費▲22.0%、建物減価償却費▲4.5%、医療機器減価償却費▲3.5%と、徹底した支出削減を行っても、損益差額が▲17.4%と壊滅的である。
歯科診療所では保険診療収益は+0.6%と微増なものの、自費診療部分が▲18.8%と落ち込み、医業収入が▲2.5%の下、歯科材料費▲4.5%、委託費▲5.0%と削減しても損益差額▲17.2%である。
この損益差額のマイナスは今に始まった話ではない。対前回調査対比での損益差額を遡り振り返ると、H21年度は、診療所(個人・入院収益なし)▲8.6%(▲19.3万円/月)、歯科診療所(個人)▲2.2%(▲2.7万円/月)。同じくH19年度は診療所▲2.1%(▲4.7万円)、歯科診療所▲9.0%(▲12.2万円)である。
「医療崩壊」という言葉が一般的になってきた、2005年度(H17年度)を起点とした2011年度までの損益差額の累計は、診療所(個人・入院収益なし)▲23.5%、歯科(個人)▲26.4%となっており、事業所得が1/4程度喪失、3か月分の所得が消し飛んだに等しい。
このままでは、第一線医療を支える医療機関の経営基盤が崩れ、地滑り的に診療所倒産が連続することに、異常な危機感を覚える。
病院の損益差額は一見持ち直したかに見えるが、国公立以外の医療法人や個人、社会保険関係法人、医療生協などの病院は、入院・外来の保険収入は大幅なマイナスであり、これを給与、医薬品費、委託費、設備関係費に大鉈を振い、極端な削減をして、損益差額が前回比でプラスになったにすぎない。
事業所得を個人収入と誤解し、勤務医と開業医を比較する、調査数値に全く不理解な報道が依然となされている。書くべき問題はそこではない。第一線医療が崩れれば、二次、三次、救急救命、高度医療などの医療の役割分担による重層構造は、簡単に崩れていく。
この調査は平均値であり、「最頻値」は過去の報告から考えてもっと深刻である。われわれが求めてきた階級別「度数分布」は今回も公表されず、「中央値」と「最頻値」さえも不明である。
医療再生のためフェアな議論と、根本的な政策転換、十分な財政投入を厳に求めたい。
2011年11月7日