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2010/12/3 地域医療対策部長談話「利用者負担増・給付削減 軽度者切り捨てが『介護の社会化』か?社会保障の必要十分原則に逆行する介護保険『見直し』の撤回を求める」
利用者負担増・給付削減 軽度者切り捨てが「介護の社会化」か?
社会保障の必要十分原則に逆行する介護保険「見直し」の撤回を求める
神奈川県保険医協会
地域医療対策部長 桑島 政臣
厚生労働省の社保審・介護保険部会は11月30日付で、「介護保険制度の見直しに関する意見書」を公表した。この報告書をもとに来年の通常国会に次期介護保険制度改正法案が提出される。11月25日の同部会でのとりまとめを受け、(1)要支援者・軽度者の給付制限、利用者負担の2割への引き上げ(倍化)、(2)「高所得者」(年間所得200万円以上)の利用者負担の倍化、(3)ケアプラン作成への利用者負担の導入、(4)必要な給付拡充の際には、必要な負担増に見合った財源を確保する「ペイ・アズ・ユーゴー原則」に則ること、(5)介護療養病床の廃止方針の延長-などの方向性が示された。ケアプランへの利用者負担導入や要支援者・軽度者への給付削減、介護療養病床の廃止方針などについては、委員からの反対意見も併記され、玉虫色の報告書となった。今後の議論次第では、「高所得者」や軽度者の利用者負担が2割に倍化、サービス給付は重度者などに重点化され、軽度者は切り捨てられることになりかねない。われわれは、社会保障の必要十分原則に逆行する介護保険「見直し」の撤回を強く求める。
高齢化が急速に進むなか、介護サービス利用者数は、制度発足時の149万人(平成12年4月分)から384万人(平成21年4月分)と約2.6倍、介護費用は3.6兆円(平成12年度)から7.9兆円(平成22年度)と2倍以上になっている。65歳以上(第1号被保険者)の保険料(全国平均)も、第1期(平成12~平成14年度)の2,911円から第4期(平成21~23年度)には4,610円と増加しており、報告書では第5期(平成24~26年度)には月額5,000円超になると試算。今回の数々の「見直し」案は、保険料増加か、さもなくば、応分の負担をせよと利用者に二者択一を迫るものとなっている。
また、給付の「効率化」として、要支援者・軽度の要介護者への給付制限が示された。介護保険制度下では、介護認定審査会による要介護認定、介護度による区分支給限度基準額の設定、事前のケアプラン作成に基づいたサービス提供など、すでに何重ものゲートキーパーにより、給付が制限されている。65歳以上の被保険者のうち、要介護認定を受けているのは16.0%(平成21年3月末)、サービス受給者は13.3%(平成20年度平均)と、すでに「制度あって 給付なし」の状況である。平成18年からは、要支援1・2が導入され、それまで要介護1であった利用者の7割が要支援に低位移行させられ、生活援助の給付制限が導入された。利用者などからの批判を受け、翌年に見直した経緯もある。にもかかわらず、今回再び、要支援者・軽度者の生活援助の給付制限が盛り込まれた。また同じ轍を踏むというのだろうか。
さらに、積極的にサービスを利用できるようにと、制度発足時から利用者負担がない居宅サービスのケアプラン作成への「利用者負担の導入」を示している。毎月の作成が必要なケアプランを有料にし、負担感を与えることによって、介護サービス受給自体を諦めさせようという意向が透けて見える。
内閣府が11月20日に発表した「介護保険制度に関する世論調査」では、保険料負担増加の抑制手段として、「公費負担割合の引き上げ」との回答が43.1%と最も高い。サービスを充実させた際に増大する費用負担についても同様で、国民は公費負担による制度拡充を求めている。同部会でも公費負担を現行の5割から6割に引き上げる案も出されたが、報告書では「安定した財源が確保されない以上、公費負担割合を見直すことは困難」と結論を先送りにした。民主党は昨年の総選挙のマニフェストで「介護保険への国費投入を8,000億円程度増やす」としている。公約どおりに公費負担の引き上げを実現すべきである。
介護保険制度は、「介護の社会化」をキャッチフレーズに鳴り物入りで導入された。制度発足から10年が経過したが、今回の報告書は、その理念から逆行し、給付対象の範囲を狭め、再び家族に負担を押し付ける内容となっている。また、新たな施策や給付を拡充する際には、恒久的な負担増や給付削減での財源確保を求める「ペイ・アズ・ユーゴー原則」は、社会保障の原則と相入れない。必要に応じて十分な給付が受けられる介護保険制度に向けた議論を強く求める。
2010年12月3日
利用者負担増・給付削減 軽度者切り捨てが「介護の社会化」か?
社会保障の必要十分原則に逆行する介護保険「見直し」の撤回を求める
神奈川県保険医協会
地域医療対策部長 桑島 政臣
厚生労働省の社保審・介護保険部会は11月30日付で、「介護保険制度の見直しに関する意見書」を公表した。この報告書をもとに来年の通常国会に次期介護保険制度改正法案が提出される。11月25日の同部会でのとりまとめを受け、(1)要支援者・軽度者の給付制限、利用者負担の2割への引き上げ(倍化)、(2)「高所得者」(年間所得200万円以上)の利用者負担の倍化、(3)ケアプラン作成への利用者負担の導入、(4)必要な給付拡充の際には、必要な負担増に見合った財源を確保する「ペイ・アズ・ユーゴー原則」に則ること、(5)介護療養病床の廃止方針の延長-などの方向性が示された。ケアプランへの利用者負担導入や要支援者・軽度者への給付削減、介護療養病床の廃止方針などについては、委員からの反対意見も併記され、玉虫色の報告書となった。今後の議論次第では、「高所得者」や軽度者の利用者負担が2割に倍化、サービス給付は重度者などに重点化され、軽度者は切り捨てられることになりかねない。われわれは、社会保障の必要十分原則に逆行する介護保険「見直し」の撤回を強く求める。
高齢化が急速に進むなか、介護サービス利用者数は、制度発足時の149万人(平成12年4月分)から384万人(平成21年4月分)と約2.6倍、介護費用は3.6兆円(平成12年度)から7.9兆円(平成22年度)と2倍以上になっている。65歳以上(第1号被保険者)の保険料(全国平均)も、第1期(平成12~平成14年度)の2,911円から第4期(平成21~23年度)には4,610円と増加しており、報告書では第5期(平成24~26年度)には月額5,000円超になると試算。今回の数々の「見直し」案は、保険料増加か、さもなくば、応分の負担をせよと利用者に二者択一を迫るものとなっている。
また、給付の「効率化」として、要支援者・軽度の要介護者への給付制限が示された。介護保険制度下では、介護認定審査会による要介護認定、介護度による区分支給限度基準額の設定、事前のケアプラン作成に基づいたサービス提供など、すでに何重ものゲートキーパーにより、給付が制限されている。65歳以上の被保険者のうち、要介護認定を受けているのは16.0%(平成21年3月末)、サービス受給者は13.3%(平成20年度平均)と、すでに「制度あって 給付なし」の状況である。平成18年からは、要支援1・2が導入され、それまで要介護1であった利用者の7割が要支援に低位移行させられ、生活援助の給付制限が導入された。利用者などからの批判を受け、翌年に見直した経緯もある。にもかかわらず、今回再び、要支援者・軽度者の生活援助の給付制限が盛り込まれた。また同じ轍を踏むというのだろうか。
さらに、積極的にサービスを利用できるようにと、制度発足時から利用者負担がない居宅サービスのケアプラン作成への「利用者負担の導入」を示している。毎月の作成が必要なケアプランを有料にし、負担感を与えることによって、介護サービス受給自体を諦めさせようという意向が透けて見える。
内閣府が11月20日に発表した「介護保険制度に関する世論調査」では、保険料負担増加の抑制手段として、「公費負担割合の引き上げ」との回答が43.1%と最も高い。サービスを充実させた際に増大する費用負担についても同様で、国民は公費負担による制度拡充を求めている。同部会でも公費負担を現行の5割から6割に引き上げる案も出されたが、報告書では「安定した財源が確保されない以上、公費負担割合を見直すことは困難」と結論を先送りにした。民主党は昨年の総選挙のマニフェストで「介護保険への国費投入を8,000億円程度増やす」としている。公約どおりに公費負担の引き上げを実現すべきである。
介護保険制度は、「介護の社会化」をキャッチフレーズに鳴り物入りで導入された。制度発足から10年が経過したが、今回の報告書は、その理念から逆行し、給付対象の範囲を狭め、再び家族に負担を押し付ける内容となっている。また、新たな施策や給付を拡充する際には、恒久的な負担増や給付削減での財源確保を求める「ペイ・アズ・ユーゴー原則」は、社会保障の原則と相入れない。必要に応じて十分な給付が受けられる介護保険制度に向けた議論を強く求める。
2010年12月3日