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2007/11/22 保険診療対策部長談話「基本診療料への処置行為の包括及び引き下げに断固反対する」

 基本診療料への処置行為の包括及び

引き下げに断固反対する

 

神奈川県保険医協会

保険診療対策部長  入澤 彰仁


 中医協は10月31日の診療報酬基本問題小委員会で「医師による診断と適切な指導があれば、必ずしも医師等の医療職による高度な技術を要せず、患者本人若しくは家人でも行うことが可能な処置」について、基本診療料に包括化することを議論。上記の処置は、(1)軽度の熱傷処置、(2)軟膏処置、(3)点眼、洗眼、片眼帯、(4)点耳、簡単な耳垢栓除去、(5)鼻洗浄、(6)湿布処置―とされ、これらの処置の基本診療料への包括化は、事実上「医療保険外し」といっても過言ではない。

 

 上記の処置の内、(3)点眼、(6)湿布処置、は患者あるいは家人が行い得る処置かもしれない。だが、(1)の熱傷処置に関してはいくら程度が軽症であっても初期の適切な創傷処置がなされないと、重度の瘢痕を残すことも想定される。(2)の軟膏処置は感染性が伴うものや短時間に悪化する症状の場合には患者自身で処置することは困難である。さらには、(4)の点耳、耳垢栓除去、(5)の鼻洗浄等は高度な技術を要するものであり、患者自ら、あるいは家人が行うには無理があり、事故につながる可能性が大きい。

 これら医師自らが行う必要のある処置行為を、適正に評価せず基本診療料へ包括する行為は、軽度の医療と称しての医療保険給付から除外する行為と等しく、決して容認できない。

 

 11月2日の同委員会では、「時間外診療の評価体系の見直し」と称して議論。ここでは、18時から20時において診療所数が多い地域は、第二次、第三次救急医療機関における患者数の割合が少ないという結果を持ち出し、勤務医の負担を軽減させるために、診療所における開業時間の夜間への延長など時間外診療に対する評価を行う。その財源を基本診療料の引き下げから捻出するという。

 定期的に外来通院を行っている患者は殆どの場合、ある程度決まった曜日、時間帯に来院するものである。診療終了時間を18時から20時までシフトしたとしても、来院患者数はそれほど増加するものではなく、厚労省の意図する診療時間の延長にはつながらない。

 そもそも、医学部卒業後2年間の研修医制度を取り入れ医学部の各教室の医師数を、また勤務医数(特に外科医、産婦人科医、小児科医)を減少させたのは行政ではないか。その勤務医数の減少による医療の質の低下を、開業医に押し付けようとする行政に怒りすら覚える。

 

 さらに同日の委員会では外来管理加算の算定要件に、「患者への懇切丁寧な説明や医学管理等に要する時間の目安」を設けることも議論された。患者が求めているのは適切な診察と指導管理であり、長時間の診察ではない。

 診察時間による評価となれば、必然的に1日に診察できる患者数は限られる。算定条件に時間設定を導入することで外来患者数をコントロールし、かかりつけ医制度へ円滑に移行させようとする厚労省の意図が感じられる。診察時間による評価の導入は、医療現場を軽視した実態に合わない要件であり、断固として容認できない。

 

 また、同日に後期高齢者医療制度における初・再診料について、後期高齢者の特性に応じて初診料は引き上げ、再診料は引き下げるなど、一般患者と異なる点数設定をすることが議論された。

 基本診療料とは、医師の基本的な診察行為や医学的管理を評価する重要な点数である。医師の診察行為は、患者の年齢に関係なく患者のために最善を尽くすものであって、年齢によって変化が生じるものではない。さらに、後期高齢者は初診料を算定する機会は少ないため、大幅な引き下げであることは言うまでもない。ゆえに、基本診療料の引き下げは勿論のこと、年齢によって差を生じさせることは断じて許されるものではない。

 

 このように、基本診療料への包括化や引き下げに対する議論は、医師の診療行為を軽視するものである。現在の医療現場の状況を考えると、基本診療料はプラスとする議論が行われて然るべきである。

 特に今回の基本診療料への包括化は、あらゆる医療行為の包括化の流れを生むことになり、後々に医療行為の標準化を引き起こす。結果、疾病ごとの診療報酬体系へと発展する危険性がある。さらには、風邪等の軽医療の保険給付外しへの動きを加速しかねない。

 医療者、そして患者が、ともに安心して医療を提供し受けられるよう、基本診療料への包括化や引き下げに、断固反対の意を表明する。

2007年11月22日

 

 基本診療料への処置行為の包括及び

引き下げに断固反対する

 

神奈川県保険医協会

保険診療対策部長  入澤 彰仁


 中医協は10月31日の診療報酬基本問題小委員会で「医師による診断と適切な指導があれば、必ずしも医師等の医療職による高度な技術を要せず、患者本人若しくは家人でも行うことが可能な処置」について、基本診療料に包括化することを議論。上記の処置は、(1)軽度の熱傷処置、(2)軟膏処置、(3)点眼、洗眼、片眼帯、(4)点耳、簡単な耳垢栓除去、(5)鼻洗浄、(6)湿布処置―とされ、これらの処置の基本診療料への包括化は、事実上「医療保険外し」といっても過言ではない。

 

 上記の処置の内、(3)点眼、(6)湿布処置、は患者あるいは家人が行い得る処置かもしれない。だが、(1)の熱傷処置に関してはいくら程度が軽症であっても初期の適切な創傷処置がなされないと、重度の瘢痕を残すことも想定される。(2)の軟膏処置は感染性が伴うものや短時間に悪化する症状の場合には患者自身で処置することは困難である。さらには、(4)の点耳、耳垢栓除去、(5)の鼻洗浄等は高度な技術を要するものであり、患者自ら、あるいは家人が行うには無理があり、事故につながる可能性が大きい。

 これら医師自らが行う必要のある処置行為を、適正に評価せず基本診療料へ包括する行為は、軽度の医療と称しての医療保険給付から除外する行為と等しく、決して容認できない。

 

 11月2日の同委員会では、「時間外診療の評価体系の見直し」と称して議論。ここでは、18時から20時において診療所数が多い地域は、第二次、第三次救急医療機関における患者数の割合が少ないという結果を持ち出し、勤務医の負担を軽減させるために、診療所における開業時間の夜間への延長など時間外診療に対する評価を行う。その財源を基本診療料の引き下げから捻出するという。

 定期的に外来通院を行っている患者は殆どの場合、ある程度決まった曜日、時間帯に来院するものである。診療終了時間を18時から20時までシフトしたとしても、来院患者数はそれほど増加するものではなく、厚労省の意図する診療時間の延長にはつながらない。

 そもそも、医学部卒業後2年間の研修医制度を取り入れ医学部の各教室の医師数を、また勤務医数(特に外科医、産婦人科医、小児科医)を減少させたのは行政ではないか。その勤務医数の減少による医療の質の低下を、開業医に押し付けようとする行政に怒りすら覚える。

 

 さらに同日の委員会では外来管理加算の算定要件に、「患者への懇切丁寧な説明や医学管理等に要する時間の目安」を設けることも議論された。患者が求めているのは適切な診察と指導管理であり、長時間の診察ではない。

 診察時間による評価となれば、必然的に1日に診察できる患者数は限られる。算定条件に時間設定を導入することで外来患者数をコントロールし、かかりつけ医制度へ円滑に移行させようとする厚労省の意図が感じられる。診察時間による評価の導入は、医療現場を軽視した実態に合わない要件であり、断固として容認できない。

 

 また、同日に後期高齢者医療制度における初・再診料について、後期高齢者の特性に応じて初診料は引き上げ、再診料は引き下げるなど、一般患者と異なる点数設定をすることが議論された。

 基本診療料とは、医師の基本的な診察行為や医学的管理を評価する重要な点数である。医師の診察行為は、患者の年齢に関係なく患者のために最善を尽くすものであって、年齢によって変化が生じるものではない。さらに、後期高齢者は初診料を算定する機会は少ないため、大幅な引き下げであることは言うまでもない。ゆえに、基本診療料の引き下げは勿論のこと、年齢によって差を生じさせることは断じて許されるものではない。

 

 このように、基本診療料への包括化や引き下げに対する議論は、医師の診療行為を軽視するものである。現在の医療現場の状況を考えると、基本診療料はプラスとする議論が行われて然るべきである。

 特に今回の基本診療料への包括化は、あらゆる医療行為の包括化の流れを生むことになり、後々に医療行為の標準化を引き起こす。結果、疾病ごとの診療報酬体系へと発展する危険性がある。さらには、風邪等の軽医療の保険給付外しへの動きを加速しかねない。

 医療者、そして患者が、ともに安心して医療を提供し受けられるよう、基本診療料への包括化や引き下げに、断固反対の意を表明する。

2007年11月22日