神奈川県保険医協会とは
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2012/2/29 政策部長談話「必要性に大疑問符 一体改革とは分離?! 国民総背番号制の危険性をただし、撤回を求める」
必要性に大疑問符 一体改革とは分離?!
国民総背番号制の危険性をただし、
撤回を求める
神奈川県保険医協会
政策部長 桑島 政臣
2月14日、共通番号制の導入に向けた法案(「行政手続きにおける特定の個人を識別するための番号の利用等に関する法律」)が国会に上程された。医療、年金、介護、子育てなど社会保障と税務の情報を個人別に紐付けし、一元管理する、いわゆる国民総背番号制である。折しも、法案上程直後となった、横浜で開催された内閣官房の主催による番号制シンポジウム(2月26日)は、疑問や問題性の指摘が、参加者の間から次々と噴出。終了時間を1時間以上も超過する事態となっている。
目的が非常に曖昧なこの新たな"道具"、番号制は電子化を前提にし、民間利用、営利利用も想定されている。プライバシー漏洩、成りすまし悪用、サイバー攻撃による全国民情報の略取などの危険性が高い。われわれは、この番号制導入の撤回を強く求める。
共通番号制は、すべての先進国にあるわけではない。ドイツ、オーストリアなどでは導入がされていない。政府は昨夏来、シンポジウムを開催してきたが、この1月発表の内閣府調査でも8割が知らないと認知度が低く、4割超が「必要ない」、「わからない」としている。この番号制は税と社会保障の一体改革の一環として広報されてきた。しかし、法案の第一条の目的は、行政の事務の効率化、行政担当者間の情報の授受であり、そのため個人情報保護法の特例、いわゆる規制緩和を図ることである。法文の名称、そのものである。
メリットとして喧伝されてきた医療・介護などの総合合算制度(仮称)は、法案の骨格すらまだなく幻想であり、所得の10%超部分の負担金の償還という水準は負担軽減には資さない。給付つき税額控除も住民税非課税であっても確定申告と振込口座の登録が税務署に必要になるが、その点も依然と不明なままである。ちなみに、この控除がある米国は対象の25%が確定申告をしておらず救済されていない。
「公正・公平な社会保障給付」、「真に必要なものへの社会保障」のうたい文句も疑わしい。生活保護法の123号通知(1981年発出)以来、適用者を切り捨てる"水際作戦"が連綿と続けられてきている。不幸な餓死の報道は残念ながらなくならない。番号制を敷いている諸外国では、申請主義ではなく自動的に社会保障の給付適用とする国々があるが、2月26日のシンポジウムでは、この運営改善には触れていない。中村社会保障改革担当室長は、2015年の社会保障給付が2.7兆円上積みとなるとしたが、病気であっても受診出来ない経済弱者252万人、経済余力がなく国保の保険証が手元にない30万世帯の解消は放置した上での話ある。法文にあるように、社会保障の充実と、この番号制は何ら連動していない。一体改革とは分離し、先行して法律の成立を図るとしているところかも明らかである。
それどころか、法文に捜査目的の司法利用が盛り込まれ、監視社会の到来が懸念される。さらには、新聞社説に登場しているように、診療歴、資産などの情報の紐付けも念頭に置かれている。
番号制は電子化利用を前提にしているが、番号制を運用管理する「霞ヶ関WAN」(中央省庁間相互接続ネットワーク)、「LGWAN」(地方自治体の総合行政ネットワーク)とのインターネット接続においてのサイバー攻撃、情報漏洩の危険性については、シンポジウムでも政府から否定されていない。
漏洩時の罰則はあっても、個人の救済システムは考えられていない。個人の手続き事務の軽減以上のメリットが見いだせないこの番号制は、離脱する権利も認められていない。
政府と社会保障制度への信頼が高い北欧と日本は違う。放射能測定装置スピーディーの情報隠しは記憶に新しい。
現在の社会保障の分野別の番号管理で十分である。行政間の情報連携は、いまでも国保課と住民課で保険料滞納に関し所得情報を取得するなど、個別法の改定運用で対応しており、可能である。
民間シンクタンク、野村総合研究所も共通番号制がなくて、「できないことは実はほとんどない」と分析さえしている。
百害あって一利なし。共通番号制の撤回を強く求める。
2012年2月29日
必要性に大疑問符 一体改革とは分離?!
国民総背番号制の危険性をただし、
撤回を求める
神奈川県保険医協会
政策部長 桑島 政臣
2月14日、共通番号制の導入に向けた法案(「行政手続きにおける特定の個人を識別するための番号の利用等に関する法律」)が国会に上程された。医療、年金、介護、子育てなど社会保障と税務の情報を個人別に紐付けし、一元管理する、いわゆる国民総背番号制である。折しも、法案上程直後となった、横浜で開催された内閣官房の主催による番号制シンポジウム(2月26日)は、疑問や問題性の指摘が、参加者の間から次々と噴出。終了時間を1時間以上も超過する事態となっている。
目的が非常に曖昧なこの新たな"道具"、番号制は電子化を前提にし、民間利用、営利利用も想定されている。プライバシー漏洩、成りすまし悪用、サイバー攻撃による全国民情報の略取などの危険性が高い。われわれは、この番号制導入の撤回を強く求める。
共通番号制は、すべての先進国にあるわけではない。ドイツ、オーストリアなどでは導入がされていない。政府は昨夏来、シンポジウムを開催してきたが、この1月発表の内閣府調査でも8割が知らないと認知度が低く、4割超が「必要ない」、「わからない」としている。この番号制は税と社会保障の一体改革の一環として広報されてきた。しかし、法案の第一条の目的は、行政の事務の効率化、行政担当者間の情報の授受であり、そのため個人情報保護法の特例、いわゆる規制緩和を図ることである。法文の名称、そのものである。
メリットとして喧伝されてきた医療・介護などの総合合算制度(仮称)は、法案の骨格すらまだなく幻想であり、所得の10%超部分の負担金の償還という水準は負担軽減には資さない。給付つき税額控除も住民税非課税であっても確定申告と振込口座の登録が税務署に必要になるが、その点も依然と不明なままである。ちなみに、この控除がある米国は対象の25%が確定申告をしておらず救済されていない。
「公正・公平な社会保障給付」、「真に必要なものへの社会保障」のうたい文句も疑わしい。生活保護法の123号通知(1981年発出)以来、適用者を切り捨てる"水際作戦"が連綿と続けられてきている。不幸な餓死の報道は残念ながらなくならない。番号制を敷いている諸外国では、申請主義ではなく自動的に社会保障の給付適用とする国々があるが、2月26日のシンポジウムでは、この運営改善には触れていない。中村社会保障改革担当室長は、2015年の社会保障給付が2.7兆円上積みとなるとしたが、病気であっても受診出来ない経済弱者252万人、経済余力がなく国保の保険証が手元にない30万世帯の解消は放置した上での話ある。法文にあるように、社会保障の充実と、この番号制は何ら連動していない。一体改革とは分離し、先行して法律の成立を図るとしているところかも明らかである。
それどころか、法文に捜査目的の司法利用が盛り込まれ、監視社会の到来が懸念される。さらには、新聞社説に登場しているように、診療歴、資産などの情報の紐付けも念頭に置かれている。
番号制は電子化利用を前提にしているが、番号制を運用管理する「霞ヶ関WAN」(中央省庁間相互接続ネットワーク)、「LGWAN」(地方自治体の総合行政ネットワーク)とのインターネット接続においてのサイバー攻撃、情報漏洩の危険性については、シンポジウムでも政府から否定されていない。
漏洩時の罰則はあっても、個人の救済システムは考えられていない。個人の手続き事務の軽減以上のメリットが見いだせないこの番号制は、離脱する権利も認められていない。
政府と社会保障制度への信頼が高い北欧と日本は違う。放射能測定装置スピーディーの情報隠しは記憶に新しい。
現在の社会保障の分野別の番号管理で十分である。行政間の情報連携は、いまでも国保課と住民課で保険料滞納に関し所得情報を取得するなど、個別法の改定運用で対応しており、可能である。
民間シンクタンク、野村総合研究所も共通番号制がなくて、「できないことは実はほとんどない」と分析さえしている。
百害あって一利なし。共通番号制の撤回を強く求める。
2012年2月29日