神奈川県保険医協会とは
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2009/6/15 理事長談話「日本医療の特性を否定する 財政審『建議』の撤回を求める」
日本医療の特性を否定する
財政審「建議」の撤回を求める
神奈川県保険医協会
理事長 池川 明
6月3日、財政制度等審議会は来年度予算編成に関する建議を与謝野財務相に提出した。社会保障費削減の数値目標は避けたものの「社会保障分野においても、骨太方針2006などの歳出改革の基本的方向性は維持する」とし、診療所の診療報酬の引き下げを明確に言及した。それどころか、自由開業医制の規制や患者の医療機関選択の自由(フリーアクセス)の制限など、日本医療の特性を根本否定する内容を盛り込んでいる。いわば、日本の医療界への"挑戦状"であり、医療「解体」、医療の商品化、市場化の指示書となっている。われわれは、この「建議」の撤回を強く求める。
◆ 従来の「建議」を超えた医療内容への介入
建議では、(1)診療報酬の配分見直し、(2)医師の適正配置、(3)医療従事者間の役割分担見直しの3点を早急の課題と設定。これらを医師不足、救急体制の再生策として位置付けた。
そして、第一に「診療所に偏っている現状を見直し、病院に対する診療報酬を手厚くする」ことが必要と明記。また、そのため改定プロセスを改め、中医協の委員構成、在り方そのものの見直しを検討するとした。また、医師の適正配置については、自由開業制の否定を正面から言及。医療に公金が投入され、医師養成にも多額の税金が投入されていることを鑑みれば「医師が地域や診療科を選ぶこと等に完全に自由であることは必然ではない」と断言。ドイツで導入している保険医定数制および、今後実施予定の保険医過剰地域での1点単価(診療報酬)の減額方式にも言及した。
患者のフリーアクセスの制限についてもイギリス、アメリカの現状に触れて説き、更には医師業務の認定看護師への移譲、「医療再生計画」策定による急性期病院への医療資源の集中、民間医療保険の育成、後発医薬品使用の促進、レセオンライン化、混合診療の解禁、免責制の導入と、従来に比べ今回の「建議」は大幅に踏み込んできた。
これらは、事実の歪曲や作為が随所に見られており、まっとうな内容ではない。これらに反論する。
◆ 診療報酬で医師不足の解消は出来ない 事実が証明
財政審は、診療所の事業所得(収支差額)と勤務医の年収という、比較不可能なデータを用い、開業医の年収が勤務医の倍と強調し、診療所の報酬を下げ病院に重点配分することを説いてきた。しかし、これは医師不足問題を医師の給与問題へと矮小化し、摩り替えているに過ぎない。診療報酬は医療機関の診療に対する対価であり、勤務医個人に支払われるものではない。よって勤務医の待遇改善には直結しない。しかも、前回改定で講じられた診療報酬上の勤務医の負担軽減策は、結果的には「悪化」が40.3%と全く功を奏していないことが中医協・検証部会の調査で判明している。極めつけは財源移転策として導入された外来管理加算「5分ルール」に至っては、中小病院の極端な経営悪化を招来させ、救済とは逆行する結果となっている。つまり姑息な診療報酬対策では限度があり、失敗は歴然としている。
◆ 医療費の配分・実態は病院が68%
いま23都道府県で診療所数が減少 地域医療が危ない
問題とされている診療報酬だが、医科の医療費25兆468億円(H18年度)の内訳は病院が67.5%、診療所が32.5%の構成となっており、実態は病院重視である。診療所は全国7割の外来患者を診ており、これを更に圧縮するということは患者の受ける医療内容の質・安全が低下することを意味する。
現状でも、この10年間で外来の患者1人あたり医療費は、一般が12,888円(?96)から11,067円(?06)へと▲14.1%、老人が20,536円(?96)から16,329円(?06)へ▲20.5%となっている。つまり、"昔の医療費で現代の医療"を行っており、これを医療機関の犠牲と自己努力で凌ぎ支えてきているのである。
当然、医療機関の経営体力は脆弱化しており、96年度?06年度までの医療機関の倒産件数は2002年以降増加傾向にある。とりわけ06年度からは、年間40件の高水準となり08年度は過去最高となっている。しかも、病院の倒産が06年度から減少したのに対し、診療所と歯科診療所は、依然増加傾向にある(「帝国データバンク調査」)。これは診療報酬のマイナス改定の連続と見事に符合している。
診療所の廃業(倒産含む)も増加傾向にあり、新規開業数とほぼ匹敵している。実際、診療所の年間の純増数は06年の1,062から08年は83へと、大幅に急落している。
地域的にも06年からここ3年で青森、新潟、高知、山口など12県で全体の診療所数が減少、08年1年間に限ってみると、北海道、宮城、東京、静岡、大阪、岡山、鹿児島など全国23都道府県で診療所数が減少と大きく変化しているのである(厚労省「医療施設動態調査」)。
つまり、第一線医療が危ういということであり、必然的に、二次医療、救急救命などに患者が集中し、医療崩壊に拍車がかかるということである。
◆ 医療崩壊からの再生は全体の医療費の総枠拡大、底上げが必須
医療崩壊から医療再建、医療再生をするため、医療費総枠の拡大が必須である。医師不足の問題の根本は、医学部定員の削減と長期固定化した低医療費政策にある。中医協・医療経済実態調査で、病院全体の医業収支差額は赤字であり、医療の再生産ができないどころか、医療で経営が成り立たないことを示している。この間一時的な補助金による医師不足対策が空振りに終わっているが、経営体力がないため、当然の帰結である。また、診療所の41.5%が収支差額100万円未満、17.0%が0円未満となっており、病院同様に設備・医療機器の更新や、専門職の配置、安全管理など、医療の再生産が不可能な状態にある。この事実に「建議」は完全に目をつぶっており、しかもワーキングプアが3割にもなっている歯科診療所問題は完全に無視している。
◆「建議」の本音 混合診療解禁と医療の商品化 医師不足解消は口実に利用
ドイツの保険医定数制の問題提起も、既に指摘した事実や政府が認めた医師不足の認識に反しており、しかも日本の開業医の平均年齢が59.1歳であること(転地開業困難)、ドイツの医療費水準が日本の1.2倍(日本の医療費換算で+6.7兆円)の大きさにあることを度外視している。フリーアクセスの制限も、ドイツ、フランス、イギリスは規模の大きな医療費の上での話である。
これらは皆すべて百も承知のはずである。西室財政審会長は会見で「われわれの意見を言わせてもらった」「反発は承知している」とした。「建議」を俯瞰して透けるのは、診療所の連続診療報酬引き下げで、開業医を窮地に追い込み、更に保険医定数制による必要数の「基準化」で、保険医の数の絞込みと、過剰地域で保険点数切り下げを敷き、混合診療解禁の要求を医療現場から挙げさせる、ということである。"貧すれば鈍す"、既に歯科では脱保険が学会などで唱えられ始めている。
そのため財政審はフランスで開業医が協約料金(診療報酬)以外の請求が可能であるとの資料を出し、混合診療解禁派の病院の理事長に、意図して意見を開陳させている。
しかも、民間医療保険の対GDP比がOECD平均0.7%と比べ日本は0.2%と「極めて小さい」と強調。私的医療費支出が1.5%の日本よりも低い、1.1%の英国を除いた、作為的な図を用い、日本の生保の特約に医療保険がついている事実、ドイツは国民の10%が公的保険から離脱し民間医療保険に入っている事実、フランスが非営利の共済組合による自己負担補完の民間医療保険であり政府の関与が強い事実などを、完全に糊塗している。昨今、日本で入院の自己負担分をカバーする医療保険が販売され、義務化された領収明細書発行の狙いがはっきりしたが、商品開発の準備は想像に難くない。
係争中のレセプトオンライン請求義務化は保険者集団によるデータの一元管理で、新商品開発に利用が可能となる。保険者と医療機関の直接契約、支払いの迅速化と審査の省略により、診療報酬の債権化、商品化が加速する。また、直接契約で保険者権限、保険者査定が強まり、療養の給付と診療報酬支払いにギャップが大きく生じる。よって、患者が医療費全額を支払う、療養費払いへの転換要望が医療機関から高まり、保険診療は「療養の給付」から「療養費の支給」へ転換する。混合診療とは、本質的には療養費構成の給付である。最終的には、公・民の二階建て保険、ひいては直接契約に民間医療保険が介在し、民間保険の優等生である米国の「管理医療」といきつく。要は、04年の混合診療騒動の教訓を踏まえた、混合診療解禁の高等戦略なのである。医師不足解消は口実に過ぎないのである。
これにより、皆保険、出来高払い、自由開業医制、フリーアクセス、医師の自由裁量権の日本医療の特性はことごとく、否定されるのである。
◆ 3兆円の医療費増と患者負担解消を 選挙で審判を下そう
このように財政審の「建議」は、医療崩壊の解決に真摯に向き合ってなどいない。そこにあるのは、日本医療を解体し、財界の野望を完遂させようという意図だけである。医療資源の集中も、医療が生活圏にあるべきとの発想を欠いており、患者3割負担の重さを一顧だにせず、高額療養費を引き合いにした新たな理屈で免責制導入を提唱するなどは言語道断である。大量の無保険の反省から、皆保険を目指すオバマ米大統領の「チェンジ」に何も学んでいないのである。イギリスは医療崩壊にあたり、ブレア政権が医療費を1.5倍に増額したが、それすらも教訓にしていないのである。
われわれは、合理的計算のもと8兆円の医療費ギャップが存在すると指摘している。次回診療報酬改定に向け、当座、マイナス改定の復元のためプラス9.4%改定、3兆円規模の医療費の増額を求める。あわせて患者負担の解消を強く要望する。折りしも、日本医師会は大幅な医療費増額と負担引き下げを提唱しており、この方向をわれわれは非常に歓迎し、強く支持している。
近く総選挙がある。われわれは、医療崩壊の再生に向け、力強い審判を下す決意である。
2009年6月15日
日本医療の特性を否定する
財政審「建議」の撤回を求める
神奈川県保険医協会
理事長 池川 明
6月3日、財政制度等審議会は来年度予算編成に関する建議を与謝野財務相に提出した。社会保障費削減の数値目標は避けたものの「社会保障分野においても、骨太方針2006などの歳出改革の基本的方向性は維持する」とし、診療所の診療報酬の引き下げを明確に言及した。それどころか、自由開業医制の規制や患者の医療機関選択の自由(フリーアクセス)の制限など、日本医療の特性を根本否定する内容を盛り込んでいる。いわば、日本の医療界への"挑戦状"であり、医療「解体」、医療の商品化、市場化の指示書となっている。われわれは、この「建議」の撤回を強く求める。
◆ 従来の「建議」を超えた医療内容への介入
建議では、(1)診療報酬の配分見直し、(2)医師の適正配置、(3)医療従事者間の役割分担見直しの3点を早急の課題と設定。これらを医師不足、救急体制の再生策として位置付けた。
そして、第一に「診療所に偏っている現状を見直し、病院に対する診療報酬を手厚くする」ことが必要と明記。また、そのため改定プロセスを改め、中医協の委員構成、在り方そのものの見直しを検討するとした。また、医師の適正配置については、自由開業制の否定を正面から言及。医療に公金が投入され、医師養成にも多額の税金が投入されていることを鑑みれば「医師が地域や診療科を選ぶこと等に完全に自由であることは必然ではない」と断言。ドイツで導入している保険医定数制および、今後実施予定の保険医過剰地域での1点単価(診療報酬)の減額方式にも言及した。
患者のフリーアクセスの制限についてもイギリス、アメリカの現状に触れて説き、更には医師業務の認定看護師への移譲、「医療再生計画」策定による急性期病院への医療資源の集中、民間医療保険の育成、後発医薬品使用の促進、レセオンライン化、混合診療の解禁、免責制の導入と、従来に比べ今回の「建議」は大幅に踏み込んできた。
これらは、事実の歪曲や作為が随所に見られており、まっとうな内容ではない。これらに反論する。
◆ 診療報酬で医師不足の解消は出来ない 事実が証明
財政審は、診療所の事業所得(収支差額)と勤務医の年収という、比較不可能なデータを用い、開業医の年収が勤務医の倍と強調し、診療所の報酬を下げ病院に重点配分することを説いてきた。しかし、これは医師不足問題を医師の給与問題へと矮小化し、摩り替えているに過ぎない。診療報酬は医療機関の診療に対する対価であり、勤務医個人に支払われるものではない。よって勤務医の待遇改善には直結しない。しかも、前回改定で講じられた診療報酬上の勤務医の負担軽減策は、結果的には「悪化」が40.3%と全く功を奏していないことが中医協・検証部会の調査で判明している。極めつけは財源移転策として導入された外来管理加算「5分ルール」に至っては、中小病院の極端な経営悪化を招来させ、救済とは逆行する結果となっている。つまり姑息な診療報酬対策では限度があり、失敗は歴然としている。
◆ 医療費の配分・実態は病院が68%
いま23都道府県で診療所数が減少 地域医療が危ない
問題とされている診療報酬だが、医科の医療費25兆468億円(H18年度)の内訳は病院が67.5%、診療所が32.5%の構成となっており、実態は病院重視である。診療所は全国7割の外来患者を診ており、これを更に圧縮するということは患者の受ける医療内容の質・安全が低下することを意味する。
現状でも、この10年間で外来の患者1人あたり医療費は、一般が12,888円(?96)から11,067円(?06)へと▲14.1%、老人が20,536円(?96)から16,329円(?06)へ▲20.5%となっている。つまり、"昔の医療費で現代の医療"を行っており、これを医療機関の犠牲と自己努力で凌ぎ支えてきているのである。
当然、医療機関の経営体力は脆弱化しており、96年度?06年度までの医療機関の倒産件数は2002年以降増加傾向にある。とりわけ06年度からは、年間40件の高水準となり08年度は過去最高となっている。しかも、病院の倒産が06年度から減少したのに対し、診療所と歯科診療所は、依然増加傾向にある(「帝国データバンク調査」)。これは診療報酬のマイナス改定の連続と見事に符合している。
診療所の廃業(倒産含む)も増加傾向にあり、新規開業数とほぼ匹敵している。実際、診療所の年間の純増数は06年の1,062から08年は83へと、大幅に急落している。
地域的にも06年からここ3年で青森、新潟、高知、山口など12県で全体の診療所数が減少、08年1年間に限ってみると、北海道、宮城、東京、静岡、大阪、岡山、鹿児島など全国23都道府県で診療所数が減少と大きく変化しているのである(厚労省「医療施設動態調査」)。
つまり、第一線医療が危ういということであり、必然的に、二次医療、救急救命などに患者が集中し、医療崩壊に拍車がかかるということである。
◆ 医療崩壊からの再生は全体の医療費の総枠拡大、底上げが必須
医療崩壊から医療再建、医療再生をするため、医療費総枠の拡大が必須である。医師不足の問題の根本は、医学部定員の削減と長期固定化した低医療費政策にある。中医協・医療経済実態調査で、病院全体の医業収支差額は赤字であり、医療の再生産ができないどころか、医療で経営が成り立たないことを示している。この間一時的な補助金による医師不足対策が空振りに終わっているが、経営体力がないため、当然の帰結である。また、診療所の41.5%が収支差額100万円未満、17.0%が0円未満となっており、病院同様に設備・医療機器の更新や、専門職の配置、安全管理など、医療の再生産が不可能な状態にある。この事実に「建議」は完全に目をつぶっており、しかもワーキングプアが3割にもなっている歯科診療所問題は完全に無視している。
◆「建議」の本音 混合診療解禁と医療の商品化 医師不足解消は口実に利用
ドイツの保険医定数制の問題提起も、既に指摘した事実や政府が認めた医師不足の認識に反しており、しかも日本の開業医の平均年齢が59.1歳であること(転地開業困難)、ドイツの医療費水準が日本の1.2倍(日本の医療費換算で+6.7兆円)の大きさにあることを度外視している。フリーアクセスの制限も、ドイツ、フランス、イギリスは規模の大きな医療費の上での話である。
これらは皆すべて百も承知のはずである。西室財政審会長は会見で「われわれの意見を言わせてもらった」「反発は承知している」とした。「建議」を俯瞰して透けるのは、診療所の連続診療報酬引き下げで、開業医を窮地に追い込み、更に保険医定数制による必要数の「基準化」で、保険医の数の絞込みと、過剰地域で保険点数切り下げを敷き、混合診療解禁の要求を医療現場から挙げさせる、ということである。"貧すれば鈍す"、既に歯科では脱保険が学会などで唱えられ始めている。
そのため財政審はフランスで開業医が協約料金(診療報酬)以外の請求が可能であるとの資料を出し、混合診療解禁派の病院の理事長に、意図して意見を開陳させている。
しかも、民間医療保険の対GDP比がOECD平均0.7%と比べ日本は0.2%と「極めて小さい」と強調。私的医療費支出が1.5%の日本よりも低い、1.1%の英国を除いた、作為的な図を用い、日本の生保の特約に医療保険がついている事実、ドイツは国民の10%が公的保険から離脱し民間医療保険に入っている事実、フランスが非営利の共済組合による自己負担補完の民間医療保険であり政府の関与が強い事実などを、完全に糊塗している。昨今、日本で入院の自己負担分をカバーする医療保険が販売され、義務化された領収明細書発行の狙いがはっきりしたが、商品開発の準備は想像に難くない。
係争中のレセプトオンライン請求義務化は保険者集団によるデータの一元管理で、新商品開発に利用が可能となる。保険者と医療機関の直接契約、支払いの迅速化と審査の省略により、診療報酬の債権化、商品化が加速する。また、直接契約で保険者権限、保険者査定が強まり、療養の給付と診療報酬支払いにギャップが大きく生じる。よって、患者が医療費全額を支払う、療養費払いへの転換要望が医療機関から高まり、保険診療は「療養の給付」から「療養費の支給」へ転換する。混合診療とは、本質的には療養費構成の給付である。最終的には、公・民の二階建て保険、ひいては直接契約に民間医療保険が介在し、民間保険の優等生である米国の「管理医療」といきつく。要は、04年の混合診療騒動の教訓を踏まえた、混合診療解禁の高等戦略なのである。医師不足解消は口実に過ぎないのである。
これにより、皆保険、出来高払い、自由開業医制、フリーアクセス、医師の自由裁量権の日本医療の特性はことごとく、否定されるのである。
◆ 3兆円の医療費増と患者負担解消を 選挙で審判を下そう
このように財政審の「建議」は、医療崩壊の解決に真摯に向き合ってなどいない。そこにあるのは、日本医療を解体し、財界の野望を完遂させようという意図だけである。医療資源の集中も、医療が生活圏にあるべきとの発想を欠いており、患者3割負担の重さを一顧だにせず、高額療養費を引き合いにした新たな理屈で免責制導入を提唱するなどは言語道断である。大量の無保険の反省から、皆保険を目指すオバマ米大統領の「チェンジ」に何も学んでいないのである。イギリスは医療崩壊にあたり、ブレア政権が医療費を1.5倍に増額したが、それすらも教訓にしていないのである。
われわれは、合理的計算のもと8兆円の医療費ギャップが存在すると指摘している。次回診療報酬改定に向け、当座、マイナス改定の復元のためプラス9.4%改定、3兆円規模の医療費の増額を求める。あわせて患者負担の解消を強く要望する。折りしも、日本医師会は大幅な医療費増額と負担引き下げを提唱しており、この方向をわれわれは非常に歓迎し、強く支持している。
近く総選挙がある。われわれは、医療崩壊の再生に向け、力強い審判を下す決意である。
2009年6月15日