神奈川県保険医協会とは
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2012/1/26 政策部長談話「地域医療を守るため、医科・再診料の74点への引き上げを求める」
地域医療を守るため、
医科・再診料の74点への引き上げを求める
神奈川県保険医協会
政策部長 桑島 政臣
今次診療報酬改定は改定率+0.00%と決まり、薬価引き下げ分▲1.38%(▲5,500億円)を診療報酬本体+1.38%(+5,500億円)で相殺する形となった。本体の医科財源は4,700億円と前回4,800億円と同等水準となっているが、診療所と病院の配分を「1:10」と決められた前回と違い配分枠のタガははめられていない。中医協医療経済実態調査では診療所(個人・入院収益なし)の収支差額は前回調査(H21年度)比で▲14.5%(▲356.4万円/年)と人件費一人分相当の減益となっている。医療の費用構造の半分は人件費(厚労白書)が占める。人員の削減・合理化は医療内容・質の現行水準の維持を困難にし、第一線の疲弊は二次救急、高度救急への患者集中と機能麻痺に連動していく。われわれは、第一線医療の充実と、高齢社会への対応のため、再診料の74点への引き上げを強く求める。
再診料の74点(740円)は医療崩壊が顕在化する以前の98年度水準である。98年度に診療報酬の初のマイナス改定が実施され、以降の改定で減額の連続となり69点(690円)となっている。
既に当会が指摘した通り、前回改定で外来管理加算の5分ルール廃止に伴う算定回数増(費用増)の予測が困難との理由で便宜的に再診料を2点(20円)引き下げたものの、実際は算定回数の1万回減少、▲0.03%の微減と費用増がなかったことが判明している。よって2点復元は道理である。
さらに、診療所の外来患者一人あたりの診療費は、1998年度に14,141円だったものが2010年度は10,501円と▲25.7%と極端に減少している(社会医療診療行為別調査)。この間の診療報酬の累計改定率▲8.4%を大きく上回っている。この数字は人口比の一人当たり医療費ではなく、公定価格の実際の保険診療での患者一人当たりの数字である。極端に患者が健康になったり、医療技術が進歩した結果の数字ではない。医療費抑制策による結果であり、この数字は、質を維持する医療機関の犠牲での成立を意味し、医療内容の劣化の危機を意味している。
再診料を69点から74点へ引き上げるのに必要な5点分の財源は400億円(80億円×5点:社会医療診療行為別調査より推計)にすぎない。1点120億円との一部報道もあったが、前回改定の数字であり、過重な患者負担により受診がどんどん抑制されており、1点の影響度は80億円まで落ち込んでいる。つまり、5点を引き上げても、今回の改定の医科財源4,700億円の僅か8.5%で1割にも満たないのである。十分に政策的な判断、配分は可能である。
今次改定では、急性期入院重視、在宅重視と地域包括ケアシステム導入の方針が掲げられており、団塊の世代の高齢化のもと、病院から診療所へと大量に患者を移動させることが歴然としている。
民主党はマニフェストで「地域医療を守る医療機関の維持」「OECD平均までの医療費総枠拡大」を掲げ、無駄の削減で16.8兆円の財源捻出とし政権交代をした。医療界はその実現に多くが期待した。しかし、政権交代後2回目となった今次診療報酬改定の改定率+0.004%は予算書では+0.00%であり、砂上の楼閣の感が濃厚となっている。
せめて、第一線医療を守るため、医科・再診料の74点への引き上げの実現を望みたい。
2012年1月26日
地域医療を守るため、
医科・再診料の74点への引き上げを求める
神奈川県保険医協会
政策部長 桑島 政臣
今次診療報酬改定は改定率+0.00%と決まり、薬価引き下げ分▲1.38%(▲5,500億円)を診療報酬本体+1.38%(+5,500億円)で相殺する形となった。本体の医科財源は4,700億円と前回4,800億円と同等水準となっているが、診療所と病院の配分を「1:10」と決められた前回と違い配分枠のタガははめられていない。中医協医療経済実態調査では診療所(個人・入院収益なし)の収支差額は前回調査(H21年度)比で▲14.5%(▲356.4万円/年)と人件費一人分相当の減益となっている。医療の費用構造の半分は人件費(厚労白書)が占める。人員の削減・合理化は医療内容・質の現行水準の維持を困難にし、第一線の疲弊は二次救急、高度救急への患者集中と機能麻痺に連動していく。われわれは、第一線医療の充実と、高齢社会への対応のため、再診料の74点への引き上げを強く求める。
再診料の74点(740円)は医療崩壊が顕在化する以前の98年度水準である。98年度に診療報酬の初のマイナス改定が実施され、以降の改定で減額の連続となり69点(690円)となっている。
既に当会が指摘した通り、前回改定で外来管理加算の5分ルール廃止に伴う算定回数増(費用増)の予測が困難との理由で便宜的に再診料を2点(20円)引き下げたものの、実際は算定回数の1万回減少、▲0.03%の微減と費用増がなかったことが判明している。よって2点復元は道理である。
さらに、診療所の外来患者一人あたりの診療費は、1998年度に14,141円だったものが2010年度は10,501円と▲25.7%と極端に減少している(社会医療診療行為別調査)。この間の診療報酬の累計改定率▲8.4%を大きく上回っている。この数字は人口比の一人当たり医療費ではなく、公定価格の実際の保険診療での患者一人当たりの数字である。極端に患者が健康になったり、医療技術が進歩した結果の数字ではない。医療費抑制策による結果であり、この数字は、質を維持する医療機関の犠牲での成立を意味し、医療内容の劣化の危機を意味している。
再診料を69点から74点へ引き上げるのに必要な5点分の財源は400億円(80億円×5点:社会医療診療行為別調査より推計)にすぎない。1点120億円との一部報道もあったが、前回改定の数字であり、過重な患者負担により受診がどんどん抑制されており、1点の影響度は80億円まで落ち込んでいる。つまり、5点を引き上げても、今回の改定の医科財源4,700億円の僅か8.5%で1割にも満たないのである。十分に政策的な判断、配分は可能である。
今次改定では、急性期入院重視、在宅重視と地域包括ケアシステム導入の方針が掲げられており、団塊の世代の高齢化のもと、病院から診療所へと大量に患者を移動させることが歴然としている。
民主党はマニフェストで「地域医療を守る医療機関の維持」「OECD平均までの医療費総枠拡大」を掲げ、無駄の削減で16.8兆円の財源捻出とし政権交代をした。医療界はその実現に多くが期待した。しかし、政権交代後2回目となった今次診療報酬改定の改定率+0.004%は予算書では+0.00%であり、砂上の楼閣の感が濃厚となっている。
せめて、第一線医療を守るため、医科・再診料の74点への引き上げの実現を望みたい。
2012年1月26日