神奈川県保険医協会とは
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2008/2/13 保険診療対策部長談話「第一線医療を担う開業医の裁量権を奪う改定に断固抗議する」
第一線医療を担う開業医の裁量権を
奪う改定に断固抗議する
神奈川県保険医協会
保険診療対策部長 入澤 彰仁
2月13日に中医協から厚労大臣へ答申が行われ、今次診療報酬改定の概要がほぼ明らかとなった。度重なるマイナス改定で医療機関の経営は崩壊寸前、その状況においても絶えず地域医療の第一線を担ってきた開業医の最後の気力を削ぐには十分な内容となった。
今次改定の大きな問題点として挙げられるのは、(1)医療機関の経営の根本を成す再診料の実質引き下げと外来管理加算見直しによる医師の裁量権の侵害、(2)リハビリにおける新たな選定療養の導入、(3)後期高齢者医療制度における実質の登録医制の導入―の3点であろう。
まずは、再診料の実質引き下げである。再診料自体は71点で据え置かれたものの、一定の処置を包括することで実質2点程度の引き下げとなる。また再診料とともに主に内科の医療機関の経営を支えてきた外来管理加算に5分以上の診察要件が加えられた。早朝、夜間診療の評価として50点の加算が導入されたが、実質的な算定は難しく、まさに実質の再診料の引き下げと言える。また、土田中医協会長が述べたように、今次改定で医師の裁量権の侵害とも言える診療内容に踏み込んだ答申がなされた。それは外来管理加算の計画的な医学管理の内容を厚生労働大臣が定めようというものだ。医師の裁量権を踏みにじる改定であり断固抗議する。
2つ目は、協会が警鐘を鳴らし続けてきた保険外併用療養費制度による選定療養がリハビリに導入された。例えば運動器リハビリテーションでは150日を超えると、月13単位の算定制限がかけられ上限を超えたものについては、選定療養となり、患者の実費負担で行うこととなった。このような保険給付に一月の上限を設定する行為が他の分野まで拡大すれば、事実上の混合診療の解禁となり日本の皆保険制度の根幹を揺るがしかねない事態であり、選定療養の導入の撤回を要求する。
3つ目として後期高齢者医療においては、4日間の研修を受けた医師が患者を総合的に診ることとし、医師と患者の一対一対応の仕組みを導入。登録医制への布石が打たれた。導入される点数は、検査や画像診断などが包括される「後期高齢者診療料600点(月1回)」を算定し、計画的な検査等を含めた長期的管理や重複投薬の管理まで含まれる。後期高齢者は多くの慢性疾患を複数抱え、急性疾患を繰り返すため、我々開業医は患者の状態に応じて検査や処置を行っている。しかし、今回の後期高齢者診療料の導入は、医師の裁量をないがしろにする設定となっている。さらに最終的には登録医制まで視野に入れフリーアクセスの制限まで狙っている。このままでは、世界一の長寿国の地位から転落するのは遠い未来ではないといえよう。
その他、回復期リハビリテーション病棟における成果主義の導入や、1手術あたりの包括点数の導入など多くの問題点を孕んでいる今次改定は、即刻見直すべきである。
このように、再診料への処置包括化や外来管理加算への時間要件、リハビリへの選定療養の導入による保険給付外し、後期高齢者医療制度に実質の登録医制が導入されるなど、今次改定は医療費抑制を始めとして医師の裁量権のコントロールを目論む厚労省の思惑がはっきりと見て取れる内容である。
我々開業保険医は、地域の第一線医療を、また患者が受けやすい医療を提供する使命がある。今次診療報酬改定に断固抗議すると共に地域医療を守る決意をここに表明する。
2008年2月13日
第一線医療を担う開業医の裁量権を
奪う改定に断固抗議する
神奈川県保険医協会
保険診療対策部長 入澤 彰仁
2月13日に中医協から厚労大臣へ答申が行われ、今次診療報酬改定の概要がほぼ明らかとなった。度重なるマイナス改定で医療機関の経営は崩壊寸前、その状況においても絶えず地域医療の第一線を担ってきた開業医の最後の気力を削ぐには十分な内容となった。
今次改定の大きな問題点として挙げられるのは、(1)医療機関の経営の根本を成す再診料の実質引き下げと外来管理加算見直しによる医師の裁量権の侵害、(2)リハビリにおける新たな選定療養の導入、(3)後期高齢者医療制度における実質の登録医制の導入―の3点であろう。
まずは、再診料の実質引き下げである。再診料自体は71点で据え置かれたものの、一定の処置を包括することで実質2点程度の引き下げとなる。また再診料とともに主に内科の医療機関の経営を支えてきた外来管理加算に5分以上の診察要件が加えられた。早朝、夜間診療の評価として50点の加算が導入されたが、実質的な算定は難しく、まさに実質の再診料の引き下げと言える。また、土田中医協会長が述べたように、今次改定で医師の裁量権の侵害とも言える診療内容に踏み込んだ答申がなされた。それは外来管理加算の計画的な医学管理の内容を厚生労働大臣が定めようというものだ。医師の裁量権を踏みにじる改定であり断固抗議する。
2つ目は、協会が警鐘を鳴らし続けてきた保険外併用療養費制度による選定療養がリハビリに導入された。例えば運動器リハビリテーションでは150日を超えると、月13単位の算定制限がかけられ上限を超えたものについては、選定療養となり、患者の実費負担で行うこととなった。このような保険給付に一月の上限を設定する行為が他の分野まで拡大すれば、事実上の混合診療の解禁となり日本の皆保険制度の根幹を揺るがしかねない事態であり、選定療養の導入の撤回を要求する。
3つ目として後期高齢者医療においては、4日間の研修を受けた医師が患者を総合的に診ることとし、医師と患者の一対一対応の仕組みを導入。登録医制への布石が打たれた。導入される点数は、検査や画像診断などが包括される「後期高齢者診療料600点(月1回)」を算定し、計画的な検査等を含めた長期的管理や重複投薬の管理まで含まれる。後期高齢者は多くの慢性疾患を複数抱え、急性疾患を繰り返すため、我々開業医は患者の状態に応じて検査や処置を行っている。しかし、今回の後期高齢者診療料の導入は、医師の裁量をないがしろにする設定となっている。さらに最終的には登録医制まで視野に入れフリーアクセスの制限まで狙っている。このままでは、世界一の長寿国の地位から転落するのは遠い未来ではないといえよう。
その他、回復期リハビリテーション病棟における成果主義の導入や、1手術あたりの包括点数の導入など多くの問題点を孕んでいる今次改定は、即刻見直すべきである。
このように、再診料への処置包括化や外来管理加算への時間要件、リハビリへの選定療養の導入による保険給付外し、後期高齢者医療制度に実質の登録医制が導入されるなど、今次改定は医療費抑制を始めとして医師の裁量権のコントロールを目論む厚労省の思惑がはっきりと見て取れる内容である。
我々開業保険医は、地域の第一線医療を、また患者が受けやすい医療を提供する使命がある。今次診療報酬改定に断固抗議すると共に地域医療を守る決意をここに表明する。
2008年2月13日