保険医の生活と権利を守り、国民医療の
向上をめざす

神奈川県保険医協会とは

開業医を中心とする保険医の生活と権利を守り、
国民の健康と医療の向上を目指す

TOP > 神奈川県保険医協会とは > 私たちの考え > 2006/8/11 医療運動部会長談話「医師と患者との信頼関係を壊すNTTデータの後発医薬品切り替え通知事業に抗議する」

2006/8/11 医療運動部会長談話「医師と患者との信頼関係を壊すNTTデータの後発医薬品切り替え通知事業に抗議する」

医師と患者との信頼関係を壊すNTTデータの

後発医薬品切り替え通知事業に抗議する

神奈川県保険医協会

医療運動部会長  池川 明


 この4月より、医療現場では「処方箋様式」の変更がなされ後発医薬品(ジェネリック医薬品)処方への医師の同意欄設置と診療報酬での経済優遇措置が図られた。後発品使用促進の環境整備である。

 これと軌を一にしNTTデータがこの4月より、患者個々に先発医薬品を後発医薬品へ切り替えることを機械的に促すサービスを医療保険者向けに開始していることが判明した。

 われわれは、この医療費削減のみに着目した、短絡的なジェネリック医薬品切り替えの誘導事業は、診療現場への不当な干渉であり、患者との信頼関係を壊すものであり、強く抗議するものである。また、これらの事業は、映画「ジョンQ」やドラマ「ER(救急救命室)」などで日本にも知られるようになってきた、米国で悪名高い管理医療(マネージド・ケア)の日本導入に先鞭をつけるものである。これは患者・国民の保険医療への自由なアクセスを妨げることを意味し、保険医療を守るためにも事業の撤回を強く求めるものである。

 このNTTデータの事業は、「『ジェネリック医薬品促進通知書』提供サービス」といい、医療保険者が管理するレセプト(診療報酬明細書)情報を基に、処方された医薬品でジェネリック医薬品に切り替え可能な品目を分析し、切り替えた場合の薬剤名・価格(削減効果)をまとめた「通知書」を患者個別に作成。これを医療保険者が患者(被保険者)に通知、患者から医師に切り替えを申し出させ、医療費を削減しようという事業である。

 この通知書は、「ジェネリックに切り替えると最大4,885円安くなります」と金額を大文字表示し、医療機関、薬局ごとに削減額の幅とジェネリック医薬品の品名を列挙するという手の込んだものである。しかも費用負担は、分析・通知書作成にはかからず、実際にジェネリック医薬品に転換し削減された薬剤費の50%、つまり削減額折半の"成功報酬"で、これもセールスポイントとなっている。実務的にはNTTデータが通知実施後の変化を試算し、ひと月単位で精算するシステムとなる。

 そもそも日本の医療システムは、保険者が医療提供が不可能なため医療機関に委託契約で実施し、医療機関の費用請求を審査の上、保険者が診療報酬を払う仕組みとなっている。また医師の自由裁量は医師法で担保され、医薬品の処方権は医師に属している。医師は知識、経験に基づき適切な医薬品を処方している。

 よって、このNTTデータのジェネリック促進事業は、第一に医師の処方権への侵害である。更には、ジェネリックは先発品と違い、臨床試験は実施されておらず、溶解・溶質試験のみで、玉石混交である現状を無視し、経済性のみを優先に機械的に患者から医師に医薬品処方の変更を迫らせることは、治療上の有効性・安全性を損い、ひいては医師と患者の信頼関係を壊すものとなっていく危険性が非常に高い。

 しかも、疾病名、薬剤名を通知してはならないと禁じられている医療費通知の範囲を大きく逸脱している。その上、レセプトの外部預託と目的外使用は、医療保険者に求められる守秘義務違反の疑いが強い。極めつけは、この事業紹介のセミナーで"伝道師"を務めているのが岡光事件で連座責任を取らされた、医療の表裏を知り尽くした元厚労省大臣官房審議官の和田勝氏であり、言語道断である。

 更に問題は、01年に同時に誕生した総合規制改革会議と「保険者機能を推進する会」の主張してきた保険者機能の強化の具体化が、このNTTデータの事業そのものとなっている。その上、医療改革法で決められた特定保健指導は、イコール医療保険者による疾病管理システム(ディジーズマネージメント)であり、「保険者機能を推進する会」内部で実施されてきたものである。とりわけ中核を成す、健診データとレセプトデータの突き合せ分析システムはNTTデータが開発してきたものである。

 これらを象徴するのが、05年10月に設立された損保ジャパンとオムロンヘルスケアとの合弁会社、ヘルスケア・フロンティア・ジャパンへのNTTデータの資本参加である。この会社が提供するビジネス、健康増進・疾病予防サービスは、特定保健指導の内容と瓜二つである。

 これらの組織的な動きは、診療内容・医薬品処方の随所に保険者が口を出し、治療制限を行う米国の管理医療(マネージド・ケア)を十分に予感させる。この導入は、断じて容認できない。

 以上にみるように、目先の医療費の削減のみに着目したこの事業は、患者・国民に資するものとはならず、企業の深謀遠慮の下、「いつでも、どこでも、だれでも」の日本の医療を崩す企図を内包している。われわれは、事業の撤回を改めて求めるとともに、厚労省に厳正な指導を強く求めるものである。

2006年8月11日

 

医師と患者との信頼関係を壊すNTTデータの

後発医薬品切り替え通知事業に抗議する

神奈川県保険医協会

医療運動部会長  池川 明


 この4月より、医療現場では「処方箋様式」の変更がなされ後発医薬品(ジェネリック医薬品)処方への医師の同意欄設置と診療報酬での経済優遇措置が図られた。後発品使用促進の環境整備である。

 これと軌を一にしNTTデータがこの4月より、患者個々に先発医薬品を後発医薬品へ切り替えることを機械的に促すサービスを医療保険者向けに開始していることが判明した。

 われわれは、この医療費削減のみに着目した、短絡的なジェネリック医薬品切り替えの誘導事業は、診療現場への不当な干渉であり、患者との信頼関係を壊すものであり、強く抗議するものである。また、これらの事業は、映画「ジョンQ」やドラマ「ER(救急救命室)」などで日本にも知られるようになってきた、米国で悪名高い管理医療(マネージド・ケア)の日本導入に先鞭をつけるものである。これは患者・国民の保険医療への自由なアクセスを妨げることを意味し、保険医療を守るためにも事業の撤回を強く求めるものである。

 このNTTデータの事業は、「『ジェネリック医薬品促進通知書』提供サービス」といい、医療保険者が管理するレセプト(診療報酬明細書)情報を基に、処方された医薬品でジェネリック医薬品に切り替え可能な品目を分析し、切り替えた場合の薬剤名・価格(削減効果)をまとめた「通知書」を患者個別に作成。これを医療保険者が患者(被保険者)に通知、患者から医師に切り替えを申し出させ、医療費を削減しようという事業である。

 この通知書は、「ジェネリックに切り替えると最大4,885円安くなります」と金額を大文字表示し、医療機関、薬局ごとに削減額の幅とジェネリック医薬品の品名を列挙するという手の込んだものである。しかも費用負担は、分析・通知書作成にはかからず、実際にジェネリック医薬品に転換し削減された薬剤費の50%、つまり削減額折半の"成功報酬"で、これもセールスポイントとなっている。実務的にはNTTデータが通知実施後の変化を試算し、ひと月単位で精算するシステムとなる。

 そもそも日本の医療システムは、保険者が医療提供が不可能なため医療機関に委託契約で実施し、医療機関の費用請求を審査の上、保険者が診療報酬を払う仕組みとなっている。また医師の自由裁量は医師法で担保され、医薬品の処方権は医師に属している。医師は知識、経験に基づき適切な医薬品を処方している。

 よって、このNTTデータのジェネリック促進事業は、第一に医師の処方権への侵害である。更には、ジェネリックは先発品と違い、臨床試験は実施されておらず、溶解・溶質試験のみで、玉石混交である現状を無視し、経済性のみを優先に機械的に患者から医師に医薬品処方の変更を迫らせることは、治療上の有効性・安全性を損い、ひいては医師と患者の信頼関係を壊すものとなっていく危険性が非常に高い。

 しかも、疾病名、薬剤名を通知してはならないと禁じられている医療費通知の範囲を大きく逸脱している。その上、レセプトの外部預託と目的外使用は、医療保険者に求められる守秘義務違反の疑いが強い。極めつけは、この事業紹介のセミナーで"伝道師"を務めているのが岡光事件で連座責任を取らされた、医療の表裏を知り尽くした元厚労省大臣官房審議官の和田勝氏であり、言語道断である。

 更に問題は、01年に同時に誕生した総合規制改革会議と「保険者機能を推進する会」の主張してきた保険者機能の強化の具体化が、このNTTデータの事業そのものとなっている。その上、医療改革法で決められた特定保健指導は、イコール医療保険者による疾病管理システム(ディジーズマネージメント)であり、「保険者機能を推進する会」内部で実施されてきたものである。とりわけ中核を成す、健診データとレセプトデータの突き合せ分析システムはNTTデータが開発してきたものである。

 これらを象徴するのが、05年10月に設立された損保ジャパンとオムロンヘルスケアとの合弁会社、ヘルスケア・フロンティア・ジャパンへのNTTデータの資本参加である。この会社が提供するビジネス、健康増進・疾病予防サービスは、特定保健指導の内容と瓜二つである。

 これらの組織的な動きは、診療内容・医薬品処方の随所に保険者が口を出し、治療制限を行う米国の管理医療(マネージド・ケア)を十分に予感させる。この導入は、断じて容認できない。

 以上にみるように、目先の医療費の削減のみに着目したこの事業は、患者・国民に資するものとはならず、企業の深謀遠慮の下、「いつでも、どこでも、だれでも」の日本の医療を崩す企図を内包している。われわれは、事業の撤回を改めて求めるとともに、厚労省に厳正な指導を強く求めるものである。

2006年8月11日