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2011/12/5 政策部長談話「議論の混乱を誘う、診療報酬の事業税非課税措置の見直しを正す」

議論の混乱を誘う、診療報酬の

事業税非課税措置の見直しを正す

神奈川県保険医協会

政策部長  桑島 政臣


 政府税制調査会は12月1日、診療報酬の事業税(地方税)非課税措置を2013年度以降の「検討課題」とすることにした。11月25日段階では税・社会保障一体改革に関する審議項目として「格上げ」し審議するとされていたものである。12年度税制大綱をとりまとめた後、年末までの結論を目標に一体改革に関する税制改革論議に入る予定だが、この非課税措置の帰趨は予断を許さない。一体改革関連となった理由として、診療報酬への消費税課税との抱き合わせの検討が挙げられているが、これは詭弁であり、今後の議論の混乱を誘発するものとして看過できない。われわれは議論の峻別、是正を要望するとともに、地域医療を確保する観点から事業税非課税の永続化を求める。

 

 保険診療の基盤、診療報酬はその公共性から事業税は非課税とされている。なぜならば、医療は医療法の第7条、54条で配当禁止など非営利性が担保されており、さらに保険診療においては皆保険の制度理念の下、「公定価格」で医療提供がなされているからである。

 これは同じ、公共的な事業である放送事業や電力事業と決定的に違う点である。放送事業は自社規定による広告収入で経営を行い、電力事業は原価に利潤を加えた総括原価方式で電気料金を設定し経営を行う。つまり、価格決定権を各社がもち事業運営をしており、公定価格による事業運営の医療とは完全に性格を異にしている。また、非営利性を法的に課せられている医療は、格段に高い公共性を帯びている。

 よって、消費税法においても医療は収益事業とされておらず診療報酬は非課税とされている。ゆえに診療報酬の非課税措置は非常に道理があり、これの見直し・廃止は横車を押すに等しいのである。

 

 事業税の非課税措置を一体改革関連とした理由を福田総務大臣政務官は、「今後、診療報酬への消費税の課税の在り方の検討などと併せて、地域医療を確保するために必要な措置について引き続き検討するため」としている。これは、消費税率10%の「一体改革」の方針を見据えた医療界の要望を踏まえたものであるが、主旨を逆手にとったものでしかない。

 

 医療の非営利性、公共性から、診療報酬は消費税の課税対象外とされ、患者も医療機関も消費税の負担が本来は「なし」となるはずだった。しかし、「非課税」とされたため医療機関は消費税の負担をすることとなり政策主旨の反映が不完全なままである。税率が引き上がれば医療機関にとって負担は更に過重となる。現在、診療報酬収入の2%相当に匹敵しており、消費税率10%で倍化する。この矛盾解消のため「免税」の適用を求めているが、これは便宜的に消費税を課税し税率0%を適用するものである。これは複雑な税制の制度上の仕組みのため名目上「課税」とするだけである。これを課税イコール収益事業と短絡し、さらに消費税法と地方税法と異なる税法を混同した、無謀な議論である。

 

 全国の医療機関が負担している消費税は現在7千億円に相当する。消費税率10%で1兆4千億円に膨れる。それだけ経営を圧迫する。また、仮に事業税をかけるとなると、1兆6千億円に上る。この数字は、診療報酬の消費税を「免税」にし、事業税をかけ財政中立とする深謀遠慮さえ疑わせる。

 過日の中医協の医療経済実態調査は、報道とは違い第一線の医療機関の収支差額は極端に落ち込み、改善といわれる病院は費用削減によるものでしかない。消費税「免税」への転換と、事業税非課税の永続化を図り、医療の質、地域医療の確保に必要な措置をしっかりととるよう強く求める。

2011年12月5日

 

議論の混乱を誘う、診療報酬の

事業税非課税措置の見直しを正す

神奈川県保険医協会

政策部長  桑島 政臣


 政府税制調査会は12月1日、診療報酬の事業税(地方税)非課税措置を2013年度以降の「検討課題」とすることにした。11月25日段階では税・社会保障一体改革に関する審議項目として「格上げ」し審議するとされていたものである。12年度税制大綱をとりまとめた後、年末までの結論を目標に一体改革に関する税制改革論議に入る予定だが、この非課税措置の帰趨は予断を許さない。一体改革関連となった理由として、診療報酬への消費税課税との抱き合わせの検討が挙げられているが、これは詭弁であり、今後の議論の混乱を誘発するものとして看過できない。われわれは議論の峻別、是正を要望するとともに、地域医療を確保する観点から事業税非課税の永続化を求める。

 

 保険診療の基盤、診療報酬はその公共性から事業税は非課税とされている。なぜならば、医療は医療法の第7条、54条で配当禁止など非営利性が担保されており、さらに保険診療においては皆保険の制度理念の下、「公定価格」で医療提供がなされているからである。

 これは同じ、公共的な事業である放送事業や電力事業と決定的に違う点である。放送事業は自社規定による広告収入で経営を行い、電力事業は原価に利潤を加えた総括原価方式で電気料金を設定し経営を行う。つまり、価格決定権を各社がもち事業運営をしており、公定価格による事業運営の医療とは完全に性格を異にしている。また、非営利性を法的に課せられている医療は、格段に高い公共性を帯びている。

 よって、消費税法においても医療は収益事業とされておらず診療報酬は非課税とされている。ゆえに診療報酬の非課税措置は非常に道理があり、これの見直し・廃止は横車を押すに等しいのである。

 

 事業税の非課税措置を一体改革関連とした理由を福田総務大臣政務官は、「今後、診療報酬への消費税の課税の在り方の検討などと併せて、地域医療を確保するために必要な措置について引き続き検討するため」としている。これは、消費税率10%の「一体改革」の方針を見据えた医療界の要望を踏まえたものであるが、主旨を逆手にとったものでしかない。

 

 医療の非営利性、公共性から、診療報酬は消費税の課税対象外とされ、患者も医療機関も消費税の負担が本来は「なし」となるはずだった。しかし、「非課税」とされたため医療機関は消費税の負担をすることとなり政策主旨の反映が不完全なままである。税率が引き上がれば医療機関にとって負担は更に過重となる。現在、診療報酬収入の2%相当に匹敵しており、消費税率10%で倍化する。この矛盾解消のため「免税」の適用を求めているが、これは便宜的に消費税を課税し税率0%を適用するものである。これは複雑な税制の制度上の仕組みのため名目上「課税」とするだけである。これを課税イコール収益事業と短絡し、さらに消費税法と地方税法と異なる税法を混同した、無謀な議論である。

 

 全国の医療機関が負担している消費税は現在7千億円に相当する。消費税率10%で1兆4千億円に膨れる。それだけ経営を圧迫する。また、仮に事業税をかけるとなると、1兆6千億円に上る。この数字は、診療報酬の消費税を「免税」にし、事業税をかけ財政中立とする深謀遠慮さえ疑わせる。

 過日の中医協の医療経済実態調査は、報道とは違い第一線の医療機関の収支差額は極端に落ち込み、改善といわれる病院は費用削減によるものでしかない。消費税「免税」への転換と、事業税非課税の永続化を図り、医療の質、地域医療の確保に必要な措置をしっかりととるよう強く求める。

2011年12月5日