神奈川県保険医協会とは
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2006/3/23 医療運動部会長談話「リハビリはあくまでも医療 日数制限を撤廃し原点に立ち戻ることを求める」
リハビリはあくまでも医療
日数制限を撤廃し原点に立ち戻ることを求める
神奈川県保険医協会
医療運動部会長 池川 明
中医協は3月14日、社会問題化しているリハビリ診療報酬の緊急是正を決定し、これまで日数打ち切りとなっていた、心筋梗塞や維持期リハビリについて一定の是正措置が今年4月よりとられることとなった。見直しを頑なに拒否していた厚労省を動かすにあたって、様々な形で尽力いただいた国会議員、関係方面の方々に御礼を申し上げる。
この緊急是正は、全国48万名の日数制限撤回を求めた署名をはじめ、多数の各界賛同とマスコミの大注目のもと直前に開催された「リハビリを考える市民の集い」の成功など、切実な患者・国民の願いに応え事態が動いたものである。
しかしながら、この是正内容は逓減制導入など更なる問題や、根本問題である日数制限や疾患別報酬の撤回には至っていないなど多くの課題を残している。
3月20日、柳澤厚労大臣は昨年の診療報酬改定で「大きな間違いはなかった」「大半の患者が必要なリハビリを受けられている」と国会で答弁したが、この事実認識は現場と大きく乖離している。
このリハビリ問題の実態調査結果が3月12日に検証部会で報告されたが、「身体機能の改善の見込みがある」のに日数打切りとなったものとともに、「状態維持のためにリハビリの継続が必要」なのに日数打切りとなった数字が公表されている。この両者は「医療上必要なリハビリ」であり、この合計でみると心臓病で14%、脳梗塞15%、関節疾患30%、慢性閉塞性肺疾患33%が打ち切りとなっている。つまり、制度欠陥があったことが厚労省調査で明確に示されたのである。
この是正策として(1)「身体機能改善」を条件に心臓病、慢性閉塞性肺疾患などを日数制限の対象外とし、(2)進行性の難病である筋ジストロフィーや脊索硬化症などは「治療上有効」であれば対象外とした。そして(3)維持期リハビリに介護保険で対応できるまでの暫定措置として、月単位の包括点数リハビリ医学管理料が設定された。しかも(4)「財政中立」のため日数上限の10日から30日前に診療報酬を引き下げる逓減制が導入されるなど、とても複雑な仕組みとなってしまっている。
医療は医師の裁量権の下、医師の判断で必要な治療を提供できる制度であり、健康保険法がそれを保障してきた。日数制限とはこの否定である。リハビリは身体機能改善は勿論、QOL改善をも含んだ医療である。医療上の必要性を、「身体機能改善」を条件にしていることもおかしな話である。維持期リハビリは介護保険へとの方針も依然と不変だが、本来、介護とは生活支援であり医療ではない。
介護保険は老人医療の延命策として考案され、老人福祉(措置制度)の解体と統合の産物として誕生した。その際に医療保険の一部を移管したに過ぎず、医療保険の代替制度では決してない。
年率10%前後で増加する介護保険の給付抑制のために昨年、制度改定がなされたが、この下でどうして維持期リハビリが保障されるのであろうか。
しかも医療は必要な治療を現物で給付する制度であるが、介護はサービス費用を限度額の範囲で金銭で給付する制度である。限度額を使い切れば、自費でサービス購入をせざるを得ず、増加する独居高齢者に低所得者が多い現実のもと不可能な話でもある。導入された逓減制による医療機関経営の圧迫と早期打切りを患者側は非常に懸念していることも指摘をしておきたい。
弊害が大きく行き過ぎた医療費抑制策を方向転換したイギリスは、医療費水準(対GDP)を8.0%、先進30ヶ国中19位へと上昇させ、ついに21位の日本より上位に位置することとなった(OECD Health Data2006)。ヨーロッパ諸国の医療費水準は日本よりはるかに高い。政権が保守であれ革新であれ、コンセンサスとなっている。しかも国民負担率が高率であっても経済力は削がれておらず、国際競争力ランキングの上位には北欧諸国が顔を揃えている。
われわれは、リハビリの日数制限を撤回し改定の原点に立ち戻り、同時にリハビリ医療充実のため必要な財源を投入するよう政治が英断を下されるよう強く期待するものである。
2006年3月23日
リハビリはあくまでも医療
日数制限を撤廃し原点に立ち戻ることを求める
神奈川県保険医協会
医療運動部会長 池川 明
中医協は3月14日、社会問題化しているリハビリ診療報酬の緊急是正を決定し、これまで日数打ち切りとなっていた、心筋梗塞や維持期リハビリについて一定の是正措置が今年4月よりとられることとなった。見直しを頑なに拒否していた厚労省を動かすにあたって、様々な形で尽力いただいた国会議員、関係方面の方々に御礼を申し上げる。
この緊急是正は、全国48万名の日数制限撤回を求めた署名をはじめ、多数の各界賛同とマスコミの大注目のもと直前に開催された「リハビリを考える市民の集い」の成功など、切実な患者・国民の願いに応え事態が動いたものである。
しかしながら、この是正内容は逓減制導入など更なる問題や、根本問題である日数制限や疾患別報酬の撤回には至っていないなど多くの課題を残している。
3月20日、柳澤厚労大臣は昨年の診療報酬改定で「大きな間違いはなかった」「大半の患者が必要なリハビリを受けられている」と国会で答弁したが、この事実認識は現場と大きく乖離している。
このリハビリ問題の実態調査結果が3月12日に検証部会で報告されたが、「身体機能の改善の見込みがある」のに日数打切りとなったものとともに、「状態維持のためにリハビリの継続が必要」なのに日数打切りとなった数字が公表されている。この両者は「医療上必要なリハビリ」であり、この合計でみると心臓病で14%、脳梗塞15%、関節疾患30%、慢性閉塞性肺疾患33%が打ち切りとなっている。つまり、制度欠陥があったことが厚労省調査で明確に示されたのである。
この是正策として(1)「身体機能改善」を条件に心臓病、慢性閉塞性肺疾患などを日数制限の対象外とし、(2)進行性の難病である筋ジストロフィーや脊索硬化症などは「治療上有効」であれば対象外とした。そして(3)維持期リハビリに介護保険で対応できるまでの暫定措置として、月単位の包括点数リハビリ医学管理料が設定された。しかも(4)「財政中立」のため日数上限の10日から30日前に診療報酬を引き下げる逓減制が導入されるなど、とても複雑な仕組みとなってしまっている。
医療は医師の裁量権の下、医師の判断で必要な治療を提供できる制度であり、健康保険法がそれを保障してきた。日数制限とはこの否定である。リハビリは身体機能改善は勿論、QOL改善をも含んだ医療である。医療上の必要性を、「身体機能改善」を条件にしていることもおかしな話である。維持期リハビリは介護保険へとの方針も依然と不変だが、本来、介護とは生活支援であり医療ではない。
介護保険は老人医療の延命策として考案され、老人福祉(措置制度)の解体と統合の産物として誕生した。その際に医療保険の一部を移管したに過ぎず、医療保険の代替制度では決してない。
年率10%前後で増加する介護保険の給付抑制のために昨年、制度改定がなされたが、この下でどうして維持期リハビリが保障されるのであろうか。
しかも医療は必要な治療を現物で給付する制度であるが、介護はサービス費用を限度額の範囲で金銭で給付する制度である。限度額を使い切れば、自費でサービス購入をせざるを得ず、増加する独居高齢者に低所得者が多い現実のもと不可能な話でもある。導入された逓減制による医療機関経営の圧迫と早期打切りを患者側は非常に懸念していることも指摘をしておきたい。
弊害が大きく行き過ぎた医療費抑制策を方向転換したイギリスは、医療費水準(対GDP)を8.0%、先進30ヶ国中19位へと上昇させ、ついに21位の日本より上位に位置することとなった(OECD Health Data2006)。ヨーロッパ諸国の医療費水準は日本よりはるかに高い。政権が保守であれ革新であれ、コンセンサスとなっている。しかも国民負担率が高率であっても経済力は削がれておらず、国際競争力ランキングの上位には北欧諸国が顔を揃えている。
われわれは、リハビリの日数制限を撤回し改定の原点に立ち戻り、同時にリハビリ医療充実のため必要な財源を投入するよう政治が英断を下されるよう強く期待するものである。
2006年3月23日